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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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グランド・サークル疾走記 (4/4) - パンとサーカス
最終日はRVを返却すると、ラスベガスの街に繰り出した。ずっと観たかったCirque du Soleilの"O"を鑑賞できてよかったが、ラスベガスという街は夫婦ともども好きになれなかった。

Busting Vegas!?
ラスベガスは、私も妻もそれぞれ幼い時に一度連れてこられたことがあった。成人した今なら違った楽しみ方もできると思ったのだが、どうも楽しめない。

珍しくMITが取り上げられた映画"21 (邦題: ラスベガスをぶっつぶせ)"の舞台であるし、少しカジノで少しギャンブルをしてみようとしたが、どうもわくわくしない。別に確率とか期待値とかがどうこうではなく、単純に好みの問題だろう。

ちなみに昨年、21の原作者(原作: Busting Vegas)の講演がMITであったので参加したが、なかなか面白かった(ブログ未収録)。インタビューしたブラックジャック・クラブのMIT生は汚い学生寮に住んでいて、とても大金を手にしたようには見えなかったそうだ。そこで
「本当にそんな大金をせしめたのか?」
と聞いたところ、そのMIT生は部屋の奥の洗濯物袋を取り出してひっくり返した。ばさばさと札束が床に積みあがったそうだ……

やむなく外へ出ると、さすが砂漠だけあって暑い。ひとまずホテルBellagioからCaesars Palaceへ抜け、ショッピングモールをそぞろ歩いた。

パンとサーカス
グランド・サークル疾走記 (4/4) - パンとサーカス_c0131701_9302280.jpgこの街は砂漠の蜃気楼のような虚構だ。ParisもNew Yok New YorkもCaesars Palaceも、パリ風、ニューヨーク風、古代ローマ風を安っぽく表現しているだけ。たまに飾ってある絵など酷い出来だ。

だがここはそういう街。ギャンブルのあぶく銭に浮かれた者が、一時の夢を見れればよい。どぎついまでに人間の欲望を掻き立てる。それでいて「人間なんてどうせ欲に塗れた醜い生き物なんだろう」「金さえあればなんでもできるぞ、楽しいぞ」と知った風な挑戦をしてくるように感じる。

古代ローマの没落した背景に、「パンとサーカス」と形容された社会的堕落がある。シーザー・パレスは古代ローマの美しさや叡智を再現することはできなかったが、この堕落だけは再現できたようだ。

水の幻影
グランド・サークル疾走記 (4/4) - パンとサーカス_c0131701_9342988.jpgそしてそのサーカス、Cirque du Soleilを観に行った。サーカスを芸術に高めたと言われるシルク・ド・ソレイユの中でも、特に評判が高いのが水を使った"O"だ。会社の先輩や色々な人に評判を聞いていたので、ラスベガスへ行くときは必ず観ようと決めていた。

内容は素晴らしかった。舞台が陸になったり水になったりすることで、目に見える空間と見えない水中という様に、次元が一つ増える。その奥深い空間目一杯に、肉体が美しい均衡と緊張、静止と躍動を繰り広げる。細かいところまで空間のバランスを取り、飽きさせない。

演技自体も、通常のアクロバチックな動きに加え、シンクロや飛び込みといった水の舞台ならではの動きが多彩に用いられ、常に新鮮な驚きがもたらされる。

期待を裏切らない素晴らしさだった。


ただ、舞台に時折現れる道化以上に、舞台にいる演者(元シンクロの代表などが多く雇われているという)の、肉体を使った芸術を見るのがどこか悲しい。アスリートに活躍の場があるのは素晴らしいのだが、一方でやはりサーカスである。着飾った富裕層が超人的なアクロバットに感嘆している様は、非常にラスベガス的であった。


翌朝の便でNYへ帰ると、ちょうどUSオープンで賑わうスタジアムの横を通った。人間の躍動を楽しむにしても、晴天の下だと少し違って思えるのは、観客と演者との距離感の違いだろうか。



様々な大自然、雄大な歴史の造形を楽しみつくした旅だった。夏を締めくくるに相応しい経験であり、スローンの級友とその家族との楽しい共同生活であった。
by flauto_sloan | 2008-08-31 04:51 | 旅行
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