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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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Saratoga Music Festival: Dutois/Argerich/PO - ついにアルゲリッチ -
c0131701_7173748.jpgついに聴けたアルゲリッチは、神懸り的な存在感と美しい音だった。元夫君のデュトワとの息もぴったりで、フィラデルフィア管の明瞭な音色と共に、サラトガの地で時を忘れさせる演奏を奏でてくれた。

サラトガ音楽祭
ニューヨーク州北西部にあるサラトガ(Saratoga Springs)は、緑に囲まれた美しい町だ。そのSaratoga Performing Arts Center(SPAC)にて毎年夏に行われているのがサラトガ音楽祭であり、現在はシャルル・デュトワが音楽監督で、今年から常任指揮者となったフィラデルフィア管弦楽団を率いている。

NYからもボストンからも車で3時間ちょっとと、やや交通の便は悪いのだが、前回キャンセルされ聞き逃したアルゲリッチが訪れる、とあっては聴かないわけにはいかない。お弁当を作ってマンハッタンを後にした。

c0131701_7241256.jpgサラトガは敷地内に川が流れ、キャンプ場もあるほど自然に囲まれている。タングルウッドよりも遥かにのんびりとした雰囲気であり、近くの牧場から宣伝のための子ヤギまで来ている。



c0131701_23233734.jpgコンサートホールはタングルウッドよりも小ぶりだが、音があまり外に抜けないようになっていて、屋内型ホールに近い作りになっている。飲み物を持ち込める(!)ので、コーヒーやワインを飲みながら聴くことができる。

その代わり芝生席は少なく、すり鉢状になっている。傾斜がある上に土が見えているところが多いので、タングルウッドのように芝生の上でのんびり聴く、というのはあまり向いていない。


早くもアルゲリッチ
c0131701_23252653.jpg開演まで時間があったので敷地を歩いていると、ホールのほうからピアノの音が聴こえてきた。まさかと思って足を向けると、なんとアルゲリッチ本人が舞台上で練習をしているではないか!

リハーサルというよりも練習で、同じところを何度もさらっている。こんなところで早くもアルゲリッチを見られるとは。本番が待ち遠しくなる。


デュトワとフィラデルフィア管弦楽団
いよいよ幕が上がると、フィラデルフィア管の明るい音色が、デュトワの流麗な指揮とよく合っている。ユージン・オーマンディに鍛えられ、「フィラデルフィア・サウンド」と讃えられたこのオーケストラの響きは、今も健在だ。

一曲目のロッシーニからして、均整の取れた美しい音色に聞き惚れる。デュトワとの相性は非常によい。これからが楽しみな組み合わせだ。


婦奏夫随のプロコフィエフ
そして今回の目玉、アルゲリッチの弾くプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番。これは圧巻だった。

すっかり白髪が混じったアルゲリッチは、そのタッチに衰えを見せるどころか、熱情が熟成して風格を備えていた。

溜息が出る美しさのスケールやアルペジオ
スケール感溢れるフォルテ
繊細で緻密なメロディ…

緊張が途切れる瞬間なしに奏でられるピアノの音色は、舞台上の音楽家一人ひとりを奮い立たせたのだろう。デュトワが完璧に合わせて来るタクトの下で、フィラデルフィア管はアルゲリッチをしっかり支えて、深淵な音の広がりを作り出していた。


1楽章が終わった時、感動が限界値を超えた聴衆から、盛大な拍手が沸き起こった*1。そして3楽章が終わると、観客総立ちの盛大な拍手。

素晴らしい演奏を終えたこの元夫婦は、仲良く腕を組んで舞台袖へと消えていった*2。なんとも微笑ましい。別れた後も仲がよく、音楽家として尊敬しあう二人だからこそ、あの息の合った協奏ができたのだ。


大自然の中でのアルプス交響曲
続くR.シュトラウスの『アルプス交響曲』も素晴らしい演奏だった。デュトワの表情豊かな指揮で、フィラデルフィア管が色彩感豊かに表現する(特にフルートとホルンが素晴らしかった!!)。

森の中のサラトガは、本物の小川のせせらぎや森のささやきが聴こえてくる。アルプスの豊かな自然が五感で感じられる演奏だった。

長い演奏が終わると、舞台袖でアルゲリッチがデュトワを迎えて労わっているのが見え、また微笑ましい気持ちになる。


野外演奏会でありながら、実に素晴らしい演奏会だった。


*1 本来楽章の途中では拍手をしない。だがこの時の聴衆はそれを知っていても拍手をせずにはいられなかった。2楽章の後では拍手は抑えられたことからも、敢えてした拍手だとわかる
*2 通常、指揮者はソリスト(この場合アルゲリッチ)を先に舞台に戻らせる。だがこの時は二人並んで帰っていった

by flauto_sloan | 2008-08-14 23:22 | 音楽・芸術
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