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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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オリエンテーション
盛りだくさんだったオリエンテーションが終わりました。水曜にはWarrren Centerという、ボストン郊外のNortheastern大学の教育施設に行き、体を使いながらチームワークを学び、木曜にはホテルにてNikeのコンプライアンス担当役員の方のレクチャーでグローバル化の陥穽を議論し、続けてBeer Gameと呼ばれるsystem dynamicsの教材ゲームでは社会的なシステム・構造が個人の意思決定に与える影響を学びました。

Warren Center
オリエンテーション_c0131701_14551395.jpg今後特に半年間を密に過ごすコアチーム”Pelican”のお互いをよく知り、ハイパフォーマンスなチームを作るため、コアチームで一日を共に過ごし、4つのアクティビティを行いました。
アクティビティではうちのチームは失敗を色々としましたが、お互いに赦し合い、さらになぜ失敗が起きたのか、どうすれば回避できたのかを議論し、学ぶ前向きな環境が築けました。チーム内で、どうすればよりよいチームを築けるのかの議論で、優れたチームにするために必要な二つの主要素があるという結論になりました。その二つは "Supportiveness""Openness"です。これはチームワークに関する研究でも同じ結論が出たそうです。

Supportiveness: お互いにお互いを扶け、リスクを取って成長する機会を与え、成功するための支援を惜しまない。そのようなsupportivenessがあって始めて、お互いを高めあえるチームになります。私のいたコンサルティング会社でも、世界中のどこから問い合わせが来てもサポートする、相互扶助の精神があり、そのために各プロジェクトチームが上手く機能していました。

Openness: ともすれば人にものを尋ねる、お願いをするというのは、プライドが邪魔をしてなかなか素直にできません。また、尋ねても偏狭な相手だったり、他人と知見を共有するのを厭う人だったりすると、何も得るものがありません。やはり優れたチームには、お互いが躊躇せずに質問をし合い、意見を述べ合える環境と(明示的でなくとも)合意が必要です。

また、アクティビティを通じてのフィードバックをお互いにし、巧遅は拙速に如かずという孫子の言を思い出しました。残念ながら、私へのフィードバックは会社のトレーニング等でいつも言われることと変わらず、もっと成長しなければという焦燥感が生まれました。「ひとたび何かを言ったりやったりすると、正確かつ優秀な結果を出すのだから、もっと早く積極的に発言したり行動したりすべきだ」というものでした。どうも英語環境だと、ちょっと傍観しがちです。やはりここはリスクをどんどん取って、正確性を下げてでも行動を早めなければなりません。まさに拙速です。


Beer Game
オリエンテーション最終日の木曜は、GMがスポンサーでOperationsのJ. Sterman 教授が教鞭を取り、いかにシステム(構造、立場、それらを結び付ける仕組み)によって人の意思決定が決まってくるのかを実践しました。
サプライチェーン上の4つの役割(小売、卸、物流、工場)にチームが分かれ、消費者の需要を見ながらビールを生産し、いかに在庫と欠品を最小化するかというゲームでした。結果は会場の43チームのほぼ全てで同じであり、サプライチェーンのどこかで(量にこそ差はあれ)莫大な在庫を抱えるか、大幅な欠品が生じました。その在庫/欠品量は周期的で、サプライチェーンの下流に行く程周期が遅れ、振幅が増大します。
この現象自体はかなり理論で説明がつくことであり、私が関わってきた半導体業界ではシリコン・サイクル*としてよく知られている現象でもあります。ただそこからの意味合い出しが教授の妙でした。

オリエンテーション_c0131701_1456047.jpg能力・地位の多少に関わらず、どの役割でどのような環境にあるのか、つまりどのようなシステムに置かれているのかで、人の行動は自ずと決まってきます。多くの人は自分の置かれている状況を客観的に多面的に見ることができないために、自分の行動が引き起こす結果や副作用(得てして悲劇)を予期できず、結果が起きてからは「これは自分の所為ではない」と訴えます。その通り行動はシステムで実際は規定されているのですが、それに気づかないと、ある自分に不利益な行動をした人に対して、反感を持ってしまいます。そしてそこに肌の色、人種、宗教といった違いが介在すると、差別へと繋がるのです。
教授はアブグレイブの拘置所で米兵がイラク人捕虜を虐待した例を取り上げ、いかに人がある(誤った)システムの中に置かれると、愚かなことでもしてしまうのかを訴えました。

個々人の感情、経験、思想は様々でも、システムによって結果は決まってくる。為政者の施策・法・コミュニケーションで臣下・人民の行動が決まる、と解く韓非子に心酔していた私には、非常に納得のいく、意味深い教授のメッセージでした。非常に面白く、素晴らしい講義でした。


いよいよ来週からは授業が始まります。忙しくなるのでしょうが、気心の知れたチームと共に乗り越えられるでしょう。楽しみです。


* 半導体業界が数年周期で市場が浮沈すること。また、半導体市場に比べ、下流である半導体素材業界、半導体製造装置業界の方が市場の振幅は大きく、位相もずれる(装置のほうが半導体市場を先取りする)
by flauto_sloan | 2007-09-01 23:47 | MITでの学び(MBA)
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