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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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NYP/Muti - スカラ座の香り
ムーティは流石にスカラ座を長年指揮してきただけあり、イタリア・オペラの指揮は堂に入っている。NYフィルでイタリア人作曲家の曲ばかり取り上げた、「イタリア・プログラム」は聴き応えがあった。

先週『ジークフリート』の後に続けて、NYフィルでムーティと内田光子によるラヴェルのピアノ協奏曲を聴いたのだが、これはムーティが乗らなかったのか、オケの準備不足のせいか、いまひとつの出来だった。内田がオケに合わせねばならず、持ち前の天真爛漫さが引き出されなかった。ムーティが調子悪いのかと思ってしまったが、単に曲との相性の問題だったのだろうか。

前半はヴェルディやプッチーニによるオペラ序曲や器楽曲で、曲としては傑作といえないマイナー曲ばかりなのだが、それをムーティがセンスよく味付けしていくと、非常に格好いい。ヴェルディの『ジャンヌ・ダルク』序曲は情景描写的な叙述が多いのだが、ドラマチックで絵画的な解釈を繰り広げていた。

メインはレスピーギの『ローマの松』で、情景音楽の頂点ともいえる「ローマ三部作」でも人気がある曲だ。1楽章は華やかさを狙いすぎたせいか、ややぎこちなかったのだが、2楽章のカタコンベの底から湧き上がる唸り、3楽章の美しく青白い月光の描写は見事だった。そして4楽章の『アッピア街道の松』は、迫り来るローマ軍の行進が絶妙な遠近感と迫力とで描かれ、客席最上階から鳴り響いてくる金管のファンファーレと、舞台上の大編成のオケとのサラウンディング効果も非常に効果的だった。最後は当時世界最強だったローマ軍の凱旋を想起させる盛り上がりで、会場は大興奮に包まれた。

ローマ三部作といえば、同じくイタリア人の大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニ指揮の演奏が有名だが、ムーティにしろトスカニーニにしろ、やはりイタリア人特有のセンスがあるのだろうか。華やかさと納得感のある名演だった。
by flauto_sloan | 2009-04-22 22:50 | 音楽・芸術
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