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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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Web3.0
今学期の授業で、Stuart Madnick教授のWeb3.0という授業をとっている。Web2.0が喧伝されて久しいが、一歩進んで「Web3.0とは何か。それが社会やビジネスに与える影響は何か」を考える。コンピューターサイエンス界の巨人Tim Berners-Leeを擁するMITという地の利を生かして、最先端の研究者を次々と呼んで、今何が考えられているのかを聞き、議論する。

Web2.0の定義も人によって様々だから、当然Web3.0が何かというのは全く定まっていない。Web3.0の定義文コンテストがあったり、Wikipediaでは記事が載っては削除されたりしている。この授業では、データのパミッションになぞらえて、以下のような枠組みで考えている
  • Web1.0="read": Web上のデータは読むことしかできず、ユーザーは定められた手順や範囲でのみ行動する
  • Web2.0="write": Web上にデータをアップロードしマッシュアップできるようになり、ユーザー参加型ビジネスがセレンディピティに介けられ主流になる
  • Web3.0="execute": セマンティック・ウェブによってデータの意味を区別した構造が出来上がり、Web上のデータは機械同士で自動でやり取りが行われるようになる
もしこれがWeb3.0であり、近い将来に実現するとなると、医療(特に診断)やコンサルティングなど知的サービス産業は大きく変わるだろう。データ収集能力や定型的な分析能力は機械(というかクラウド)によって自動化され、価値が急落する。

コンサルティング業界に喩えるなら、ファームに高いフィーを払わなくても、経営企画部では自社の経営指標と産業の構造や景気、主力製品の一般評価や地方の営業所のコンプライアンス違反まで、Web上で情報が「意味や文脈を踏まえて」自動収集される。さらに、Forces at workや3C分析といったある程度定型化された分析も為され、とるべき行動のオプションまで推薦される(その構造をパッケージ化して売り出すファームが現れるのは間違いない。例え自分の首を絞めることになっても)。コンサルタントはより高度でアーティスティックな問題解決だけを求められるようになるし、需要も減るのでコンサルタントの数自体大きく減っていくかもしれない。

産業革命と農業技術の発達が農業人口を工業人口に転化し、情報革命とオートメーションが工業人口を情報産業人口に転化した。情報産業がオートメートされ、セマンティック革命が起きると、情報産業の人口はどこにいくのだろうか。宗教か芸術に回帰するのか、或いは新しい産業が生まれるのだろうか。
by flauto_sloan | 2009-03-15 23:55 | MITでの学び(MBA)
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