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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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NY Jazzの夜
NY Jazzの夜_c0131701_5184365.jpgNYにいるうちに一度行っておきたかったのが、Blue Noteだ。予約をして、ジャズの夜を満喫してきた。日本で行きそびれていたので比較はできないが、熱気と迫力で大いに興奮した。

テーブル席を予約し、早めに到着してステージ横の席を確保。
軽食を頼み、ビールやカクテルで開演を待つ。今日はサキソフォン奏者のDavid Sanbornのセッションだ。

時計の針が進むごとに、会場に期待と、熱狂のつぼみが広がっていく。

時間が来て、プレーヤー達が順々にステージに現れる。観客はすでに盛り上がっている。颯爽と現れたサンボーンは、人懐こい音色のアルトサックスを吹き始めた。この音色は凄い。音楽が瞬間瞬間に生まれていき、発展し、他のプレーヤーに受け渡される。そしてこの音楽を受け渡す空間が観客にまで広がり、一体感を生み興奮を呼び起こす。ライブならではの楽しみだ。そして実に格好いい。

私はクラシックの中でも、バロック*1をはじめ古典を演奏するオーケストラで演奏していた。よく言われることだが、バロックくらいまで遡ると、ジャズに相通じるものを感じる。即興で装飾やメロディーの変形・派生をし、お互いにそれを聴きあって、瞬時に反応して即興で返事をする。楽譜が存在する再現芸術でありながら、その瞬間瞬間のインスピレーションが重要で、その時限りの再現性のないものが生まれる。

動物的・本能的な、非言語の「場」が生まれ、呼吸を揃え、テレパシーのようにメッセージをやりとりする。この場は、プレーヤーが同調しお互いに刺激しあうと、緊張感と興奮を生み出し、場の広がりも拡大する。
そうして「いい演奏」が生み出されたとき、聴衆もうまく呼吸を合わせて、その場に飛び込むと、同じ興奮と熱狂を楽しめる。会場に一体感が生まれ、素晴らしい演奏が共有される。ライブの醍醐味だ。

このライブの醍醐味は、クラシックもジャズもロックも変わらない。ジャズやロックは楽器やリズムで場を生み出し易く、聴衆も飛び込み易い。クラシックは確かにいい場を生み出すのが難しく、聴衆も場への飛び込み方を覚えるのに多少の経験と知識が要るのかもしれないが、うまく会場一体に同調したときには、ジャズやロックと同じかそれ以上の興奮が生まれる(その確率が低いのも問題なのだが)*2
私が演奏会に通うのは、別に知的に満たされたいとか、何かクラシック独特の凄いものがあるからではなく、ジャズやロックでノリたいのと同じだ。たまに遭遇する名演で同調した時の興奮と感動が、凄まじい振幅だから、病みつきになっているにすぎない。

ジャズを聴きながら、音楽と言う人間の本能的活動は同じなのだな、と改めて感じた。
非常に楽しい夜だった。

*1 テレマン、ルベル、ロゼッティ、バッハ等
*2 個人的に、限られた経験からだが、名演に出くわした時の感動はジャズやロック以上ではないかと思う。また、私はクラシックだけ高尚な音楽だと特別扱いする考え方には同意しかねる。作曲者の意図や指揮者の解釈といった奥深さはあるのだが、音楽の根源的な楽しみや素晴らしさは他のあらゆる音楽と変わりはないと思う

by flauto_sloan | 2009-02-21 23:08 | 音楽・芸術
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