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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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Thanksgiving in Texas (2/3) - アメリカの家庭教育
ポーラの家に二泊すると、短期ホームステイのようで、アメリカの家庭で何が行われているのかがよく分かって面白い。特に子供の教育が興味深かった。

丁寧な言葉で、自分の考えを話させる
Thanksgiving in Texas (2/3) - アメリカの家庭教育_c0131701_2325022.jpgポーラには小さい二人の娘がいるのだが、二人が丁寧な言葉遣いをするように徹底している。「オレンジジュースが欲しい?」の答え一つとっても、娘が "Yes" としか答えないと、"Yes, PLEASE." と言い直させる。(私たちもそれを見て、ちゃんと "Yes, please."と答えるようになった)

また、ポールは何でも質問をしてきて、自分の意見を述べさせる。娘が一所懸命に説明することを静かに聞いて、質問を重ねる。こうして、話すことと深く考えることを訓練しているようだ*

尤も、質問をするというのはポールの個人的な好奇心の旺盛さから来ているようで、我々二人も何かにつけポールからの質問攻めに遭った。ファクトだけ述べたり、あまり面白くないことを言うと、明らかに残念そうな顔をされるので、滞在中は四方山話でも頭を働かせなければならなかったのが若干疲れもした。

夫婦の間も、お互いを尊重しつつ、意見をぶつけあう。レンタルビデオを借りてきて皆で観るかどうかですら、議論になる。我が家なら「そうしようか」か「まあいいんじゃない」で終わりそうなところを。意見を持って戦わせることも、小さいときから習い性になれば、特別なことではないし苦痛でもないのだろう。ケースの授業でやたら発言するアメリカ人も、こうして小さいときから受けていた教育の成果だろう。

自分の歴史を知る
これは多分にポールの個人的な信条なのかもしれないが、歴史を非常に重んじている。国家レベル、家族レベル、個人レベルで歴史を積み重ねることを重視し、過去を知ることで学ぼうという姿勢が強い。

書棚には米国大統領の自伝や各国の歴史が並び、話していても、日米の歴史に強い興味を持っている。米国はたかだか230年程度しか歴史がないのだが、短い分何がどういった背景で起こり、どう帰結したのかを深く理解している。過去を正視するからこそ、アメリカに誇りを持ち、また問題点を把握している。

また、家族の歴史も重んじている。サンクスギビング中に「ターキー・トラック」という市民マラソンに参加しているのだが、これも家族の伝統行事となっているらしい。なにか上手くいくと、それが伝統となって積み重なっていく。新しいことができないとポーラがぼやきもするが、家族の結びつきを強めようとしているように見える。

さらに、個人レベルでも、ルーツがどこにあるのかを強く意識している。二人ともルーツは欧州で、先祖が何をしていたのか、よく理解している。娘の一人は中国からの養子なのだが、その子に自分のルーツである中国をよく知ってもらおうと、中国語を習わせ、中国の掛け軸や置物を多く飾っている。

歴史は成功と失敗、苦悩と歓喜の蓄積であり、そこに腰掛けることで安心や自信を得られる。歴史から未来は予測できなくても、対処するための知恵を得られる。そんな信念が、この家庭を貫いていたように思えた。


いずれ子供を持ったとき、どう育ってほしいか、そのためにどう育てるか、大いに考えるだろう。その時、アメリカでどう子供が育てられているのかは、取り入れるにせよ取り入れないにせよ、非常に参考になると思う。

色々と学ぶところの多い滞在だった。我々を温かく迎え入れてくれたポーラの家族に、感謝しきりの感謝祭だった。


* よくユダヤ人の家では、食事のときに子供がその日の出来事や、その日何を教師に質問したのかを話し、深く考えて話すことを訓練するといわれる。この家はユダヤ系ではないが、似たような光景を繰り返し見た
by flauto_sloan | 2008-11-28 18:24 | 旅行
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