MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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WWWの巨人 – Sir Tim Berners Lee
MITの教授で、WWWの開発者である、Sir Tim Berners LeeWeb3.0の授業の最後のゲストスピーカーとして呼ばれた。某サイトで「憧れる有名ハッカー」に選ばれ、WWWで世界を変えた男とも言えるバーナーズ・リーは、恐ろしく頭の回転が早く、かつユーモアがあり、MITが擁する天才とはこういう人なのだな、と思わせた。
Web2.0は群雄割拠の無秩序を生み、それぞれの技術が囲い込まれてしまった。セマンティック・テクノロジーを中核とするWeb3.0はそうではなく、相互にオペレーションが可能で、一貫性を持ち秩序あるネットワークを作り上げることが必要だ。もちろん、それは全てが無料であることも、アクセスコントロールができないことも意味しない。

あらゆるデータが共通の土壌として繋がることで、あらゆる創造性がその上で開花する。一部企業がデータを独占しようとするだろうが、データを結びつけることによる価値の方が大きくなるのと、データの開示競争が引き起こされることで、あるところで閾値を超えてデータが共通化されていくだろう。

共通化されたデータが結び付けられる効果は計り知れない。たとえばWeb3.0の技術を導入している癌治療の分野では、それぞれの研究分野は狭い科学者達が、お互いのデータを結びつけたことで、既に便益が出始めている。

否が応でも、Web3.0の時代は到来するのだ。マイクロソフトが当初インターネットを毛嫌いしても、それを受け入れざるを得なかったように。
バーナーズ・リー教授は、セマンティック・ウェブによる秩序あるWeb3.0の姿を考えている。それが可能になれば、まさに人知を超えた発見が生まれる可能性がある。まさに人の創造性が自由に花開く土壌だ。

だがグーグルは力技によるセマンティック技術を進めており、教授の理想が実現できるかはまだ予断を許さない。Wolfram Alphaのような新しい技術も登場しており、いまだWebは群雄割拠である。

WWWコンソーシアムのような秩序だったアプローチが通用する規模を超えてしまっているのかもしれない。教授の推進するセマンティック技術が閾値を超えようにも、閾値自体が普及を上回るスピードで拡大しては意味がない。

無秩序から生まれる創造性と、秩序の上で花開く創造性。どちらが勝つのだろうか。


 ちなみに、質疑応答の中で「webの世界で一番驚いたことは何でしたか」と聞かれたバーナーズ・リー教授は「人々がHTMLを手で書いていたことだ」と答えていた… ちなみにこのブログも、微調整はHTMLタグを手打ちで入れ込んでいます
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by flauto_sloan | 2009-04-27 22:05 | MITでの学び(MBA)
TripAdvisor Stephen Kaufer CEO - Web 3.0
c0131701_7231739.jpg今や旅行をする時には必ずチェックするサイトが、TripAdvisorだ(日本語版)。そのCEOのKaufer氏が、Web3.0の授業に招かれた。カウファー氏はきさくなエンジニアといった外見と、人当たりの良い話し方で、非常に魅力的だった。自分のビジネスの良さを曲げない信念と、一方で臨機応変に気づきに対処する柔軟さが見事だった。

トリップアドバイザーの成功
トリップアドバイザーは、Web 2.0の代表で、旅行の口コミサイトである。メンバーが世界各地の旅行情報(ホテル、レストラン、観光名所等々)を書き込み、それがメンバー同士で評価される。評価ページで気に入ったホテルやレストランがあると、そこからexpediaなどの予約サイトへ直接移動できる*

トリップアドバイザー社の収入はこの予約サイトから得ていて、どれだけサイトへ移動(リード)し、どれくらいが実際に予約したかで売上が決まる。実際に予約状況を確認しようとするユーザーは、既にその場所へ強い興味を持っているため、リードからの成約率は高い。

Web 2.0の他のサイトと同じように、ユーザーは自分からコンテンツを作成していく。例えば築地市場は何故か外人の書き込みばかりなのだが(確かに東京に住んでてもなかなか行かない)、全部で20件あり、「寿司が美味しいし市場も面白いので是非行くべき」から「ぼられるから注意しろ」まで色々に書き込まれている。トリップアドバイザーは、差別的など非常に問題がある書き込み以外、否定的なものも肯定的なものも残す。それがユーザーの総意であり、結果として秩序と便益が保たれるのだという。

今や幅広いパートナーを持ち、旅行サイトでは圧倒的な便利さと人気を持つようになり、2004年に2億ドル以上でIACに買収された。買収以後もカウファー氏はCEOで残り続け、facebookの"cities I've visited"アプリによって更に顧客層を拡大するなど、積極的な拡大を続けている。

カウファーCEO
CEOのカウファー氏はシリアル・アントレプレナーで、いくつか起業をした後にコンピューター・エンジニアとして勤めていた。ある日奥さんとの旅行を計画した時、既存のガイドブックでは知りたいことが載っていない、載っていても実際がどうなのかわからない、と不満を持ち、実際にその地を訪れた人の口コミがまとまっていれば便利なのに、とぼやいた。すると奥さんが「ならあなたがそれをやったら」と背中を押して、起業を決意したという。

難航したのは、旅行サイトとのパートナーシップだそうだ。エクスペディアに「トリップアドバイザーから来て旅行が成約したら、紹介料をください」と持ちかけようとしたが、反応は「うちの名前を貸してあげるのだから、むしろうちがお金を貰うべきだろう」と全く逆。そこでカウファー氏は、まず数ヶ月間試してみて、その結果を見て判断してくれと大見得を切る。必死の努力と相俟って、これが成功し、どんどん売上もパートナーも拡大していった。

新しい機能は、試行錯誤で進めていく。当たると予想して外れたり、予想外のものが人気を集めることなどざらで、臨機応変に即興的に意思決定をしていくことが重要だ。競合はいくつか現れているが、競合を気にするよりも顧客のことを理解することに専念している。顧客が何を欲しがっているかを探り続け、いかにトリップアドバイザーに居ついてくれるかが最も重要だと語っていた。


決して驕らず、真面目さとユーモアを忘れずにいるカウファー氏は、あまりCEOには見えない。だがその柔軟さと人懐こさが、この成長企業を率いる人徳なのだろう。常に試行錯誤し続けて、うまく行った偶然が続いたことが成功につながったのだ、と言わんばかりの謙虚さは、成功を呼び込むための努力を容易に窺わせるし、また謙虚になれるだけの自信を感じさせる。

ガースナーやウェルチといった成熟した大会社のカリスマ経営者から学べるものも多いが、カウファー氏のようなしなやかなタイプのスタートアップ経営者の成功談は、非常に刺激になった。ビジネスモデルの面白さと共に、実感を持って学べるものが多く、なかなか色々と考えさせられた。


* たとえば、東京の英文ページを開くと、お勧めホテルの1位にThe Prince Park Towerが出る。ここで"Check Rate"をクリックすると、Expedia、Orbitz、Hotels.com、agataの4つの旅行代理店サイトが立ち上がる。トリップアドバイザーはこれらの価格比較を直接行わないが、ユーザーは容易に比較できるため、事実上アグリゲーター的役割も果たしている
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by flauto_sloan | 2009-03-09 22:13 | MITでの学び(MBA)