MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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イスラエルへ
ベネズエラ旅行は、紆余曲折を経た結果、最後まで行く気だった4人での旅行も諦めた。リーダーが突然参加できないこととなり、ロジやコンタクト先の確保に大きな支障が生じ、また残り3人のモチベーションが維持できなくなり、そしてこの3人の目的意識の違い(私とチェリストの友人はエル・システマの調査を目的としていたが、もう一人はギアナ高地観光が目的)が顕著になった。

また、NECに対してコンサルティングをしようとしていたのだが、既に同じ活動をしている人がいて、我々独自の価値提供が難しいと判明したことも、チームのモメンタムを失わせた。こうして、非常に残念ながらベネズエラ旅行を中止することにした。

こういう少数のプロジェクトは、参加者の興味とコミットメントレベルの違いをどうまとめていくか、そしてモメンタムをどう維持するのかが極めて難しい。特に政情不安な途上国でのプロジェクトとなると、リスク以上のリターン(経験、社会的意義、ネットワークなど)を参加者が信じ続けられないと瓦解してしまう。なぜだかこの2年間、興味があった開発分野でのプロジェクトは結局経験できなかった。縁がなかったのか、私にそこまでの覚悟がなかったのか。

こうして春の予定が急になくなったので、まだスポットが空いていたイスラエル・トレックに参加することにした。アメリカ(特にNY)にいると、ユダヤ人に非常に興味を持つ。またスローンには多くのイスラエル人がいて、彼らのハイテク分野への強い関心と専門技術を見ていると、あの国はどうやってここまでハイテク産業を発展させたのか非常に興味を持った(テルアビブはハイテク産業のクラスターだ)。

他にも最近のガザ紛争、イスラエルの選挙にも興味を持ち、さらに莉恵さんのイスラエルの記事にも刺激された。タイミングとしても非常にホットだ。日本から行きにくいことも動機となる。

ベネズエラは本当に残念だが仕方がない。諦めてイスラエルを楽しむことにする。
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by flauto_sloan | 2009-02-16 13:16 | MITでの学び(MBA)
卒業式のゲストスピーカー発表
MITの卒業式 - 私自身の卒業式だが - のゲストスピーカーが発表された。マサチューセッツ州のパトリック知事だ。知事はバイオテクノロジーや代替エネルギー技術をマサチューセッツで推進するための施策を打っている、先進的な知事だ。なにより彼は全米二人目の黒人の知事であり、オバマ大統領の当選・就任と呼応させて選んだのだろう。

パトリック知事は素晴らしいのだが、グローバルな知名度の点では、若干の物足りなさを感じる。技術も経済もグローバルになり、多様性を重んじ世界を導くイノベーションを生み出すMITであれば、グローバルに活躍する人をゲストスピーカーに呼んで欲しかったという思いもある。州知事はあくまで州知事であり、アメリカの北東のローカルな大人物である。

とはいえ、総長以下が慎重に選んだのだろうから、この学問とイノベーションの地に相応しい素晴らしい人物であろう。勇気付けられる名スピーチを期待したい。


卒業式のスピーチは各校かなり慎重に選び、選ばれた側は名スピーチを残すことが多い。有名どころでは、以下のようなものがある。

Apple CEOのSteve JobsによるStanford 2005 commencement speech

昨年のJ.K.Rowling女史(ハリー・ポッターの著者)によるHarvard Commencement Speech

映像はないが、他にこれまでに紹介したものでは、昨年のMITのM.Yunus氏のスピーチ、ジョージア工科大学でのB.DysonコカコーラCEOのスピーチが素晴らしい。

知事がこれらと比肩するほどの素晴らしいスピーチを残してくれれば、旅立つ上でこの上ない餞となるだろう。私がMITで聴く最後のスピーチであろうから。


参考: 直近3年間のMIT、ハーバードの卒業式スピーカー
    MIT
  • 2008: Muhammad Yunus (グラミン銀行総裁、ノーベル平和賞)
  • 2007: Charles M. Vest MIT名誉学長 (MIT Songsにも登場する、15年間MITの学長を務めた教授)
  • 2006: Ben Bernanke (連銀総裁)

    Harvard
  • 2008: J.K.Rowling (作家)
  • 2007: Bill Gates (Microsoft創業者、ゲイツ財団理事 ; 映像)
  • 2006: Jim Lehrer (作家)

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by flauto_sloan | 2009-02-13 21:46 | MIT文化
土地と欧州に潜む危機 - Feldstein 元CEA議長
c0131701_323975.jpgレーガン政権でのCEA(大統領経済諮問委員会)議長のMartin Feldsteinハーバード大学教授*1が、元IMF主席アナリストのJohnson MIT教授の進行で講演を行った。今回の金融危機と今後の展望についてだ。なかなか面白かったが、同時に今回の危機を乗り越える難しさも伝わってきた。

現在は経済回復諮問会議のメンバーであるフェルドシュタイン氏は、ローレンス・サマーズ国家経済会議議長の師であり、レーガン政権でCEA議長に就くと「レーガノミクス」を推進した。

住宅ローン市場へ介入せよ
そんなフェルドシュタイン教授は、今回の危機の対策には地価のコントロールが重要であり、政府が直接ホームオーナーに融資をして、地価の下落を止めることが重要だと述べていた。
今回の危機で、GDPの約5%の$750Bの総需要が減少した。これは住宅価格の下落による世帯の資産減少の寄与に伴う消費減少が$500B、住宅市場自体の冷え込みの寄与が$250Bだ。資産の減少はこれまでの不況で最大だ。

加えて、信用収縮によって最も信用の高い借手にも資本が回らなくなった。金融機関が貸倒比率を把握も予測もできないからだ。(米国の住宅ローンはノンリコースローンであるため)鍵を貸手に送って家を出る借手が後を絶たない*2以上、今後どれだけB/Sが悪化するのか予測できず、貸出ができないでいる。

そこでFedは、住宅ローンやCPなどの信用市場に絞り込んだ救済をすべきであり、それで家計が改善するはずだ。日本が行ったように、銀行に資本注入して全体の流動性が高まることを期待しても、銀行自身のB/S改善に使われるだけであり、効果は薄い。

$700Bの財政支出は、GDPの減少を相殺できない。さらに現在GDP比40%もある国債の負担が今年度50%になり、このもまま60%超ということも今後あり得、規律が必要になるだろう。

問題の端緒は差押さえにある。差押さえによって信用と需要が収縮し、住宅価格がさらに下落し、差押さえが一層増える悪循環が始まってしまう。これを防ぐための政府介入が必要だ。政府が低利の融資を住宅オーナーに行い、頭金の支払いをさせることで、住宅価格が下がっても自己資本がプラスであり続けるようにすべきだ。その代わり多重や多額の債務を規制する必要があるし、政府が住宅ローンの一部を共同負担するとともに遡及性をもたせることも必要だろう。こうして、「危険水域」の住宅のオーナーを救済しければならない。
講演後にkazさんと感想を話したのだが、遡及性を持たせると、日本のように借金で首が回らなくなり、悲惨なケースがアメリカでも起きるかもしれない。今回のサブプライム問題の背景に、低所得者層の金融知識や商品知識の欠如があり、そこにつけこんだローン仲介業者のモラルの無さがある。だからこそ「忍者ローン (NINJA = No Incom, no Job, and no Asset)」なんてものが生まれた。もし政府介入とセットに遡及性を持ち込むなら、ここでも正しいコミュニケーションや教育を行わないと、ノンリコースローンのような気軽さで借りて、破産する人が現れるだろう。

ただし、ノンリコースローンは消費財における返品のし易さ同様、米国の消費を加速させた要因でもある(だからこそ景気が反転すると不況も加速する)。制度設計が事後主義であるアメリカにはよく合った制度なのだが、アクセルしかない車が危険なように、ある程度加速度を犠牲にしてバランスをとることが必要なのだろう。

また、住宅政策で誰を助けるのか、と言う問に対して、危険水域に入りつつあるホームオーナーだと言い切ったのが印象深かった。米国でも日本のバブル期のように、価格が上昇し続ける不動産を担保として、ローン返済のためにローンを組み、現金をそこから抜いて消費に回していた人々が最も被害を受けている。ちょうどフォーブズ教授(彼女はブッシュ政権のCEAメンバー)の授業でも取り上げられたのだが、この層が全世帯に占める割合は実際のところ5%ほどだと言われ、第一の救済対象とするには効果が少ない(尤も、消費を牽引していたのはこの層なのかもしれないが)。

一方で、25%の世帯は既にローンを返済し終わっていて、住宅価格の下落が即時行動には繋がらない。だが住宅政策の税負担に対するリターンも受けないため、税の使い途には厳しい。先述のような無責任で自業自得の5%を救済するとなると、この層を中心に国民感情が悪化する。

だからこそ、まだきちんとローンを払っているが、持ち家が純負債(自己資本分がマイナス)になりかけている世帯を救済するのが必要だ。住宅価格を下支えし、この世帯が家を手放すのを避けなければ、より大きな悪循環が始まってしまう。詳細がもうすぐ明らかになるオバマ大統領の住宅政策は、タイミングと支援の対象・大きさが注目される(注: このエントリを書いているうちに、住宅政策が発表された。やはり無責任な層と危険水域の層の区別が難しく、コミュニケーションもまた難しいため、「不公平だ」という批判が起きている)


欧州でより深刻な金融危機
また、世界経済への金融危機の影響では、フェルドシュタイン教授とジョンソン教授が一致して「欧州が一層危険だ」と言っていた。欧州では、政治的に財政政策が発動しにくく、金融市場の規模がGDPに比べて大きいためだ。
米国の金融危機による資産の再評価が株価下落を招き、企業の信用悪化によって貿易規模が縮小し、経済危機を一層深刻にしている。これは貿易相手国と相互に悪循環を強め合う構造になっているため、世界中に危機が波及している。

特に問題なのが欧州であり、政治的合意の難しさと金融が大き過ぎる経済構造とが根幹にある。アメリカでも政治的衝突は問題で、なぜ銀行ばかり救済するのだという国民感情の悪化、州の独立性の強さによる足並みの乱れがある。だが欧州はもっと酷い。通貨・経済統合により、政策の波及効果は大きいのだが、逆にそのために「自分の国だけ負担をするよりは、他国にただ乗りしよう」という思惑が働いてしまう。そのためG7で協調を謳っても、政策が同意され実行されるのが遅くなり、被害が増してしまう。

また、金融機関の規模が国の経済規模に比べて大きすぎるため、金融危機の影響が個々の国で耐え切れない程大きい。真っ先に破綻したアイスランドは、金融業界の規模(総資産)がGDPの20倍であったため、最後は首相が「また漁業に戻るのか」と嘆く結果となった。だがスイスでは8倍、イギリスでも6倍であり、対GDPでの被害額がかなり大きい。また民間部門の負債があまりに大きいため、景気刺激のための財政政策が(原資と効果の面で)非常に難しい。

この二つの問題のため、欧州は米国よりも被害が深刻で長引くだろう。
欧州がここまで深刻だと言うのは、あまり知らなかった。ユーロの下落が激しいことは知っていたが、このような構造的要因があったと知ると、確かに景気回復の難しさを感じる。また中国などとのデカップリング論も反証された今、本当に経済が世界規模で結びつき、経済大国の政策への責任が増してくる。

日本は政府・野党・マスコミが見事なまでに膠着状態を作り出し、無為無策を強いているが、世界第2位(または3位)の経済大国として、内向きの議論(漢字の読みをあげつらい、損を垂れ流す施設の売却を批判するなど愚の骨頂)ではなく、世界に責任ある政策論議をしてほしい。


*1 歴代CEA議長については、soheiさんがまとめているので参照されたし

*2 例を挙げて説明する。5000万円の住宅を、頭金を2割の1000万円、ローン4000万円で購入したとする(簡単のため利子を無視する)。この住宅の価格は5000万円だが、家主の資本はまだ1000万円でしかない。ローンを返済していくと、負債が減って自己資本分が増え、返済し終わってやっと、5000万円の資産が全て自分の資本となる。

一方、もし購入後一夜にして住宅価格が3割下落し、3500万円になったとすると、ローンの4000万円は残るので、家主がその住宅に持っている資本はマイナス500万円となる。日本のような遡及型ローンだと、自分にとって自己資本分がマイナスになっても、涙を流して働いて返済しなければならない。だがアメリカなら、「そんな物件はいらない!!」と言って、家の鍵を金融機関に引き渡し、それを担保としてローンの返済義務がなくなる。家主にしてみれば担保である住宅価格以上の返済義務が生じず、頭金の1000万円は損するものの、それ以上の損もローンの返済義務もなくなる。

つまり住宅価格が (価格-頭金-返済分) を下回ったら、それ以上その住宅を持つ意味がなくなり、金融機関にしてみれば不良債権(というか損金処理)化する。ローン会社が家をいくつも持っていても仕方ないから、少しでも現金化しようと住宅を売りに出し、住宅市場が供給過多になり、さらに住宅価格が下落し、より多くの人が家を手放す。これが証券化されていたことで、さらに被害額は増え、被害者も拡大する。

価格の上下とリスク/リターンの対称性が一致しない(リスクにのみ下限がある)ので、バブル期には住宅への投機や、値上がりを見込んだローンの借り換えがさらに促進される。逆にバブルが弾けた時の需要減少も大きくなる。

一方、新しく家を買おうと思っていた人は、もう少し待っていればさらに安く買えるので、購入を手控えてさらに需要が減少し価格が下落する。まさに悪循環である

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by flauto_sloan | 2009-02-12 01:51 | Guest Speakers
オバマ政権の外交政策
MITの政治学部にて、オバマ政権の外交政策を議論する講演会があった。講師はケネディスクールのNicholas Burns教授で、数々の大使や外交代表を歴任し、ついこの間までブッシュ政権でNATOの大使をしていた教授だ。
今後の外交政策での要諦は、中東と南アジアだという。ちょうど前日にイランが米国と対話する用意があると声明を出したが、イラク情勢にどうけりをつけ、イランとどう接するのかは引き続き重要な課題となる。また、アフガニスタンとパキスタンという南アジアは、オバマ大統領がアフガニスタンでの戦争を継続すると表明しており、今後ますます重要となる地域だ。彼は、「アフガニスタンがオバマにとってのイラクとなりかねない」と警告していた。

また、立場もあるだろうが、「ブッシュ政権はもう少し評価されてもよい」と言っていた。特にアメリカとブラジル・中国との関係は、ブッシュの外交で大きく進展したという。今後このモメンタムを維持していくことが望まれる。

また、ブッシュ政権が金融危機対策でG7をG20にしたことを、新興国の責任感を醸成するとして高く評価していた。中国・インドはその経済規模・影響力に比べて国際的な責任感に欠けている。環境問題やダルフールでの中国の対応がいい例で、大国と途上国の顔を使い分けている。氏は、日本がG7に参加していくうちに先進国としての自覚を高め、国際的責任を果たすようになったことを学びとして、中印やその他の新興国もG20の参加で責任を持つことを期待していた。
もちろん、中国など60年間も安全保障理事会の常任理事国でありながら、国際的な責任を果たしていないのに、G20に巻き込むことが本当に責任を促すのかという疑問はある。4000年の歴史で最も政治に長けた国でもあり、米国の強い影響下にあった日本と同じようにいくのか疑問が残る。だが中国のG20への巻き込みや、WTOなど国際機関・協定への巻き込みは今後先進国全体の課題となるだろう。

それにしても、金融危機と政権交代のおかげで、大物の学者、政治家、官僚が次々と講演を行っているのが素晴らしい。見識高い人々の洞察を聞くまたとない機会に、ボストンにいるのはまさに運がいいと思う。
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by flauto_sloan | 2009-02-11 12:43 | MITでの学び(非MBA)
春鴨
厳冬の今年のボストンにも、春が近づいている。チャールズ川に厚く張った氷ももう薄い。一時は川が見渡す限り真っ白で、人が上に乗れるほどだったのに。

キャンパスに積もっていた雪も解け始め、根雪に埋もれていた草がようやく顔を出す。それを待ちかねていた鴨が、群れをなしてグレート・ドームの広場の草をついばんでいた。

こう春を待ちかねる気持ちは、初めてかもしれない。
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by flauto_sloan | 2009-02-10 20:40 | ボストンでの生活
ベネズエラ・トリップの中止
ベネズエラへのスタディ・トリップがキャンセルになってしまった。この上なくショックだ。

春休みに、スタディー・トリップでベネズエラに行く予定だった。スタディー・トリップはスローンの公式イベントなので、教授が同行し単位も認定される。半分は遊びだが、半分は真面目だ。申し込みにはエッセイを提出せねばならず、真面目なコミットメントが求められる。

そのトリップの目的は、エル・システマの調査だった。エル・システマはこれまで何度か紹介したが、ベネズエラのNPOであり、音楽教育を通じて貧困の解消と人的資本の向上を図るプログラムだ。

エル・システマ
ベネズエラの首都カラカスは、大戦後どんどん荒廃し、犯罪の多い危険な都市となっていた。スラム街の子供たちは、ギャングに入り、銃を持ち、麻薬を吸い、そして生きる目的も見つからないまま、傷つき殺されていた。貧困は再生産され、希望のない街であった。そこで経済学者のJose A. Abreu氏が、エル・システマ(El Sistema: The System)というプログラムを立ち上げた。

子供たちに楽器を与え、音楽を教え、オーケストラで合奏をさせる。子供たちは音楽の楽しみを知って心が豊かになる。楽器の腕が上達することで自尊心をもち始める。そしてオーケストラで他人と協調することを学び、社会に出ても適応できる素地を作る。

開始してもう25年ほどになるのだが、エル・システマは目覚しい成果を挙げた。カラカスの犯罪発生率は低下し、犯罪に手を染めず就労できる若者が増えた。カラカス以外の都市にも展開し、今ではベネズエラ中にユース・オーケストラがある。優れた演奏をする子供には、選抜によって上位のオーケストラに参加でき、頂点にあるシモン・ボリバル・ユースオーケストラは、世界一のユースオーケストラと認められている。昨年末に来日公演を果たし、聴きに行った母親がいたく感激していた。私も聴きたかったほどだ。

さらには、このプログラムがなければ埋もれていたであろう才能も発掘した。その代表が、今世界で一番注目されている若手指揮者のギュスタボ・デュダメルだ。もこもこの天然パーマと人懐っこい顔立ちという風貌も人気だが、彼のエネルギー溢れ、即興性に満ちた解釈は、聴いていてとことん楽しい気持ちになる。昨年一度聴いたところ、発展途上だが魅力的な指揮者だと感じた。

アメリカでのエル・システマ
ベネズエラでの成功を受けて、同じく犯罪や貧困に悩むアメリカの都市が、同じプログラムを展開し始めた。ここボストンでも、貧困地区サウス・ボストン(MITが舞台の映画、『グッドウィル・ハンティング』の主人公はここ出身)に対し、ニュー・イングランド・コンサバトリー(NEC)が中心となってエル・システマを展開している。一定の成果は挙げているが、ベネズエラとアメリカとの間の文化や社会構造の違いも考慮すれば、改善の余地があるのではないかと思われる。

スタディ・トリップ
今回のベネズエラのスタディ・トリップでは、まさにこのエル・システマを調査するはずだった。NECをクライアントとして、カラカスとボストンでエル・システマの関係者(音楽教師、生徒、生徒の保護者等)へのインタビューやその他調査を行い、何がベネズエラで上手くいく要因で、それがどこまでボストンで展開可能なのかを見極めることが目的だ。

参加者は十数人だったが、先日のタレント・ショーで競演した二人もいたし、皆かなりやる気だった。それが突然の中止決定だ。キャンセルする参加者が相次ぎ、授業の最小催行人数を割り込んでしまったからだ。もともと安全上の理由から人数はだいぶ絞り込んでいたのだが、それが裏目に出たようだ。また、ベネズエラ人の巻き込みが不十分(オーガナイザーに一人のみ)なのも、不安要素になっていたようだ。結局、学校が「この人数に教授二人を付けられないし、スポンサーもできない」と通達してきた。残念で仕方がない。

りごぼん教授やNEC学長、ベン・ザンダーなどゲスト講師も招く予定だったのだが、それもキャンセルとなってしまった。

ベネズエラにコミットしたため、同じ時期に開催されるインド、イスラエル、トルコへのトレックには当然申し込んではいない。今からだとウエイトリストなので、申し込んでも行けるかどうか微妙だ。

だがそれ以上に、将来エル・システマ的な、音楽による教育・人的資本増強のプロジェクトを行いたいと思っていたので、要となりうる大きな経験をする機会を失ったのが無念だ。

有志のトリップ
この決定を受けて、最後まで残った何人かで、学校のサポート無しにベネズエラへ行こうかという話が持ち上がった。既に通訳や交通は手配し始めていたので、それを利用しようというものだ。まだ検討中なのでどうなるかわからないが、ここまで来たらなんとかやり遂げたい。
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by flauto_sloan | 2009-02-06 01:08 | MITでの学び(MBA)
最終学期
いよいよ最後の学期が始まった。必要な単位はこれまでよりも少なく、春休み以降は授業も少なくなるので、余裕ができた分を何に使おうかと思案している。ひとまず、将来やりたいことが見えてきたので、その下調べやプラン作成にでも費やそうかと思っている。

今学期の履修科目は、できるだけMITらしいものを取りたい、と思っている。エンジニアリング・スクールの学生が多い科目を取って、MITらしさを存分に味わってから卒業したい。まだ最終的にどうするか迷っているが、メディアラボの授業も取ろうかとも考えている(スローンの変な制約のため、これを取るとハイフェッツ教授の冬の授業の単位を無駄にしないといけないのだが)

あとは、スローン内での友人関係をもう少し強固にしたい。今後同僚になる連中もいるし、人間的に面白い連中も多い。時間と体力の許す限りだが、イベントへも顔を出すようにしてみよう。

時間があるうちに、妻と色々見聞きしたいものもある。ニューヨークの名所も、行きたいのにまだ行っていない所をリストアップしたら、実はかなり多かった。ボストンもまた然り。

悔いの残らない最終学期にしたい。
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by flauto_sloan | 2009-02-02 22:03 | MITでの学び(MBA)
Distributed Leadership - MITでのリーダーシップ論
先週までの計5ヶ月に亘るケネディスクールでのリーダーシップの授業に続き、今週はIAPでのSloanのリーダーシップの授業 "Distributed Leadership" を取った。2日半のワークショップで、MIT Sloanの教授陣が練り上げたこのコンセプトを学び、実践する。

Distributed Leadership
このモデルは、リーダーシップに必要な要素を4つに分け、ある組織でリーダーシップを発揮するためには、この要素を全て担保しなければならない、とする。リーダー一人が全ての要素を持つ必要はなく、寧ろそんな「完璧なリーダー」はいないので、仲間を含めて要素を「分散」して保持することに重点を置き、それ故に "Distributed(分散)" リーダーシップと呼ぶ。その四つとは
  • Visioning: 組織の将来像を目に浮かぶように描く能力
  • Inventing: Visionで描かれた目的を達成するための作業・方法を編み出す能力
  • Relating: 組織内外の主要な人間との関係を築き、作業に巻き込んでいく能力
  • Sensemaking: 組織と人々に働く意義を与え、主体性とやる気を促す能力
ここでVisioningとInventingは創造し実行する能力として同じ機軸の両極であり、RelatingとSensemakingはリーダーシップを実現可能にする能力としての機軸の両極にある。二つの能力の軸を十分な幅を持って対応できることが、リーダーシップ発揮に不可欠である。

四つの役割
そしてリーダーシップを発揮すべきプロジェクトのチームには4つの役割が必要であり、これらがうまく分配され実行されることが重要である。
  • Mover: 新しいアイディアを持ち込んだり、仕事を進めるための提案をする役割
  • Opposer: Moverの提案に対し反対意見を述べ、議論のペースを調整し、アイディアに深みを与える役割
  • Follower: Moverの提案に同意し、議論を推進める役割
  • Bystander: 議論と距離を置いて、新たな視点を導入したり、議論の評価をしたりする役割
これらの役割は、会議やプロジェクトの中でバランスよく実行・介入されねばならない。MoverとFollowerだけの会議は誤りに気づかず進むリスクがあるし、MoverとOpposerだけでは議論が行き詰る。

実践からの学び
ワークショップでは、ミニケースやグループディスカッションを用いて、これらのコンセプトを一つ一つ実践・理解していく。私としてはハイフェッツ教授のリーダーシップで学んだことを、実践的な深みに留めて実用的に再構成したものと移ったので、理解よりも実践を重視した。

具体的には、普段苦手意識を持っている"opposer"の役割を意識的に行った。結果的に、ミーティングの中で意見を言わず、質問を繰り返しただけで、議論に深みを与え、存在感を得ることができた。結果的に議論が誤った方向に行かなかった分生産的だったし、論議を尽くしたと言う安心感も醸成された。

またこの授業では意識的に発言を多くしてみたのだが、発言をすればするほど、発言をし易くなっていくのがわかった。周囲の好意的な評判も得られ、なるほどやはり米国なら米国流のやり方が快適であると実感した。

より実践的に
公的機関から私企業、非営利団体から営利団体まで幅広い状況を想定するケネディにくらべ、スローンは基本的に企業がリーダーシップを発揮する状況だ。条件が限定されているだけ、スローンのリーダーシップ論は実用性高く設計されているように感じる。

ただ、3日間しかないワークショップであり、また参加者の興味レベルの違いもあって、「なぜその能力が必要なのか」「そもそもなぜリーダーシップを発揮しなければならないのか」といった問に対しては、十分な検討がなされなかった。そのあたりはやや残念だったが、ワークショップの設計上仕方あるまい。

二つのリーダーシップ論を対比することで、ハイフェッツ教を盲信せずに相対化することができたことが、色々と実験して学んだことと並んで、このワークショップから得られたことか。なかなかに有用な2日半だった。
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by flauto_sloan | 2009-01-21 23:38 | MITでの学び(MBA)
Sloan Talent Show - 音楽を学ぶ
昨年に引き続き、秋学期最後のイベント、"Sloan Talent Show" に参加した。今回は中国系アメリカ人の2年生(チェロ)、韓国人の1年生(ヴァイオリン)と日中韓トリオを組み、C.P.E.Bachのトリオソナタを演奏した。

ヴァイオリンの韓国人マリーは、ジュリアードを卒業し、プロ活動を経て今はNew England ConservatoryとMIT Sloanを掛け持っている、本格的なヴァイオリニストだ。こんな芸術家がいるからこそ、ビジネススクールも面白い。

チェロの中国系アメリカ人チェスターはMIT卒で、ボストンのユース・オーケストラやMIT Symphony Orchestraにも所属していた実力派。

そんな凄い二人と競演できたのは非常に幸運だったが、残念ながら今年の会場は学校近くのバー。飲みながら聴けるように、とのことだが、とにかく音響が悪くて暑くてうるさい。ヴァイオリンの音がなかなか聴こえず、ピッチやタイミングがうまく取れなくて苦労した。昨年のようにMITのホールで演奏したかったものだ・・・

その演奏をShintaroが録画してくれたので、恥ずかしいがリンクしておく(残念ながら会場の騒がしく、聴き取り難くなっている)

演奏はまあ色々ハプニングがあったのだが、練習の過程で二人、特にマリーから非常に多くを学んだ。フルートのレッスンをやめてもう10年ほど経ち、かなり我流になってしまった。また古学奏法をするオーケストラに長くいたため、表現も気づかないうちに幅が狭くなってしまっていた。

マリーはヴァイオリンの先生もしているだけあって、細かい表現や曲の解釈を教えてくれる。久々にレッスンに行っている気分だ。自分の表現力の浅さ、アンサンブル能力の鈍りを痛感する。だが上手くいかなくて萎縮してしまうと、二人でモチベートしてくれる。お陰で楽しく演奏ができた。

また、彼女のヴァイオリンが入ってくる瞬間の緊迫感は流石で、ここまで刺激されたのは初めてだった。乗せられて、自分なりに返答する。この音を通じた対話がアンサンブルの醍醐味であり、フルートを20年続けることとなった原点だ。その楽しさを高いレベルで思い出せたのが非常に嬉しい。

この徹底したこだわりと、可能性を引き出そうとするモチベーションとは、先日のBen Zanderの講演に通じる、アメリカ流音楽教育の基本要素なのだろう。

本番はともかくも、参加することに意味があったショーだった。
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by flauto_sloan | 2008-12-10 22:30 | 音楽・芸術
交渉古今東西
Power & Negotiation の最後の授業は、チームレポートの発表会だった。各チームが実際にあった交渉をひとつ取り上げ、どのような構造(関係者、利害、争点)があり、どういう交渉先述の下で結果が定まったかを分析する。

面白かった発表をいくつか紹介。
  • 松坂の代理人とレッドソックスとの交渉: 「悪魔」と呼ばれる代理人Scott Borasが、Agent-principal問題ぎりぎりの交渉をして100億円の移籍を実現させたもの。交渉期限当日も全くレッドソックスと交渉する気配を見せず、GMが直接彼の家を訪れ、サインしてくれるよう懇願したという。こうなると交渉力もあったものではない
  • ベルサイユ条約: 第一次世界大戦の戦後処理は、米・仏・英・日・伊の思惑が錯綜した結果、一国だけ他国の利害の外にいた日本のみが得をした。他国は中途半端な結果を得ただけで、やがて第二次世界大戦を招いただけだった
  • OPEC: 石油価格が激しく推移したここ2年、OPEC内部ではアラブ諸国(長期的視野に立ち、石油高騰による需要減を避けたい)と、ベネズエラ等(短期的に利益を叩き出すため、価格を吊り上げたい)との激しい交渉と駆け引きがあった。OPEC会合ではアラブ諸国が優勢だったが、ベネズエラは会合の隙を突いて価格吊り上げに走る。最終的にはアラブ諸国が増産に踏み切り、石油価格は安定した
他にも六カ国協議、米軍のイラク統治など興味深いテーマが多かった。また、ベルサイユ条約など日本が関わっていた過去の交渉例がいくつかあり、六カ国協議と比較して、過去の日本外交のしたたかさと、現在の不甲斐無さを痛感もした。いつからこれ程に構造把握と交渉・駆け引きに弱くなってしまったのだろうか。同級生がプレゼンの中で日本を主要プレーヤーとして取り上げるかどうかで、嫌というほどにプレゼンスの低下を感じてしまうのが悲しい。

ちなみに私のチームは… 題材選びを誤ったために、レポート提出直前に分析上の致命的な欠陥を発見。発表でも予想通り教授にそこを突かれ、最も焼かれたチームとなってしまった… 残念。
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by flauto_sloan | 2008-12-09 18:01 | MITでの学び(MBA)