MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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彦龍のラーメンをボストンで思い出す
珍しく時事ネタなのだが、ニュースによると、日本一不味いラーメン屋の彦龍が閉店するらしい。ちょうどハーバード・スクエアに昨年オープンした某店のラーメンが、彦龍のラーメンを髣髴とさせて懐かしく思っていたところだったので、偶然を感じる。

彦龍のラーメン
テレビで何度も取り上げられた彦龍。大学院生のとき、その彦龍がある千駄木に住んでいた。一人暮らしの学生が多く住む千駄木はラーメン激戦区で、私もしょっちゅうラーメンを食べていた。

ある時研究室の友人から彦龍の話を聞いて、どれ日本一不味いラーメンを食べに行こう、と思い立った。千駄木商店街の裏路地に店を見つけ、入店。ひとまず醤油ラーメンを注文した。綺麗とはいい難い店内ではあったが、まあこれくらいの店はないわけではない。問題は味だ。

やがて出てきたラーメン。スープを一口すすると、出汁のない、醤油を薄めただけのような味気なさ。白くのびきった麺はぼろぼろ千切れ、スープをまるで絡めない。具のチャーシューは異常に塩辛く、野菜炒めは見事に焦げあがっている。

これはとてもじゃないが完食できない。そう思った私は、テーブルの下でそっと友人の携帯へワン切り。コールバックしてきた電話に出て
「え、もうそこまで来たの? わかった、すぐ迎えに行く」
とわざとらしく話し
、お代を置いてそそくさと退散した・・・・・・

それ以降行っていないが、「味噌を溶いただけ」という味噌ラーメンを一度食べてみたかった、と後悔することはない。

ボストンにて彦龍の面影を見出す
ハーバードスクエアのケネディスクール近くの好立地に、昨年某日本食(?)レストランがオープンした。開店当初から日本人コミュニティの中で「あれはひどい」と評判が立つほどの話題の店だった。

どれほどひどいか、気になって仕方なかったので、ケネディスクールの授業の帰り道に立ち寄った。店内は明るくオープンで、悪くない。客の入りはまあまあ。

注文したのは、味噌カルビラーメンと餃子だ。しばらくして、二品がやってきた。
餃子は冷凍ものを温めた感じだ。これは想定範囲内。メインのラーメンを口にする。

c0131701_2115633.jpg10年ほど前に食べた彦龍の記憶が、鮮烈に思い出された。
コシのない麺、出汁が利いていないスープ(豆板醤を放り込んでごまかしているだけまし)、味噌は溶いてあるだけでコクはなく、野菜は少し焦げている(彦龍ほどではない)。
そしてカルビは不味くないのだが、味の調和を全く考えていない。

このチェーンのラーメン担当シェフは、彦龍で修行したのだろうか

とても美味しいとは言えないのだが、さすがに彦龍よりはましで、食べられなくはない。ただ、ラーメン屋が数件しかないボストンだから食べられるのであって、日本にあったら客が入らないことは断言できる。このチェーンは世界中で展開しているが、日本にだけ一店舗もないのがそれを証明している。

そして高い。ひどいラーメンでありながら、十数ドルもする。餃子とチップを入れると、$20くらいだ。不味いものを高く。うーむ、なんともワガママである。

閉店してしまう彦龍のクオリティを垣間見たい方は、一度ハーバードスクエアを訪れることをお勧め・・・いや、しないでおこう。
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by flauto_sloan | 2009-04-05 00:02 | ボストンでの生活
ボストン日本人研究者交流会での学び
c0131701_555032.jpg今回のボストン日本人研究者交流会は参加者が過去最高で、124人収容の教室が満席になる程だった。
そんな人気のテーマは、ハーバード・ケネディスクールの友人二人による開発支援の話と、ハーバード公衆衛生大学院卒業生と産科医の方による妊婦さんのケアの話だ。

途上国支援を志す熱い人から、お腹の大きな妊婦さんまで、いつも以上に幅広い参加者だった。内容も素晴らしく、開発援助を通じた日本のプレゼンスについて考えさせられる素晴らしい機会だった。

私個人としても非常に意義深い回であった。1年ちょっとこの交流会の幹事を務めてきたが、今回から次期幹事グループに業務のほとんどを引き継いだ。新幹事にとっては初めてのことなので、時折サポートはしたものの、結果的には記録的な大盛況であり、幸先のいいスタートだった。

幹事としての学び
引継ぎにあたって色々とデータを眺め、思うところをまとめたのだが、この非営利団体を1年間引っ張ってきて学んだことは実に多かった。

まず、この1年の最大の成果は、参加人数を昨年に比べて倍増させたことだ。昨年はだいたい60人参加登録して40人が当日参加していたが、今年は60-80人登録してそれ以上が集まった(口コミによる飛び入り参加がいる)。しかも3回は100人越えの大盛況だ。ボストンの日本人研究者が全部で何人なのかはわからないが、ペネトレーションはかなり高いといえよう。

次の成果は、発表したいという熱意を持った方がどんどん自薦してくれるようになったことだ。ボストンの日本人は優秀な方ばかりで、最先端の研究成果を、より多くの人に知ってもらいたいと願っている。これだけ多くの日本人が集まる場は、発表にうってつけの機会だ。発表者選びに苦労していた前年度が嘘のように、長い発表者候補リストから一部しか選べないという、申し訳ない悩みを抱えることになった。

最後は、発表会の後の懇親会(飲み会)への参加率が向上したことだ。全体の参加者が増えて、懇親会への参加率も増えたのだから、毎回飲み会は大賑わいだ。そこではまさに、異業種の交流が生まれていた。

なぜこの成果を達成したかの戦略・戦術は割愛するが、スローンで学んだことが直接的に役に立った。このコミュニティを私の実験の場とさせてもらったのだが、ハイフェッツ教授のリーダーシップ、スターマン教授のシステム・ダイナミクス、シュマランゼー前学部長のインダストリアル・エコノミクス、アンダーソン教授のテクノロジー・セールスでの学びを適用してこその成功だったといえる。

それら個別の学びは大きかったが、一歩下がって、メタレベルでの学びをまとめると、以下のようになる。
  • 事前計画は重要だが、状況の変化に応じて即興的に決断と計画を変えることはもっと重要
  • ステークホルダーとその性質、相互関係を、好奇心をもって理解することが第一歩だ
    • ステークホルダーの集団が受容できる変化のペースを見極めるには、まず何らかの行動をしてみる必要がある
    • 何事、誰に対しても好奇心を失わず、色々と訊ねてみよう
    • グループとしての学習がどれくらいの早さで行われ、どれくらい永続的かによって、介入の仕方は異なる
  • 派手で目立つものだけが改革ではない。地味な変化でも、それが組織のシステム全体を大きく前に動かせる変化であれば、大きな成果につながりうる
    • 派手な変化は、正しく見えてもステークホルダーが拒否する可能性が高く、結果的に意図せざる結果になるリスクを認識していなければならない
    • なにがレバレッジ・ポイントかは試行錯誤の中から見えてくる。そのためにシステム像をより深く精確に理解しようとする努力は惜しまない
    • ただし変化を起こしてから成果が現れるまでに時間のズレがあるため、辛抱強く待ち続けなければならない
  • 自分ひとりの成果はあり得ず、信頼できる仲間を持ち、感謝の気持ちを忘れてはならない
    • 信頼は組織の礎であり、損なわないように最も気をつけねばならない。特に、感謝の念は上辺だけでなく心から持っていなければならない
    • 誰からでも、どんなグループからでも学べるものはあるし、それは自分では気づかないものであることが多い。真摯に話を聞き、耳に痛い意見にこそ耳を傾ける
    • だがリーダーとして決断すべきときは肚を括る。以後は後悔ではなく、気づきと学習を心がける
  • 自分の感情(特に好悪)は、自分が何に囚われていて、何に気づいていない可能性があるのかのバラメーターである。感情を隠す隠さないよりも、自分の感情をどう捉えてどう対処するのかが重要だ

以上は、わかっていてもなかなかできない。だが今回、どうやったら自分の心を自由に遊ばせられるのかがわかった気がする。できない自分、わかっていない自分は受け入れるしかない。自分を問題化して解決しようとし過ぎてはいけない。問題の源泉は組織内外のシステムであることも多いからだ。

むしろ、感謝と好奇心と遊び(即興)という3つの基本的な指針だけは忘れないようにしたい。
そうすれば、知識・見識に加え胆識を養え、四焉における遊に辿り着けるような気がしている。

数多くの素晴らしい人々と出会え、自らの成長の機会を与えてくれた最高のコミュニティだった。残り2回はゆっくりと楽しむことにしよう。
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by flauto_sloan | 2009-04-04 21:03 | MITでの学び(非MBA)
ボストン音楽コミュニティ
c0131701_004068.jpg12月の研究者交流会でも発表いただいた、ハーバード大学音楽学部留学中の桐朋音大の沼野雄司先生が帰国されるので、ボストン界隈の音楽つながりの友人を集めて送別会(という飲み会)を行った。
漸く「ボストン音楽コミュニティ(音大生の集まりではなく、異分野の人が音楽を愛するただ一点でのみ集まり、音楽の将来を語るコミュニティ)」といえるようなものが出来てきた。といっても何の形式もなく私がそう呼んでいるだけだが、少なくともこの1回、10人ほど集められただけでも嬉しい。

参加者は音楽学の沼野さんを筆頭に、いつもシンフォニー・ホールで遭遇しているMITやハーバードの音楽好きや、作曲家の息子、元オケ経験者の若手研究者に現役音大生、文科省の友人、そして私だった。

お酒と共に、音楽の話が尽きない。みな知的好奇心に溢れ、専門分野も音楽経験も大きく異なるので、軽い話から音楽と社会の関わりまで幅広く飲み語る。

日本のクラシック界はどうなるのだろうか。誰も答えなど持っていないのだが、アイディアをぶつけて磨ける仲間を作れたことが、この飲み会の一番の収穫だった。
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by flauto_sloan | 2009-03-16 23:41 | 音楽・芸術
BSO/Blomstedt/Goode - 年老いても若い情熱
今シーズンのBSOは、後半に客演指揮者が続く。常任指揮者のレヴァインがMETのリング・サイクル(ワーグナーの『ニーゲルングの指輪』を4話全曲を演奏する)でかかりきりだからだ。今回の指揮者は、かつてNHK交響楽団もよく振り、現在はN響名誉指揮者のブロムシュテット。もう高齢だが、老いを感じさせない、即興的で華やかな演奏が素晴らしかった。

中プロに、
リチャード・グードがピアノ協奏曲第18番を演奏した。グードは人気の高いピアニストで、初めて聴くので楽しみにしていた。だが演奏はどうも心に響いてこなかった。格調高く細部まで練られた演奏なのだが、全体として地味というか特徴がないように聴こえてしまう。期待が高すぎたのだろうか。何人か来ていた友人たちも、グードの演奏を残念がっていた。

一転、メインのブラームスの交響曲第4番は、BSOの良さが存分に引き出された名演だった。N響の時も感じたが、ブロムシュテットは割合に地味な演奏をする。今回も派手ではないのだが、BSOから実にいい響きを引き出していた。しかも表現を即興的に自由に変化させ、この悲劇的なシンフォニーにドラマと閃きを与えていた。老いてますます若さを感じた、ブロムシュテットの偉大さに、会場も惜しみない賛辞を贈った。

老いというと、老境という言葉が暗示するように、新しいものを取り入れず、成長よりも総括に入るように思われがちだが、ブロムシュテットのように老いてますます成長する才人を見ると勇気づけられる。最後のブラームスだけでも聴きにいった価値があるいい演奏会だった。
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by flauto_sloan | 2009-03-12 21:52 | 音楽・芸術
BSO/Gilbert - 次世代の気鋭
c0131701_329533.jpgニューヨーク・フィルで次シーズンから常任指揮者に就く、アラン・ギルバートがBSOを振った。
ギルバートの母親はNYPでヴァイオリンを弾く建部洋子氏であり(故人の父親も同じくNYPのヴァイオリン)、日系米国人である。ボストンの小澤に続き、日本人・日系人が一流オケの常任になるというのは嬉しい限りだ。

ギルバートは細部まで非常にバランスの取れた音楽を作り、BSOをぐいぐい統率していった。特にメインのアイヴズの交響曲第4番は、音楽が複雑に絡み合う難曲でありながら(指揮者が二人いて、二階の客席でもオケが演奏する)、垣間見る調和を軸に見事に纏め上げ、感動的な演奏だった。

実力は申し分ないこのギルバートを迎えて、生まれ変わるNYPが楽しみなのだが、来シーズンのそれを見届けられないのが残念だ。ユダヤ人のマゼールからアジア系のギルバートに常任が代わるのは、現代ニューヨークを象徴している。コンサートマスターの世代交代も同時に起きていて、今は演奏会によってNYPの出来の差が激しいのだが、成長するための混乱と痛みなのだろう。ギルバートによってNYPが再び盛り上がり、新生NYPとして、祖国への凱旋公演をして欲しいものだ。
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by flauto_sloan | 2009-03-06 20:50 | 音楽・芸術
Video Game Orchestra!! - 音楽は楽しむもの
c0131701_4292156.jpgボストンで活躍している若手日本人指揮者、佐藤洋平氏に誘われて、彼が指揮をするVideo Game Orchestraの演奏会に行ってきた。

バークリー音楽院のホールにて行われたコンサートは、そこの音大生を中心に満員で、熱気に包まれていた。

ファイナルファンタジーなどのRPGからアクションゲームまで、色々なゲーム音楽を取り上げ、演奏する。ニューイングランド在住の作曲家が作った曲も結構あるため、演奏が終わると作曲家が舞台に招かれることも。そんな彼らは嬉しそうに、

"This is the composer's dream!!"

と、オーケストラを賞賛する。なかなか生のオーケストラで演奏されることなどないからだ。

聴衆もノリがよく、舞台上でオケのリーダー達がMCをやると、会場中で盛り上がる。いわゆるクラシックのコンサートとは全く異なる、観客を巻き込んだポップスのコンサートのような楽しさだ。演奏のレベルは音大生なのでプロ並ではないにせよ、逆に彼ら自身が楽しんでいるのが伝わってくる。それがまた楽しい。

アンコールの最後の曲は、ゲーム好きなら誰もが知っている名曲、FFVIIのセフィロス戦の音楽『片翼の天使 (One-Winged Angel)』だ。大学院の頃に、研究室の友人から借りてプレイしたのを懐かしく思い出しながら、聴いていた。相変わらず格好いいリズムとメロディとで、会場が沸きあがる。

指揮者の彼が言っていた、新しいオーケストラの形、観客を楽しませてこその音楽、というものを実際に聴いた。確かにこれは面白い。音楽の楽しさを再認識すると同時に、若い音楽家の可能性をも感じた夜だった。
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by flauto_sloan | 2009-03-05 22:31 | 音楽・芸術
大雪で足止め
3月になったのに、東海岸は大雪だ。昨晩のうちにNYからボストンへ帰ろうとしたのだが、深夜のバスが雪のため運休に。
やむを得ず家に帰り、早朝の電車でボストンに戻った。

雪は休校になりかねないほどだったが、結局MITもハーバードも通常通りで、聴講しているハーバードのクラスには出席できなかった。今年の冬は長いのだが、春はまだ遠そうだ。

学校で、雪の上を嬉しそうに遊んでいる犬がいた。雪を食べて、飛び跳ねて、実に楽しそうだ。
雪を楽しむくらいの気持ちがちょうどよいのだろう。
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by flauto_sloan | 2009-03-02 21:24 | ボストンでの生活
PEはハゲタカか救世主か
バレンタインデーの今日、スローンの親しい友人であり剃刀のように切れる頭脳の持ち主、Shintaroがボストン日本人研究者交流会にて発表してくれた。テーマはPE (Private Equity) ファンドについてであり、彼のコンサルティング、インターンでの経験から、日本におけるPEの現状と将来とを鋭く分析、紹介していた。PEは日本経済を躍進させるドライバーとなり得るのだが、今回の金融危機という擾乱をどう乗り越えるかによって、悪貨が良貨を駆逐する可能性もあると思った。

発表の詳細は割愛するが、以下の点が特に印象的だった。
  • PEファンドはそのノウハウや実行力によって、日本企業の競争力を高める可能性を持つ。企業価値向上のノウハウや人材を持っている、バイアウト・ファンド、事業再生ファンド、不良債権投資ファンドといった各種ファンドがそれぞれの強みを活かす分野で活躍していけば、日本企業の競争力は強化される
  • 日本でハゲタカと揶揄された短期に企業を解体するファンドや、少数株主として物申すアクティビスト・ファンド*1と異なり、PEは10年単位での企業の成長性を考える。投資後5年で投資先の価値向上をして、他のファンドや企業に売却するためには、買う側もその5年後にさらに価値が上がると思わないといけないからだ
  • ノウハウやグローバルなネットワークを持つ海外PEファンドも日本に参入しているが、厳しい時期にある。日本では案件の大半が、国内銀行系ファンドによる独自案件*2であり、案件生成が困難だ。加えて、円高、信用縮小による自己資金投資の増大と、利回り目標達成の困難化といった悪条件のため、海外ファンドは日本で活動しにくくなっている
  • これから最初の投資案件がexitする時期であり、この案件をPEが買う二次市場が発生すれば、PEファンド業界がさらに興隆する可能性がある。だが三洋を買ったのがパナソニックだったのは、この二次市場立ち上がりに冷や水を浴びせた。今後のPE業界の展望はまさに岐路にある
PEについて色々な場で知っていくうち、日本にはPEファンドが必要だと強く思うようになった。良くも悪くも日本企業は本質的な変化(構造改革というか体質改善)を起こしにくい。だが米国企業に比べて日本企業が圧倒的にROEが低く、(最近は調整局面だが)企業価値も低い。変わらないでいることは競合優位性をじりじりと失い、不作為のリスクを生み出す。

ならば圧倒的な実行力を発揮し、ごく当たり前のことをやりきることが必要なのだが、それを自分でできれば苦労しない。だから外部の力が必要で、コンサルティング・ファームに変革を旗振ってもらうが、それでも変われなければPEという外圧が必要だ。

だがそんな「変革の実行者」としてのPEの役割はまだ十分認識されていない。初期のファンドが張られた「ハゲタカ」「物言う株主」といったレッテルは、活動内容の違いを覆い隠して、一人歩きしている。ファンドの良い面は認識されにくく、産業再生機構の成功も「あれはガイジンじゃなくてお上がやったことだから」と価値の源泉を取り違えられかねない。そんな危うい業界で危惧されるならば、「悪貨が良貨を駆逐する」事態だ。

もし海外ファンドが(一時にしろ恒久にしろ)撤退し、国内金融機関系のファンドが中心となると、目標ROIが引き下がり、ノウハウも十分に蓄積されない可能性がある。諸々の理由で持ち込まれる案件の中には、本来価値向上の見込みが薄いものも、これまでの経緯などで投資してしまうものもあるかもしれない。そうすると、本来なら3割の案件が成功しなければ採算がとれないところを1割2割でも仕方がない、企業価値が1割しか改善しなくても仕方がない、と投資の質が下がってしまう可能性がある。

するとPEファンドの本来の名と実とが離れてしまい、ファンドで企業体質は変わらない、という誤った認識ができてしまうだろう。そうすると、なかなか本来の目的が達せられにくくなってしまうだろう。それはなんとも避けてほしい。


PEはコンサルティング時代から、同僚が転職していったり関連プロジェクトがあったりと、自然と興味を持つ分野だった。私自身は何故だか、自分が行きたいとはなかなか思わないのだが、その価値は認めている。今後PEの二時市場が立ち上がり、だが金融危機前の教訓を活かした慎重さで、「影の銀行」として活躍してほしいものだ。


*1 村上ファンドやスティール・パートナーズなどが有名
*2 他のファンドを招いて入札するのではなく、相対で売買する案件

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by flauto_sloan | 2009-02-15 21:18 | 交友
Harvard Asia Business Conference - 中国の勢いから日本を省みる
ハーバードでAsia Business Conference があった。中国への注目と、中国人のプレゼンスに改めて驚く。特に、中国の強みが低賃金から人材へと移行しているのが需要・供給両面で感じられる。

日本の危機再考と、中国人の視野への不安
開会のkeynote speechは、HBSのベイカー・スカラー(最優等)保持者で新生銀行の前CEOのポルテ氏であり、日本のバブル崩壊後の政策からアメリカが今学ぶべきものを論じた。
政策には四つのステージがあり、まず状況把握(inspection)があり、金融機関への資金注入(injection)がある。そして不良債権を切り出して処理し(ejection)、最後に金融機関が自ら自己資本を増強できるためのビジネスモデルを作る(making profit)。アメリカは今injectionのフェーズにあり、今後日本のやり方をよく学んで、どうejection、making profitへと繋げるかを考えなければならない。

日本は村山内閣で内定し橋本内閣で導入された消費税によって、景気浮揚のチャンスを潰してしまったが、それ以外はよく非常によく検討し、危機克服への重要な事例を作り出した。日本が直面していた課題の大きさ・難しさを理解し、五里霧中ながら断行した政策とともに、もっと日本を評価するべきだ。
日本での氏の評価は措いておくにせよ、日本人としては勇気付けられる講演だった。だが会場の大半を占める中国人および中国系アメリカ人の反応は非常に薄い。PCを開く者、居眠りする者。集中力の低さが伝わってくる。講演後の周りの反応を聞いていると、「何で今後のアジアのビジネスを語る場で、過去の日本を語らねばならないのだ」といった声が聞こえる。

こうした中国人の態度にはいささか幻滅してしまった。若い時から中国古典に慣れ親しんだ所為か、中国は豊富な歴史から学ぶ能力が非常に高いと考えていた(愛読書の韓非子は、いわば法と経済のケーススタディ集だ)。今も中央の政治家はそうなのかもしれないが、この経験といい、スローンにいる一部の中国人と話した感想といい、若いビジネスリーダーに歴史への敬意があまり感じられない。

東夷を蔑ろにする気持ちもあるのだろうが、中国の歴史は改革開放から始まったわけではないし、経済危機もオランダのチューリップバブルから400年の歴史がある。歴史に加え、経済・経営の理論も、鼠を捕る猫だけを選り分けている感がある。

とはいうものの、中には教養豊かな中国人の友人もいるし、私の懸念が杞憂でいてくれる可能性もあるが、パースペクティブとレトロスペクティブがもしも深まらないならば、現代中国のビジネスリーダーが傲岸さと責任感の無自覚を生み出してしまうのではないかと心配になってしまう(尤も、日本も同じ状況だが)。


中国への期待
また、パネルディスカッションのトピックや顔ぶれを見ていても、中国のプレゼンスが高い。内容も、珠江デルタを始めとした低賃金の製造拠点としての役割よりも、R&D拠点としての中国の可能性を論じたものが目立つ。勿論、知的財産の保護や、起業家精神と裏腹の定着率の低さといった問題はある。また一大消費市場としての魅力も高まっている。

中華系の参加者も、ボストンだけでなくNYUやコーネルといった他都市の大学からも来ており、存在感とネットワークの深さを一層増している。

日本人もIMFの加藤氏やサンリオCOOの鳩山氏を初め、見識の高いビジネスパーソンが参加していたが、参加者の割合も含め、全体として存在感が薄い(韓国はそれ以上に薄かった感がある)。日本経済が今から大きな成長をするのはなかなか難しいし、良くも悪くも変化に乏しい(GDPの年率マイナス12%超は衝撃だが)。だが日本も変化していないわけではなく、様々なレベルでの革新が進んでいる。GDPといった外枠の変化の乏しさと、世界への発信力の弱さとで、日本国内の変化が実際よりも低い評価を受けている感がある。


ゲームのルール
中国の政治的な巧さは、世界中に広がる華僑ネットワークと、ゲームのルールの重要性の見極めと、少しずつルールを変えていく巧妙さにあると思う。

日本人は「良いものを作れば、いつか認められる」と考え、そのヒューリスティクスが正しかった時期があった。なまじそれが高度経済成長期という輝かしい時代に上手く機能していたため、いまだにその考えに固執しているきらいがある。完全に否定するつもりは全くないが、世界市場では「良いと思ってもらえるものを、良さを正しく伝えられれば認められる」のが現実のゲームのルールであり、マーケティングというコミュニケーションが重要である。

この良さの伝達が、国家、企業、個人レベルで日本は苦手だ。ボーゲル先生も日本の政治家やリーダーのパブリック・スピーキングの拙さを心配されている。ハイテク製造業にコンサルティングをしていると、製品は恐ろしく良いのに、マーケティングの拙さで商機を逃し、競合に負けている(それが数ラウンド続いて、もはや良い製品を作る知見や体力に翳りが出ている)。かといって、日本に有利にビジネスというゲームのルールを変更することは、自動車などを一部を除き、多くの業界ではできなかった。

一方で、中国はアメリカが設定したゲームに乗りつつ、巧みに上位プレーヤーとなっていく術を見出している。同時に、アフリカ進出や気候問題では自らがゲームのルール作りに関与し、自国に有利にもっていこうとしている。そして作ったルールが定着するまで、大きな動きをしない辛抱強さがある。日本は戦後アメリカの統治下・影響下でそのルール制定スキルを急速に失い、いまだに復興できないでいる。それには巨視的でシステム的な考え方と、相手を知らず出し抜く巧妙さが必要だが、前者の発達は教育が妨げ、後者の発達は社会が妨げている。


日本は敗戦で智慧や技術の断絶が起き、中国も文化大革命で知識の断絶が起きたのだが、なぜこの彼我の差が生じたのだろうか。民族性や文化で片付けられるものではないと思うのだが、私にはなかなかわからない。中国人コミュニティを見ていて、4000年の歴史で変わらぬもの、変わっているものを感じ、その矛盾や断絶に興味を持つ。そろそろ日本も次の世代の国民の思想や価値観を設計する時期なのだろう。それが教育分野で問題意識の高いアントレプレナーが生まれている現象の背後にある潮流だろう。
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by flauto_sloan | 2009-02-14 11:45 | Harvardでの学び
卒業式のゲストスピーカー発表
MITの卒業式 - 私自身の卒業式だが - のゲストスピーカーが発表された。マサチューセッツ州のパトリック知事だ。知事はバイオテクノロジーや代替エネルギー技術をマサチューセッツで推進するための施策を打っている、先進的な知事だ。なにより彼は全米二人目の黒人の知事であり、オバマ大統領の当選・就任と呼応させて選んだのだろう。

パトリック知事は素晴らしいのだが、グローバルな知名度の点では、若干の物足りなさを感じる。技術も経済もグローバルになり、多様性を重んじ世界を導くイノベーションを生み出すMITであれば、グローバルに活躍する人をゲストスピーカーに呼んで欲しかったという思いもある。州知事はあくまで州知事であり、アメリカの北東のローカルな大人物である。

とはいえ、総長以下が慎重に選んだのだろうから、この学問とイノベーションの地に相応しい素晴らしい人物であろう。勇気付けられる名スピーチを期待したい。


卒業式のスピーチは各校かなり慎重に選び、選ばれた側は名スピーチを残すことが多い。有名どころでは、以下のようなものがある。

Apple CEOのSteve JobsによるStanford 2005 commencement speech

昨年のJ.K.Rowling女史(ハリー・ポッターの著者)によるHarvard Commencement Speech

映像はないが、他にこれまでに紹介したものでは、昨年のMITのM.Yunus氏のスピーチ、ジョージア工科大学でのB.DysonコカコーラCEOのスピーチが素晴らしい。

知事がこれらと比肩するほどの素晴らしいスピーチを残してくれれば、旅立つ上でこの上ない餞となるだろう。私がMITで聴く最後のスピーチであろうから。


参考: 直近3年間のMIT、ハーバードの卒業式スピーカー
    MIT
  • 2008: Muhammad Yunus (グラミン銀行総裁、ノーベル平和賞)
  • 2007: Charles M. Vest MIT名誉学長 (MIT Songsにも登場する、15年間MITの学長を務めた教授)
  • 2006: Ben Bernanke (連銀総裁)

    Harvard
  • 2008: J.K.Rowling (作家)
  • 2007: Bill Gates (Microsoft創業者、ゲイツ財団理事 ; 映像)
  • 2006: Jim Lehrer (作家)

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by flauto_sloan | 2009-02-13 21:46 | MIT文化