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本の紹介『恋愛ニセ科学 -恋の進化論-』
友人が本を出版した*1。その名も『恋愛ニセ科学 -恋の進化論-』(くま著、PHP研究所)。ここは堅苦しいブログなので、わざとらしく堅苦しい書評をしてみる。注釈に私の本音が出ているのは、秘密だ。


この薄紅色の本は、人間特有で文学的な感情および行動と目されやすい、「恋愛」という現象に対して、進化生物学、物理学、化学等々のフレームワークを当てはめることで、「恋愛」は自然現象なのだ、と我々に気付かせてくれる*2

ただしアノマリーを説明するためには、経済学的要因や精神分析学的要因など、純粋な自然科学ではない要因も考慮しなければならない。だが著者は、そこにこそ現代人のアイデンティティの一端があることも同時に喝破する。

豊富なケース・スタディに基づいた恋愛現象の分析と、独特の仮説を用いた論理展開は見事で、誰もが「もし自分が当事者であったなら、どのような判断を下すであろうか」と問題提起させられる。さらには自分が下したであろうその判断が、本当に自分の自由意志によるものなのか、あるいは大きな外的な構造・制約によるものなのかを検討・内省するための枠組みを与えてくれ、極めて秀逸だ。

また章によっては、論文初出時に読者と討論した際の議論が抜粋掲載されており、対話による思索の深耕がまた、読む物に新たな視点を与えてくれる*3

恋愛に身を委ねるだけが人間ではない。そこから何を学び、己を深めるのかが人間に許された特権であり価値であろう。この書はその学びに必要な気づきを、手に取った者に与えてくれる名著だと言える*4


…全然硬い本じゃないし、かなり面白いので、是非読んでみてください


*1 実は著者とは某SNSで知り合ったのだが、直接会ったことがない。いや、会っていたのかもしれないのだが、その時点で面識はなかったし、運命も感じなかった。感じていたら、今頃この本のネタになっていただろう。あぶないあぶない。
*2 こういう、くだらない(失礼!)ことを物理や化学の概念で分析するのは、私も大好きだ。大学院時代、実験の合間に某巨大掲示板で似たようなことをやっていたのはいい思い出
*3 ちなみに、私のコメントも一部載せて頂いていて、ありがたい限り。普通の本屋に売っている出版物に文章が載るのは15年ぶりだ
*4 気づきはそれだけでなく、「もしこの人と付き合って別れてしまったら、何書かれるんだろう」という直感も含まれる。いわば一昔前の「恋のから騒ぎ現象」が発生し、著者が今後出会う男性が一歩踏み出す際の抑止力になるのではないかと、いらぬ心配である

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by flauto_sloan | 2008-09-30 11:15 | 交友
家族でRedSox観戦
父親のみ早朝に帰国し、今日は母親を妻と二人でBoston Red Soxのゲームに連れて行った。ちょうどRed Soxはプレーオフ進出が決まり、だが地区優勝を逃したことも決まっていたため、Yankeesとの因縁の一線でありながら消化試合となっていた。

だが、一昨日の大雨で試合が流れた結果、松坂がスライド登板で先発となった。わざわざ日本から来た母に、松坂を見せることができるとあって嬉しい限り。この日はダブルヘッダーで、私たちは第一試合を見に行く。

c0131701_10254149.jpg不安なのは天気。天気予報では「レッドソックスの第一試合は大丈夫です」と言っていた(テレビの天気予報で野球の試合にまで言及するのがボストンらしい)。もし雨ならば、残念だが車を借りて郊外のアウトレットへ行く予定に。

昼ごろになって晴れ、喜んでフェンウェイへ。母はフェンウェイに来るのは初めてで、活気溢れる球場に入ると嬉しそうだ。Red SoxのTシャツを買って、いざ入場。

c0131701_10261381.jpg松坂が球場のスクリーンに映る。今日勝てばメジャーでアジア人最多勝記録タイらしい。いよいよプレイボールだから、ビールを買って来た。だが席に戻ると大雨。ボールボーイたちが慌ててシートを引き、グラウンドを濡らさないようにしている。


むむむ、ビールはおあずけ。
このまま雨で流れたら運転しなきゃならないからだ。

止んだりまた降ったりを繰り返して1時間、ようやく晴れて試合開始。これだけ待っても帰る人がいないボストニアンはさすがに辛抱強い。ビールはすっかり気が抜けていた。


c0131701_1027731.jpg松坂は三振を次々と奪い、球場を湧かせたものの、4回に打たれて降板。それ以降もRed Soxは不利な試合運びで、途中岡島が好投したものの、打線が続かない。終盤でようやく得点が入り、消沈していたファンが復活したものの、結局そのまま負けてしまった。

試合には負けてしまったものの、松坂も岡島も見られたし、得点するときの馬鹿騒ぎも見られたので、面白いゲームだった。
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by flauto_sloan | 2008-09-28 23:03 | 家族
日本人研究者交流会 - 黄昏を明けさせるリーダーシップ
c0131701_9495166.jpg今年度最初のボストン日本人研究者交流会は、東京大学新領域創成科学研究科の柳澤幸雄教授をお招きした。

柳澤教授はハーバード大学の公衆衛生大学院にて教鞭を執り、東大に移ってからは総長補佐として、様々な改革をリードした。日米の最高学府を熟知した教授だからこそのリーダーシップ論は、かなり厳しい問いかけであったが非常に説得力があり、会場の参加者を深く考えさせる内容だった。

内容は参加したShintaroの秀逸なまとめや夏男さんの紹介記事、gsocioさんの問題提起などがあるので、全ては書かないが、教授のメッセージは以下
アメリカにおいて、リーダーは意思決定の主体である。リーダーは自らアイディアを提起し、そのアイディアから出資を集め、スタッフを選び、組織を運営していく。それゆえアイディアは前例の無い独創的なものでなければならず、結果に対する責任はリーダーが請け負う。いわば事後主義であり、「罷免できる独裁者」が米国のリーダーだ。

日本においては、リーダーは意志調整役であり、リーダーとスタッフとが未分離である。アイディアは前例を重視する事前主義であり、意思決定は満場一致の呪縛があるため、リーダーは調整が重要な役割となる。スタッフの忠誠はリーダーにではなく組織に対して立てられる。

このリーダーとスタッフの役割と意思決定プロセスの違いの顕著な結果が、20世紀の100年間のハーバードと東大の総長の数である。ハーバードは5人平均20年であるが、東大は20人平均5年である。日本はリーダーが不在であるために、組織で運営を担保しなければならない。

日本は黄昏に入った。このまま船が沈むに任せるのではないなら、日本でもアメリカ的リーダーシップを発揮できる仕組みを整える必要がある。それは民主主義による罷免が可能な下で、リーダーが意思決定を自らの責任で行い、政策運営上の主要なスタッフを自ら指名できるようにすることである。
最後の段落はだいぶ丸めてしまったが、実際はもっと旗幟を鮮明にした、強烈なメッセージであった。だからこそ賛否両論あり、その後の懇親会ではこの講演に対する議論があちこちで沸き起こっていた。

否定派は、日本とアメリカは文化も価値観も違うので、アメリカのリーダーシップが日本で通用するはずがない、あるいはアメリカの教育機関のシステムが内包する市場原理は、まさに今弊害が露呈し見直されているではないか、といった意見が多かった。

日米の文化や価値観の違いは当然あるだろう。市場原理は万能でないから、お金になりにくい基礎研究や人文系の学問にもお金が回る仕組みを補完しなければならないだろう。だが、前者は柳澤教授はわかりきった上での提言だろうし、後者は発表中に既に触れている。


私は、日本のリーダーシップが劣っていてアメリカのリーダーシップが素晴らしい、とは必ずしも思わない。有効に機能する環境がが違うだけだ。だが新しい経済や社会の変化に適応して変化してきた分、アメリカのリーダーシップが進んでいるとはいえるかもしれない。

弱肉強食の市場原理が淘汰圧となった結果、アメリカではある種のリーダーシップと、それを支える仕組みが残った。日本はバブル崩壊という最大の変化に10年かけて適応せざるを得なかった結果、世界を取り巻く経済や社会の変化(グローバリゼーションやビジネスのスピードの加速など)に適応するのが遅れているだけだ。逆の味方をすれば、アメリカが日本のもたつきを尻目に世界経済をアメリカ化のだから、アメリカ人のリーダーシップが最も適応されていて当然だ。

だが世界不況が現実味を帯びてきて、アメリカの覇権や成功モデルの実効性が揺らぎ、一周遅れの日本が浮上してきそうな今、アメリカが進み日本が遅れていた前提が変わろうとしている。まずは進んでいるアメリカのリーダーシップとその仕組みから学ばねばならないのは必然だろう。だが学んだ結果、これからの日本に必要なリーダーシップは、アメリカ7と日本3を混ぜて止揚したようなものなのかもしれない。

新たなリーダーシップの姿を描くのと同じくらい重要なのは、社会が価値観の変化を受け入れることができるかだ。私が恐れているのは、日本が中途半端な自信を持ってしまうことだ。変われなかった結果、敵失で再浮上しても、変わらなかったことを正当化できるわけではない。変わっていればもっと好転していたかもしれないからだ(証明のしようが無いが)

「変わらなくてよかった」という安易な言い訳を排し、日本を黄昏から引き上げるためには、これまでの日本を否定できるようなリーダーと、それを受容する国民の理解(あるいは危機感)が必要だ。さもなくば、日本は世界経済復興の先導役にはなれず、不況にも乗り遅れただけとなろう。
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by flauto_sloan | 2008-09-27 23:36 | ボストンでの生活
両親とボストン観光
c0131701_823778.jpg留学して初めて、両親がボストンに来た。以前NYには来たのだが、その頃は2月でまだボストンは寒かったので夏か秋に来ると言っていたのだ。

父親はかつて長くボストンに住んでいたため、この地を私なんかよりも遥かに熟知している。母も何度か来ているので、よく知っている。だから私が率先して観光案内をする必要はなく、一緒に面白いものを見て、美味しいものを食べた。あいにく大雨だったので、美術館めぐりになってしまったが。

まずMITミュージアムへ。ここは寮のすぐ近くなので、入寮早々に遊びに行ったところだ。様々なロボットを見て父が楽しそうに解説をしてくれる。母はホログラムに驚いて楽しんでいる。妻は創立当初のMITの授業がネクタイ姿だったのを見て驚く。きっと楽しんでくれるだろうと思っていたが、皆喜んでくれて、MIT代表として嬉しく思った。

その後はボストン美術館を軽く見て(実は私たち夫婦は初めて訪れた)、パークプラザのレストランでステーキを楽しんだ。思えば久々にお肉をしっかり食べた。

c0131701_8204481.jpg翌日はチャイナタウンのベトナム料理屋でフォーを食べて、ハーバードの自然科学美術館へ。両親は昔行ったことがあるのだが、非常にお勧めだと言う。見るべきものは4000体以上ある植物標本。
これが、全てガラス細工なのだ。

とてもガラスには見えない精巧さで、驚嘆の連続。こんな素晴らしい職人芸で作られた教材を取り扱うなら、当時の学生もネクタイくらいしただろう、と思ってしまう。


MIT、ハーバードの両美術館は、それぞれの歴史とカラーの違いが際立っていて面白い。メジャーな観光地ではないのだが、ゆっくりでき、両親ともに楽しんでくれていたのが嬉しい。
少しは親孝行できたかと思う。
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by flauto_sloan | 2008-09-26 23:19 | 家族
Vogel塾 - 出会い
今年度のボーゲル塾が始まった。

昨年、池田さんや私のブログ等々で知名度が上がったのか、今年は非常に入塾希望者が多かった。先生のお宅に溢れんばかりの学生。

顔ぶれは相変わらず多様で面白い。ケネディやUS-Japanといったハーバード勢が多いのは変わらないが、教育大学院からも多く来ている。スローンからも何人か参加している。

今日は先生のご挨拶と入塾希望者の自己紹介だけで終わったが、面白い経歴をお持ちの方も多く、これからが楽しみだ。


まずはテーマ決定が重要だ。私が感じている日本の抱える課題は少子高齢化。
ただ少子高齢化自体が課題とは思っておらず、少子高齢化を前提と受け入れたときに、社会システムがどう変わると最適なのかが問題と思う。更には、その新たな社会を人々がどう受け入れ、適応していくのかが大きな課題だ。

…と書いてしまうと、前回のアジア経済統合の是非以上に広範なテーマになってしまう。だが一年をかけて取り組むには骨応えのあるテーマだと思う。
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by flauto_sloan | 2008-09-25 23:48 | Harvardでの学び
Power & Negotiation - 戦わずして勝つのが上策
今学期とっている授業に、"Power & Negotiation"というものがある。その名の通り交渉術の授業なのだが、単純な技巧を教えるのではなく、交渉の背後にある力学を教えるのが面白い。

教授はイタリア人で、ILOにて様々な労働争議に関わってきた交渉の達人。

交渉は当事者による共同の問題解決だと位置づける。論点を分解して、それぞれの論点ごとに、当事者間の利害が一致しているのか、反目しているのか、一方が勝つと一方が負けるのかを見定める。その上で、合意形成に向けた創造的な問題解決をしていく。

交渉の成否は、その交渉がおかれている構造によってほぼ定まっており、個々人の交渉能力の優劣は、その構造により与えられた合意可能範囲の中でしか発揮されない。これが前提である。

実際、利害・関心が上手く設計された交渉のロールプレイ・ケースを行うと、交渉結果は個人の能力に拠らず、一定の範囲に収まる。

だが実際の交渉においては、そもそも論点がどれだけあり、その論点について当事者(二人とは限らない)がどのような関心・利害を持っているのかを知るのは難しい。

そこでこの授業では、交渉がおかれた構造を見抜き、当事者間に構造的に与えられたパワーバランスを察知し、その上で自分にとって最適な落としどころにまで交渉で持っていくことを学ぶ。だからパワー&ネゴシエーションという名がついている。

もしも相手が論点や構造に気がついていなければ、自分に有利なようにフレーミングもできるだろう。構造での優劣は挽回しにくい。そこへ持っていければ、「戦わずして勝つ」のと同じだ。その上で、双方が交渉を通じて価値を創造し、関係を深められるようにための技術を発揮すればよい。


私は関東出身であり、値切りを含めてあまり交渉ごとの経験がない。だが例えばラテン系など、交渉できないものがないと思っている人もいる*。日本の文化・商慣習における交渉は、アメリカの交渉とは違う要素があるのはわかっている。

だが人間の行動は置かれている構造によって決定されると信じているので、どんな構造が理論的に存在するのかを知っておきたいし、そもそも交渉の技術自体を磨きたい。そんな思いから履修した。


この3連休は、4つの交渉を立て続けに行うのが課題だった。高級車を売ったり、借家をしたり、保険を買ったり、経営するホテルを合併させたり・・・
ある交渉は対面で、ある交渉はスカイプで。
 
色々なケースで、当事者になりきって、如何に有利な条件へ持っていくかの駆け引きが面白い。今回の課題は結果を数値化できるので、どれだけ交渉を上手く運べたのかを授業にて知るのが楽しみだ。


* 以前、最初の授業の課題として「今から1時間外に出てきて、何でもいいから値切ってくること」というのがあったらしい。「そんな難しいことを!」と躊躇する学生がいた一方、「それのどこが課題なんですか」といぶかしむ学生もいたという
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by flauto_sloan | 2008-09-23 12:55 | MITでの学び(MBA)
Hack Goes Green!!
エネルギー問題、環境問題、貧困問題等、"sustainability"は最近のキーワードになっている。"green"は今やsustainabilityを表す色であり、"XX goes green (XXは持続可能性に本気で取り組みます)"という表現がよく見られる。

我等がMITのHackも、sustainabilityを意識するようになったらしい。

ある夜にメインキャンパスを歩いていて、ふとトイレの看板に目をやると、なにかいつもと違う。男女とも人型の頭が緑色になっていて、何か書いてある・・・
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"Save Energy
Do it in the dark"

(エネルギーを節約しよう。暗いところで用を足せ)

・・・・・・。
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by flauto_sloan | 2008-09-22 13:33 | MIT文化
NYP/Maazel/Bronfman - 圧倒
米国滞在中に私が最も聴きたかったピアニストの一人、Yefim Bronfman の演奏をついに聴けた。先月感動したアルゲリッチの熱情とはまた違った、嵐のような迫力に満ちた熱情に圧倒された。

ブロンフマンは現役最高のピアニストの一人で、ゲルギエフ率いるウィーン・フィルとしばしば競演している。VPO来日時もラフマニノフの協奏曲3番を弾き、大絶賛されたらしい。春にVPOを聴いたときも競演していたのだが、流石にその日の公演は一番人気であり、残念ながらチケットを取れなかった(その後2回も聴くチャンスを逃していたので、実に楽しみだった)

曲目はラフマニノフの協奏曲第3番。ロシアの大地を思わせるスケール感と、民族的な熱さとが魅力的だ。

いよいよブロンフマンが弾き始めた。1楽章はやや雑な感じで始まり、あまり乗っていないように感じた。だが1楽章のクライマックス辺りから、だんだんとブロンフマンの凄さが表れて来た。

鬼気迫る、とは正にこのことかと思うほど、激しい魂の叫びがピアノを通じてホールに響く。
鮮烈なクレッシェンドと鋭いアクセント。生命力ある、ねっとりとした音色と響き。
オーケストラを凌駕する存在感。雷のように、次々と襲い来る音の嵐。ふと訪れる緊張感ある静寂。

あまりの凄まじさに、ただただ圧倒される。魂を鷲掴みにされて揺さぶられているような感覚。
曲がどうとか、オーケストラとの絡みがどう、といったことが問題にならない*

弾き終わると、会場は総立ちでの大絶賛だった。それだけのことはある素晴らしい演奏。
帰国までにもう一度聴いておきたい、と思わせる巨匠だった。

* マゼールはさすが経験豊富なだけあり、ブロンフマンを自由に歌わせ(叫ばせ?)ていた
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by flauto_sloan | 2008-09-20 08:22 | 音楽・芸術
大虐殺を越えて - ルワンダ・カガメ大統領
c0131701_813981.jpg昨日(ボーゲル先生の講演C-functionの間)、ルワンダのカガメ大統領の講演会へ行ってきた。MITのCompton Lecture Seriesにて招聘されたもので、こちらでその様子を映像で見ることができる。

ルワンダ内戦にてツチ族とフツ族が争い、100万人のツチ族が虐殺されたと言われる。内戦平定後、ルワンダで初めて民主的に選ばれたのがこのカガメ大統領だ。

大統領は落ち着いた、語りかけるような口調で、アフリカの成長におけるテクノロジーの貢献と今後の課題を述べた。軍人であるにも関わらず、親しみや優しさを感じる人物だった。様々な評価はありながら95%の得票率で再選したのは、紛争に疲れた国民がこの人物に信頼を寄せているからかもしれない。
アフリカはもはや暴力と貧困だけの大陸ではなく、機会に満ちた大陸である。今や金融、エネルギー、テクノロジーなどの産業が、自国の企業を育てながら成長している。ルワンダは虐殺から14年を経て、ようやく平和を取り戻し、民主主義や前進を考えることができるようになった。今や中国、インド、中東湾岸諸国から直接投資が盛んに行われ、経済は年7%で成長している。

その成長においてテクノロジーが果たしている役割は大きい。MITのネグロポンテ教授が推進する"One Laptop Per Child"や、携帯電話の普及は教育の向上や地元経済を成長させる原動力となっている。特に携帯電話は普及率で固定電話を抜き、アフリカの携帯電話史上は世界一の成長性を持っている。国を跨いだ携帯電話会社が誕生しており、普及を促進させている。その結果、インターネットの普及は世界の3倍の速さで進んでおり、その利用によって産業の効率化と成長に大きく寄与している。多くのマイクロ・エンタープライズが携帯電話を活用して誕生している。

今後必要なのは科学技術の教育である。ルワンダ自らがイノベーションを起こし、資源を活用して富を築いていくためには、質の高い教育が必要である。アメリカの教育システムから学ぶものは多く、またアメリカの教育機関に期待するものも多い。

今後まだまだルワンダとアフリカが直面する課題は多い。それを乗り越え、その先の繁栄を実現するためにも、MITとの関係を今後も深めていきたい。

(中国などの進出をどう考えるか、という問に対して)
たしかに中国はアフリカの資源を狙って、アフリカでの支配力を強めようとしていると言われている。だが彼らはアフリカを初めて台頭に扱ってくれている国々であり、欧米の反発はアフリカの重要性が増したことを物語っている。だから中国が悪いとは思っていない。

中国の進出が問題になっているが、そもそもアフリカはこれまで様々な欧米の列強に支配されてきた。中国は国際的に人権問題などを批判されているため、アフリカ進出に対しても穿った見られ方をしているのだろう。アフリカにしてみれば、中国やインドは自分たちをパートナーとして対等に扱ってくれている。これは初めてのことで、哀れみの対象としか見ようとしなかった欧米からは受けなかった扱いだ。

また、アフリカをめぐって欧米と新興国が衝突していると言うのは、アフリカの重要度が以前にも増して認識されているということを意味している。単なる資源の産出地ではなく、投資や成長の機会の地として看做されていることを示しているのだ。

中国などがやってきて、こちらが何もしないで眠っていれば、身ぐるみ剥がされるだろう。だが起きて目を見開いていれば、そんなことは起きない。我々はただ、彼らを歓迎するだけだ。
この地で肌身に感じるものの一つに、アフリカへの注目と期待の高まりがある。以前マクロ経済の授業でも感じたが、アフリカ出身の人々は苦しい過去や直面している課題を理解した上で、自分の大陸に対する誇りと期待を強く持っている。

以前アフリカの夜という集まりでも、今後のアフリカの課題と機会について議論した。自分がどこまで関われるのか分からないが、大きな時代の潮流の一つであり、考えさせられるものが大きい。
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by flauto_sloan | 2008-09-18 22:49 | MITでの学び(非MBA)
Japan C-function - ダンスフロアとバルコニー
c0131701_5444659.jpg今年もC-functionの先駆けとして、Japan C-functionが行われた。相変わらずの大盛況で、2700個の寿司はすぐに売り切れ、1000人は来たであろう会場は熱気に包まれていた。

一年生が主導権をとって日本の紹介をしながら観客を楽しませるパフォーマンス。昨年猛練習した「サラリーマン体操」を思い出す。あれからもう一年とは早いものだ。留学が後半戦になったと実感する。

オペレーション・スシ
今回は前半に食事担当となった。1000人に食事を振舞うとなると、オペレーションが難しい。先学期のオペレーション・マネージメントの授業を思い出す。

中でも大変なのが寿司。寿司は3貫ずつ紙皿に取分ける(一人で大量に取っていく人を防ぐため)

取分け→予備テーブル上に保管→配膳テーブルに補充→お客に渡す

というプロセスで、事前にどれだけ寿司皿のストックを作り保管しておけるかが重要だ。開場まで時間があまりないが、事前に900皿を作るのが当初の目標だった。

だがオペレーションの難しさに悩まされた。取分け作業に非常に時間と労力がかかり、ボトルネックになると見越していたので、奥様方を中心に人員を手厚く配置したのだが、作業に習熟してくるとどんどんペースが上がる。するとボトルネックが取分けから保管に移ってくる。特にテーブル上のスペースが足りなくなり、テーブルの調達待ちで作業が止まってしまった。借りられるテーブルを全て使っても足りなさそうなので、保管の仕方を工夫してできるだけ貯めておく。そこで目標を変更し、ラインを組み直して、お客に寿司を配りながら取分けられるようにした。

最終的には会場までに大部分の寿司皿を作ることができたのだが、改めて全体観を持ったオペレーション設計の難しさを痛感した。


バルコニーの上から
c0131701_5482269.jpg後半は照明担当として、ホールのバルコニーに上り、スポットライトを操作した。今履修しているリーダーシップのクラスで、グループ・ダイナミックスを鳥瞰することを「バルコニーから眺める」と表現されているのだが、実際にバルコニーからパーティーを眺めてみると、色々と面白いことがわかる。

話し相手を探し続けている人、常に多くの人に囲まれている人、ショーを熱心に見ている人、全く無関心でひたすらおしゃべりしている人… 人間関係が瞬間瞬間で組み変わっていくダイナミズムが見えてくる。グループの中での潜在的・顕在的なコンフリクトや権威をめぐる争いも、こんなダイナミズムの中で生じているのだろう。

では自分が先ほど関わっていた、寿司の取分けをめぐるオペレーションやそれをめぐるやり取りは、このバルコニーから見ていたらどう写ったのだろうか。私はどんなリーダーシップを発揮し、なにを見逃していたのだろうか。問題は解決していたのだろうか、新たな問題を生み出していたのだろか。そもそも解くべき問題を正しく設定できていたのだろうか・・・


などなど、2回目の主催グループということで、少し余裕のある楽しみ方をした。第一義的な目的である「スローンの友人に日本を理解し、楽しんでもらう」は達成できた、いいJapan C-functionだったと思う。
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by flauto_sloan | 2008-09-17 23:40 | MITでの学び(MBA)