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Auction
c0131701_0131810.jpg一学期も終わりに近づき、必修が半年しかないMIT Sloan は、クラスで行動するのもあと少しです。
今日はそんなクラスの集まりで、Auction大会がありました。

クラスの皆が様々なもの(物というよりは、なにかをする権利や料理など)を出品し、オークション(Traditional English Auction)にかけます。収益はウガンダの親を失った子供達への義捐金として使われます。また、6クラスが異なる場所で同時開催するため、クラス間の対抗意識も煽られます。
ちょうど経済の授業でオークションの仕組みを習ったので、その授業前にオークションの予行演習をし、クラスはこの日に向けて盛り上がっていきました。


場所はセントラル・スクエアのバーで、クラスの大半が集まる大盛況。
クラスでもムードメーカーとして活躍している Taariq と Michael が司会を務め、45も出品された様々なものを競りにかけ、クラスを煽って値段を吊り上げていきます。


一番多かったのは、サービスを受ける権利でした。タイ料理、寿司、スペイン料理など、各国の出身者による手料理を食べる権利、VIP待遇でクラブに行ける権利、統計のTAとデートする権利、もと女優のクラスメートのプロのメークをされる権利・・・ 女性がみな下着姿という秘密のイベントの入場券もありました。

加えて、授業関連の出品もありました。ファイナンスのMyers教授のアストン・マーチンに1時間乗せてもらう権利(教授が運転。ただし1時間二人きりで密室にいることになる)、経済学や会計の教授とランチをする権利、会計のTAが期末試験前に家庭教師してくれる権利…

さらには、PEや投資銀行出身者による、リッチな権利も。カリフォルニアの別荘で週末を過ごす権利、国内どこへでも行ける航空券、自家用ジェットに乗れる権利…

でも一番高値がついたのは、授業中いつも寝ているドイツ人(そして今回の司会者)のMichael が、来週一週間授業中に寝ないという権利。もし寝たら権利者全員に$100ずつ払う、というものです。22人が$50ずつビッドし、総額$1,100ものハンマー・プライスでした。

会は大盛り上がりで、最終的に昨年の3倍近い$11,000ものお金が集まりました。
ちなみに私は、チームメンバーと一緒に食事を振舞う権利を出品し、落札したのは上記の寝ない権利と、経済の教授とのランチでした。

こんなに仲がいい(そしてノリがいい)うちのクラスも、もうすぐ解散かと思うと寂しいものです…
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by flauto_sloan | 2007-11-29 23:52 | MITでの学び(MBA)
ウォールストリートから監獄へ
今日の昼には、非常に特殊な経歴の持ち主であるPatrick Kuhse氏が”Ethics in Leadership”という題で講演を行いました。

氏はウォール・ストリートなどで活躍し、一代で財を成したビジネスパーソンでありながら、贈賄で有罪を受けて収監された経歴を持っています。国も家族も財産も失った過去と、なぜ倫理を逸脱してしまったのか、そこからの学びを、持ち前のユーモアと前向きさで明るく面白く語っていました。

講演内容に関しては、このリンク先のHBSでの講演とほぼ同じ(リンク先は英語ですが詳細)ですので、興味のある方はご覧ください。


氏の経歴
Patrick Kuhse氏はアリゾナ大学を中退後、ウォール・ストリートで金のために身を粉にして働き、成功しました。その後独立し、有名スポーツ選手を主な顧客とするファイナンシャル・プラニングの事務所を立ち上げ、全米に展開し大成功を収めます。

ある時、親しい知人からオクラホマ州の債権トレーダーの役職を紹介され、それを受けました。しかしその時に、上司へのキックバックを認める代わりに、コミッションの割合を法定限度ぎりぎりまで引き上げる約束を行いました。債権トレーディングは大成功で巨額の富を築くのですが、この上司とのやり取りが当局の察知するところとなり、ある日FBIの捜査を受けます。

危険を感じた氏は、家族を連れて中米へ逃げ数年間転々とした後、家族に懇願されて米国領事館へ出頭し、帰国と共に贈賄の有罪判決を受けて収監されました。

入獄中に離婚し、財産も全て失った彼は、獄中で自らを振り返って過ちに気づきました。出獄後はこの自らの経験とその教訓を、リーダー(および候補)に語ることで倫理を守ることの重要さと難しさを啓蒙しています。


教訓
非常に示唆深く、それでいてユーモアに溢れていて面白かった氏の語る教訓から、印象的だったものをいくつか。
1. 大して重要でなさそうな決断が、実は倫理を逸脱する第一歩になっている。みんながやっている、これくらいは構わない、といった理由付けで「たいしたことはない」と思っていても、その積み重ねは気が付くと大きな不正になりうる
2. 家族など、損得なしに客観的に自分へ助言してくれる人の意見には、真摯に耳を傾ける。
3. 倫理を逸脱することは、自覚している以上にダウンサイドリスクが大きい。ひとたび罪が明らかになれば、罪や責任は一気に自分に集中し、結果として祖国も家族も財産も地位も失う
4. ドアを5回ノックするのが聞こえたら、それはFBIだ


感想
私は個人的に、「天網恢々疎にしてもらさず」と覚悟して身を律しようとしていますが、氏の言うように、「これくらい大したことはない」という行動や決断をしていないか、と言われると自身がありません。常識人であれば、明らかな悪事に加担して一気に悪の道に入ることはないのでしょうが、じりじりと一歩ずつ入り込み、気が付けばもう抜けられない泥沼に入り込んでしまうことは、誰にでもありえることかも知れません。

エンロンなどの一連の不祥事以降、ビジネススクールでも ethical dilemma にどう直面し、どのような行動をとるべきかが一大テーマになっています。この問題は頭で分かっていればいいものではなく、基本的な生き方や考え方をどれだけ意識的能動的に律することができるか、という規範に拠ります。

お天道様の下を歩き続けるためにも、機会があればまた、なぜ損得勘定ができるはずの人が倫理を脱して行ったのかの生々しい話を聞き、学びを倣いたいと思わせるイベントでした。このイベントの勧誘メールの最後の一文が象徴的だったので引用します。

“Management is doing things right; leadership is doing the right things”~ Peter F. Drucker
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by flauto_sloan | 2007-11-28 22:39 | Guest Speakers
ニューヨークとボストンの移動手段
月に2-3回はNYとボストンを行き来しています。
これまでに色々な交通手段を試してみました。興味ある方のために記しておきます。こちらもご参照ください。

主要な交通機関は、飛行機、鉄道、バスの3つです。私は主にグレイハウンド・バス(追記: 現在は専らBoltBus)を利用しており、連休など渋滞のあるときには鉄道を利用しています。
それぞれの長所・短所を挙げてみます。(費用は2007年秋のものです)

1. 飛行機
往復費用: ~$300
所要時間(片道): 1h15m
長所: 早い。快適
短所: 高い。作業できる時間が短い
お勧め用途: 時間をお金で買いたいとき

デルタ航空のシャトル便US Airwaysのシャトル便が1時間に1便ずつ出ています。国内便なので、ボストン出発の30分前、NY出発の45分前までにチェックインすれば大丈夫です(ただし混雑時は手荷物検査に時間がかかるので注意)。また、JetBlueも就航しています。

値段は、Priceline.comExpedia などで、充分事前に予約するともっと安く買えます。

早くて快適ではありますが、空港までの移動も含めるとケンブリッジからマンハッタンまでの door to door で結局3時間くらいはかかります。また出発が遅れることもあり、そうすると時間的な優位性があまりなくなくなってしまう事さえあります。そこはアメリカなので仕方ありません。
1時間余のフライトなのでPCを使った作業はほとんどできず、読書や仮眠がよいでしょう。
値段の高さも考えると、よほど急いでいるか社用でない限りはあまりお勧めいたしません。


2. 鉄道
往復費用: $210- (特急Acela利用時)
所要時間(片道): 3h30m (同上)
長所: やや早い。渋滞と無縁。くつろぐにも作業するにも快適
短所: バスよりも高い。しばしば遅れる
お勧め用途: 連休など混雑が予想されるとき、落ち着いて作業したいとき

Amtrak という鉄道がNY-ボストン間を通っていて、各駅停車だとバスと同じ4時間半、Acelaという特急だと3時間半で着きます。Acelaは値段が張りますが、連休などの混雑時には確実に座れ(ただし座席指定ではない)、渋滞にも巻き込まれないのでバスよりもはるかに早く着きます。
特急では電源もあり、PCを広げてゆっくり作業ができます。ただし時折停電します。
また、出発が30分くらい遅れるのはざらで(特にNY出発のとき)、1時間以上待たされたこともあります。そこは折り込んでおきましょう。


3. バス - Greyhound
往復費用: $30
所要時間(片道): 4h30m
長所: 安い
短所: 狭くて疲れる。作業には向いていない
お勧め用途: 頻繁にNY-ボストン間を往復するとき。深夜に移動したいとき

安いバスといえば、往復$30のチャイナタウンバスが有名です。現在はボストンではチャイナタウン近くの South Station発着、NYはチャイナタウン発着です。ただし車内が比較的汚い、車内が騒がしいことが多い(大声で話す客層が多い)、運転が荒い(そして運転手は運転中ずっと携帯で話し続けている)、何よりトラブルが多い(高速で止まったり、道を間違えたり・・・ かつては爆発事故もあったそうです)ために、特に理由が無い限りは敬遠しています。

c0131701_1895556.jpgそして代わりに、Greyhound bus を利用しています。ボストンはsouth station、ニューヨークはミッドタウンのPort Authority発着です。1時間に1-2本と本数が多く、webで予約(右の画面の緑で囲んだバナーをクリック)すると、なんとチャイナタウンバスと同じ往復$30でチケットを買えます!
値段が同じでサービスと設備がよければ、Greyhoundを利用しない手はありません。

ただし混雑時には2時間前後並ばないといけない(連休でなくとも金曜午後は1時間程度)、電源もスペースもなくPCの作業には向かない、渋滞だと5-6時間かかることもある、といった注意点はあります。
逆に、深夜に利用すると3時間半程度で到着します。うまく利用するととても経済的です。

追記(2008/06/01)
別記事で紹介しましたが、バス路線に最安値$1というBoltBusMegabusの2社が参入しました。特にBoltBusは低価格だけでなく、安全性や快適性(無線LAN完備)でも既存のバスよりも使い勝手がよいバスです。

頻繁に行き来する方には圧倒的にお勧めです。


4. 高級バス - LimoLiner
c0131701_1872577.jpg往復費用: $160-
所要時間(片道): 4h30m
長所: 最高級のサービス。電源・無線LAN完備
短所: 他のバスよりも高い。本数が少ない
お勧め用途: 豊かな旅をしたいとき。ネットに接続して作業しないといけないとき

ボストンのバックベイ、NYのミッドタウンのHilton Hotel 発着のLimoLinerは、1日に3-5便と少ないのですが、圧倒的なサービスを誇ります。
c0131701_1802851.jpg全席指定の革張りの椅子、ゆったりとしたスペース、電源はもちろん無線LANのある環境、飲み物や食べ物のサービス、最新の雑誌…
飛行機のCAのような添乗員が一人ついて、価格以上の快適さです。

私が乗っていたときに、電源があがってしまい、電源もLANも使えなくなったのですが、次回の割引クーポンをくれました。このあたりも、他にはない肌理の細かさです。
毎回使うには高いですが、また乗りたくなるバスです。


以上が主要な公共交通機関です。
うまく状況に合わせて選ぶと、4時間前後の長い移動も有効に利用できます。

それにしても、この2年間で一体どれだけの時間をこの2都市の往復に費やすのだろうか…
有効利用しないと…

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by flauto_sloan | 2007-11-27 16:40 | 旅行
ニューヨーク・フィルの夕べ
土曜に NY Philharmonic Orchestra の演奏会に行ってきました。
L. Bernstein が指揮をしていた頃は、H.v.KarajanのBPO、K.BoehmのVPOと並び、世界最高のオーケストラの一つに数えられていたNYP。
個人的には非常に親しみ深いNYPは、渡米以来すっかり肥えてしまった耳で聴くと、いささか物足りなさを感じました。ただ、その物足りなさは指揮者のL.Maazel のせいだと思いたいです。

映画「五つの金貨」などで有名なコメディ俳優、ダニー・ケイが1981年にNYPと競演した、「ダニー・ケイとニューヨーク・フィルの夕べ」というイベントがあり、NHKで放送されたものの録画とLD(いまや絶滅したメディアですが)を子供の頃に何度も何度も繰り返し観ては大笑いしていました。

クラシックのコンサートを、彼一流のユーモアでコメディに仕立て上げてしまったもので、リムスキー・コルサコフの『熊蜂の飛行』を蝿叩きで指揮したり(そして曲中でその蝿叩きで熊蜂を叩き落そうとする)、とんでもないミスを犯したコンサートマスターを怒鳴りつけ、下手に連れて行ってボコボコにしようとして返り討ちに遭ったり…
いまや絶版らしいのですが、オーケストラ経験者やクラシックファン必見のイベントです。

これをビデオが擦り切れそうなほど観たため、当時のNYPのメンバーの顔をほとんど全員覚えてしまいました。髭のコンマス、美人ファゴット奏者、ほっぺたを膨らませて吹くトロンボーン、異常に上手いフルートのおじさん…

1998年にみなとみらいホールの杮落としで来日したとき、初めて生で聴き(そのときもマゼール)、音の厚み・豊かさに感動すると共に、コンマスやファゴットなど「見慣れた」顔があるのに嬉しくなりました。


それから約10年。本拠地のエイブリー・フィッシャー・ホールで聴いたNYPは……

残念ながら管楽器のスキルが落ち、弦のアンサンブルも粗があり、欧州のオーケストラに比べて見劣りがしてしまいました。
知った顔ももはやほとんどなく、黒々とした髭を蓄えていたコンマスも、いまや髭も髪も真っ白です。

一曲目のロッシーニ「絹の梯子」序曲は無難ですが面白みの無い演奏。

楽しみにしていた二曲目のメンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」が、とても不安定な出来。
1、2楽章はかなりひどく、全然本気が感じられませんでした。従って感動もありません。マゼールは響きのバランスに気を使ったり、ちょっと洒落たルバート(テンポの揺らぎ)をかけたりしましたが、とても中途半端で作為的。巨匠ぶっているものの巨匠になりきれていない感じがしました。
3楽章は軽快に始まり、やっといい演奏だと思っていたら、再現部に入るときにまたも不自然なルバートで台無しに。思わずその瞬間、妻と二人顔を見合わせて首を傾げてしまいました。
4楽章はよかったのですが、活躍するはずのフルートが技術的に不安定で残念。

ただ流石にメインのグラズノフのヴァイオリン協奏曲は、ソリストが非常に乗っていたため、途中から調子を出して上手くまとめました。
全体を通じて、これはよかったと心から思えたのは協奏曲の3楽章くらいでした。

なんなのでしょう、これは。
全米屈指のオーケストラがこれでよいのでしょうか。
思い入れがあるオケだけに、これが実力だとはあまり思いたくありません(何度も聴きに来ている妻によれば、これが現在の実力だそうですが…)。
超一流の指揮者の下でどんなサウンドを出すのかを聴きたい、と思いました。

そして、久しぶりに「ダニー・ケイとニューヨーク・フィルの夕べ」を観たくなりました。
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by flauto_sloan | 2007-11-25 15:58 | 音楽・芸術
Thanksgiving
すっかり日も短くなり、冬をひしひしと感じるこの季節は、Thanksgiving を幕開けとする holiday season でもあります。
木曜から日曜の4連休に、月曜を自主的な休日として加えた5連休。妻のいるNYに行って寛いできました。

c0131701_15395438.jpgThanksgiving は七面鳥を食べることで有名です。でも二人で七面鳥はあまりに大きすぎるので、代わりにチキンを焼きました。
他にも松茸ご飯もどき、シュリンプカクテル、スープ、そしてワインと、いつになく豪華な食事を作り、ささやかに自然の恵みを感謝し祝いました。

NYのthanksgivingでは、百貨店Macy'sのパレードが風物詩となっています。お店はどこも休みなので、目抜き通りを眼一杯に使って、様々なキャラクターの風船がセントラルパークからMacy'sまで行進します。日本からはキティ、ピカチュウなどが取り上げられています。風船は思った以上に大きいそうです。
テレビで全国へ中継され、日本で謂うなれば隅田川の花火大会のようなものでしょうか。
沿道に行って見る為には、コロンバスサークルやMacy's前の観客席を予約するか、当日朝6時頃から場所をとって見るかしかないそうです。残念ながら起きた時点でパレード開始の9時だったので、大人しく家にてテレビで見ました。


c0131701_15421869.jpgそしてthanksgivingの翌日は Black Friday と呼ばれます。
別に株価が下落するわけでもなく、その日を境に百貨店など小売業が一斉にセールを始め、客が押し寄せて赤字が黒転するから名づけられたそうです。しかもなぜか朝が異常に早いのです。朝4時からセール開始、なんて所もあります。
普段は休みの日をのんびりと過ごすアメリカ人も、この日は early bird になるようです。
私達は残念ながら起きた時点でもう early bird ではありませんでした。

Thanksgiving も終わり、街はいよいよクリスマスに向けて賑やかになっています。ロックフェラーセンターのスケートリンクも始まり、クリスマスツリーも設置されました。
金融機関が軒を連ねるミッドタウンでは、様々な趣向がなされています。

大きなオーナメントが転がっている Chase
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ピエロが踊る Fidelity
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くるみ割り人形の UBS (右の像の前にいるのは置物ではなく、おばさんです)
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巨大なリースの Lehman Brothers
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それぞれに個性があり面白いものです。

c0131701_1547284.jpgボストンに帰ると、バスが行き先表示に "Happy Holidays" とのメッセージを出し、街を暖かい気持ちにしていました。

いよいよ冬です。楽しい冬にしたいものです。
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by flauto_sloan | 2007-11-24 15:15 | NYでの生活
Cyberposium
2週ほど前でしたが、Harvard Business Schoolにて、cyberposiumというイベントがあったので、キャリア・フォーラムと行ったり来たりしながら参加してきました。
HBSが主催するこのシンポジウムは、ハイテク、もといcyber業界のリーダーを招き、講演やパネルディスカッションを行いました。目当ては三人のゲストによる keynote speechと、Boston Red Soxのシリング投手も参加した、ゲームについてのパネルディスカッションでした。

朝一番の講演は、発明家兼Futurist (なんと訳せるのでしょうか…) のRay Kurzweil氏。有名な発明家で、子供のときにコンピューターで作曲するプログラムを作り、それをテレビで披露(ちなみに、まだ白黒の頃です)。最近では、活字を読み込み、英語で読み上げるだけではなく、ドイツ語やフランス語など他の言語に翻訳して読み上げる機械を発明しました(実演していましたが、これはすごいです)。

そんな氏の持論は、「世の中はなんでもexponential (級数的)に変化する」です。人口の増加、科学技術の進歩のスピード(ムーアの法則含む)、ネットバブル…なんでも指数関数を当てはめて、時間が経つごとに級数的に物事が発展していくのだ説明していきます。指数関数なので、始めはなかなか成長しないのですが、一度成長をし始めると加速度的に成長します。そして、この傾向が続くから未来はこうなる、と予言をしていきます。

かなりこじつけなデータの取り方もありましたが、一つの見方で世の中をバッサリ切る潔さは見ていて痛快でした。周りにいたらちょっと対処に困るのでしょうが、講演は面白かったです。
最後のメッセージは、「クロマニョン人の頃からのデータを分析すると、人類の寿命は級数的に伸びている。今後20年で寿命は20年以上伸びるので、あなた方はずっと生きていられる」というもので、会場がどっと沸きました。


午後は日本でも話題の「セカンドライフ」を運営しているリンデン・ラボの創立者でCEOのPhilip Rosedale氏の講演でした。当然プレゼンテーションでスクリーンに映し出されるのはセカンドライフ内の空間で、そこにある掲示板に、プレゼン用のデータや資料が貼り付けてあり、聴衆は発表者のアバター(セカンドライフ内での人格)の目を通じて資料を見る、という不思議な状況でした。

内容は、ここまで経済空間として成長したセカンドライフの設計思想についてでした(クリエイターらしく話は発散してばかりでしたが、自分なりに斟酌するとそうだと思います)。リンデン・ラボの基本的なビジネスモデルは不動産屋であり、参加者にセカンドライフ上の土地を売ります。そして貨幣「リンデンダラー」や、修正可能なアバター等々、自由度の大きいインフラを提供します。彼らが直接何かをするのはここまでです。

このような仕組みと、市場(というよりも、市場が発生するためのインフラ)を整備することで、自然発生的に人々がアイディアを出し合い、取引をし、店ができ、市場ができていきました。アバター用のハロウィーンの仮装を売ったある女性は、デザイン能力以外の元手なしに、大金を稼いだそうです。そしてその女性はなんと80過ぎの女性だそうです。このように、初期投資や登記などの面倒なしに、アイディアや才能を持った人々が、その自分の価値を提供するビジネスを行える環境、これは分散化したビジネスモデルであり、新たなアメリカンドリームなのかもしれません(まだまだ規模は現実の経済活動に比べれば非常に小さいですが)。

そしてゲームに関するパネルディスカッション。レッドソックスのカート・シリング投手は実はボストンにあるゲームスタジオへ出資し、役員をやっているそうです。論点はオンラインゲーム・ビジネスの将来性や課題についてでしたが、パネル自体はあまり面白い内容にならず残念です。ただ、シリング投手がビジネスを語るときも、スポーツマンらしくバッサリと枝葉を切って彼の思うところを語るのが面白かったです。

最後はWall Street Journal のハイテク関連のコラムニスト、Walt Mossberg氏です。いつもWSJの紙面で見ている顔がそこにありました。内容はあまり心に残らなかったので割愛します。

全体を通して、やはり発明家やベンチャー創業者といった、cyber世界のダイナミズムを内側から見てきた人の話は、夢があり、かつよく考えられていて面白かったです。特に、世界観を(たとえ曲がりなりにでも)持っている人は信念を持てて行動力と勇気がある、と感じました。さらに、最近読んでいる本でも提唱している、分散化した仕事の一つのモデルを見ることで、将来のビジネスのあり方を考えるいい契機となりました。

もう一つ興味深かったことに、参加者はHBSで開催したにもかかわらず、MIT Sloan生がかなり多かったです。クラスメートや友人も結構いて、「これはTang Auditorium (スローンの講堂) でやった方がよかったんじゃないか」などと話し合いました。さすがMITの面目躍如でしょうか。
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by flauto_sloan | 2007-11-22 19:47 | Guest Speakers
チェックポイント – 会社説明会
先週末に会社の日本オフィスの採用イベントがありました。
日本から来たパートナー(大変お世話になった人で、私の結婚式では乾杯の挨拶をして頂きました)や他のコンサルタントに、ボストン留学中の私とkonpeさん、ボストンオフィス勤務中の同期が加わり、ボストン地域の日本人MBA生を中心とした会社説明会を行いました。

詳細は割愛しますが、参加者からの様々な質問に答えていくうちに、私自身が会社のよさを再認識していくのが面白いです。「ああ、そうだ、こんないい会社なんだよな」と。

一方で、自分が働いて学んだこと、あるいは働いていた組織の洗練されている点などへの考察と、その表現がまだまだ練れていないことも痛感しました。質問者の満足いく答えは当然できていても、同じ質問に対して洞察深い答えを開陳していく先輩を見るにつけ、自分の未熟さや復習の甘さを感じました(ただし頭の悪さではない、と信じておくことにします)。新しい刺激が多すぎて、留学前の復習というテーマが疎かになっていることを確認しました。人は反(かえ)るもの。肝に銘じて努力します。

また、東京から来た同僚に日本オフィスの近況を聞き、お世話になった先輩や、親しかった後輩が辞めていたのを知って驚きました。二年も外にいて帰ったら、きっと浦島太郎だろうなとは覚悟していますが、少し実感しました。
人は替わりながらも、日本オフィスでは組織のグローバル化が一層進み、これまでとはカルチャーが変わりつつあるのでしょうが、よりダイナミックな組織に変わりつつあるようです。これは楽しみです。

久々に、過去と日本と結びつき、自分の変化(差分)を見るいい機会でしたが、結果は目標未達。やはり「見える化」は問題点を見つけ、改善するために必要だと改めて思いました。
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by flauto_sloan | 2007-11-21 15:41 | ボストンでの生活
邯鄲の歩み
昔、邯鄲(趙の都)に上京した青年が、都びとの優雅な歩きに憧れ、
かく歩きたい、と真似をして、ああでもない、こうでもない、としているうちに、
ついに歩き方を忘れてしまい、這って故郷に帰ったと謂います。


初雪が降りました。
いよいよ冬です。


日も短くなり、陰鬱な気分になりやすいこの季節。
歩き方を忘れてしまっても、雪が降るので、家には這ってでも帰らなければ。
という焦燥感。
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by flauto_sloan | 2007-11-19 03:08
ラトル/BPO - Mahler Sym. Nr.10
この美しいものを、音楽と呼ぶのでしょううか。
一人のユダヤ人の天才作曲家が、人生の最後に遺したものが、100年の時を越えて、響きわたる。
人生で三回目に、涙が流れた演奏会でした*


昨日は、日帰りでNYCへ行き、カーネギーホールにてサー・サイモン・ラトル指揮 Berlin Philharmonic Orchestra の演奏会を聴いてきました。
大学院の卒業旅行でベルリンにて同じ組み合わせ(当時はラトル就任直後)で、J.S.バッハのヨハネ受難曲を聴いて以来、二回目のBPOでした。

レヴァイン/BSOによるマーラー失演
ちょうど先週、前日と、J. レヴァイン指揮 Boston Symphony Orchestra でマーラーの交響曲第9番、第1番『巨人』を聴いたばかりで、マーラーが続いていました。レヴァインは第1番でこそ挽回したものの、第9番がとてもとても酷い失敗で、演奏会中ずっと、私はマーラー後期の冗長さと響きの複雑さを苦痛に感じてしまっていました。

そんな苦い経験を引きずりつつ、マーラーの未完の遺作、第10番を聴きに行きました。


カーネギー・ホール
授業の後すぐにボストンを発ち、thanksgiving 週間の始まりによるひどい渋滞を経てNYCへ着くと、妻と待ち合わせをして、軽い食事の後にカーネギー・ホールへ向かいました。
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが建てた、世界屈指のこのコンサート・ホールへ足を踏み入れるのは初めて。
白亜と赤絨毯のコントラストが鮮やかなホールでは、最上段に席しました。
これで残るはムジークフェラインだな、などと思いながら、演奏会の始まりを待っていました。


BPOの実力
一曲目は G. Kurtagという作曲家の現代音楽でした。多様で多彩な楽器(バスフルートワーグナーチューバまで) を使い、様々なオーケストレーションの響きを繰り出す作品でした。

完璧でした。
音程、リズム、メロディー、音色、アンサンブル…
どの要素ひとつ採ってみても、完璧としか言いようがありません。
どの演奏者ひとり聴いてみても、実力が桁違いです。
不協和音も含め、和音を重視した曲だけに、その凄さが伝わりました。

VPO(ウィーン・フィル)と並ぶ世界最高峰のBPO。
その実力をまざまざと見せ付けられました。
音楽の世界では、アメリカといえども埋めがたい差がヨーロッパとの間にはあります。


マーラーの交響曲
そしてマーラーの第10番が始まりました。
静寂から生まれてくる、ビオラの旋律。美しすぎてビオラとは思えません。

形式も調性もほとんどなく展開される響き。
弦楽器が奏でるフレーズは、まるで弦楽四重奏であるかのような、濃密なアンサンブルと和音です。
そしてそれに溶け込み、音色に彩を加えるホルン、木管楽器。響きはオーケストレーションが変わっても連続的で、それでいて多彩。
ラトルの華麗な指揮のもとに、マーラーの肉声さながらに生まれる音楽がありました。

あまりに美しくて、涙が出ました。
ああ、マーラーはこれを伝えたかったのか。

複雑な和声やフレーズによる曇りを、完璧な演奏で払いのけて、初めて伝わるマーラーの音楽でした。
ラトルは就任以降、繰り返しBPOでマーラーを演奏してきました。
確かに、彼の才能とBPOの技量が組み合わさればこそ、感動的なマーラーが生まれるのか、と感嘆するばかり。
レヴァインがBSOで第9番を振って失敗したのも、仕方が無いことなのかもしれません。

80分近い交響曲を短いと感じるほどに、濃密で緊張感のある、そして芸術的な演奏でした。

聴き終わった後、妻と顔を見合わせても、しばらく溜息と
「すごいね……」
という言葉ばかり。

帰りのボストンへの夜行バスでも、ふと第1楽章の豊かな弦の響きが思い起こされました。
まさに芸術でした。

* あとの2回は、i) 1998年の Sir James Galway 来日演奏会。この日、Galwayの音色を生で聴いた私とフルートの相棒は、感涙と共に彼を「神」と呼ぶようになりました。
ii) 2006年のチョン・ミュンフン指揮東京フィルのマーラー第9番演奏会。上記の文と異なり、オケが完璧でなくとも、指揮者の才能と情熱とで音楽を昇華させた名演でした。感動した聴衆の大半が終焉後舞台に駆け寄り、何度もカーテンコールで呼ばれるマエストロに握手を求めるほどでした。

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by flauto_sloan | 2007-11-17 06:12 | 音楽・芸術
HBS訪問
c0131701_16483380.jpg水曜に、Harvard Business School に通う ryuhei さんの案内で、HBSの授業を見学してきました。生徒の間にアグレッシブな緊張感がありながら、みな楽しげであることと、その生徒の意見をorchestrate する教授の卓越した技量に感心し、たった80分でしたが、学ぶものが多い実りある見学でした。いい刺激を受けたので、Sloan の授業での発言も意識的に変えていきたいと思います。


授業での発言が成績の大半を占めるほどケーススタディで有名なHBSでは、どんな議論が生まれているのかと、ずっと興味を持っていました。来年には授業も取ろうと思っています。そこで先日のMBA交流会でryuhei さんに、見学の案内をお願いしたところ快諾してもらえたため、授業のない水曜の午後に訪問しました。

見学したのはTOMという、製造業におけるマネジメントに関する授業で、CISCOERPを導入して成功したケースを題材に、なにがその成功の要因なのかを議論する回でした。教授は有名な上に、教え方に定評がある人気教授だそうです。
私は授業の始めにゲストとして紹介され、少々気恥ずかしいながら拍手で迎え入れられました。

始めに教授が講義形式で「ERPとは何か」を説明してからケースに入りました(これは珍しいことで、普段はすぐにケースに入るそうです)。興味深かったのは、生徒の一人でERP導入に関わった経験のある人が、途中でスライドを使ってERPについてプレゼンテーションを行ったことです。ここまでのparticipationがあるのか、と驚きました。まさに生徒同士で学ぶ環境の最たるものです。


ケースの議論が始まると、話に聞いていたとおり、みな積極的に挙手をして発現していきます。Sloanのケースと比べて、手の挙げ方、発言の構成、生徒間のインタラクション、とそれぞれにケースの議論を深めていく工夫があることに気づきました。

手の挙げ方は、みな個性があり堂々と挙げています。ここぞという時には教授にアピールできるよう、手の上げ方を工夫しているそうです。私が座った列にいた人は "Statue of Liberty award" を受賞したらしく、確かに自由の女神さながらに堂々とまっすぐに手を挙げていました。

発言の構成は、credibility → idea → experience というものが多いように見受けられました。非常に説得力のある発言を持つ構成です。
まずは、議論されている内容に関して、「自分はXX社で○○の仕事をしていたが…」とcredibility を明確に述べることで、周りに聴く気を起こさせると共に、発言内容の正当性を担保します。
次に「私は△△の言っていたことに反対で、・・・だと思う」とidea(主旨)を述べます。今回は少なかったですが、議論が対立するときは旗幟を鮮明にします。
そして「…をした時に、XXという問題が起きた。これは・・・が欠けていたからで・・・」といったような、過去のexperienceを語って、主旨をサポートするとともに、クラスメートに自分の経験や判断を追体験する機会を与えます。

そして生徒間のインタラクションが活発に起こりました。「・・・の意見に加えて、」というようなbuild-on が多く、議論を通じて問題の掘り下げ、あるいは多角化が行われます。Sloanでも散見されるのですが、頻度に差がありました。


そして生徒以上に素晴らしかったのは、やはり教授でした。
Facilitate する、というレベルではなく、クラスを orchestrate していました。つまり、単に手を挙げている人を指していくのではなく、教授が描いている構成に大枠で沿って授業が進むように、生徒の考えや発言を引き出し、最終的に教授が伝えたいメッセージに持っていきます。

そのため、洞察の深い意見や授業内容を膨らませる発言に対しては、教授がsynthesizeしたり質問を聞き返したりして、もう一段深い意味合いを引き出しています。
一方で授業を進めるべきときには、手が挙がっていても容赦なく(?)次のテーマに進みます。
さらに時折cold call (名指し)をして、常に授業に緊張感を持たせます。

これらの結果、教授はさながら、ケースという楽譜をもとに、生徒というオーケストラの各プレーヤーが奏でる個性的な音色をとりまとめ、鮮やかな色彩や強弱のコントラストを引き出す名指揮者の如くでした。


Sloanの授業のように、勉強する内容が明確で、手と頭を動かして身につけていく授業も面白いのですが、HBSのケースも大変に魅力的でした。せっかく同じケンブリッジですし、やはり来年あたりにHBSの授業を是非履修しておきたいと思います。
Ryuhei さん、ありがとう!
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by flauto_sloan | 2007-11-15 23:57 | Harvardでの学び