MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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カテゴリ:学びの技術( 5 )
『知的生産の技術』とブログ
にも書いているが、このブログは、私個人の学びを目的に書いている。学ぶ(修めた学びを蔵し、蔵した学びを息す)にあたって、現時点でこの「ブログ」という媒体が非常に有効だと判ったからだ。

梅棹忠夫氏のロングセラー、『知的生産の技術』(岩波書店)は、知的生産活動に関わる個人が、如何に知識・情報を整理して学びに結び付けるかを、その必要性、目的・意義と共に方法論として展開した名著である。昨年MITメディアラボの石井先生の講演会で、石井先生がこの本を必読の書として挙げていたため、早々に読んで感銘を受けた。

書かれた当時と現在とでは技術の進歩が大きく異なるために、古いと感じられる主張(英文タイプライター時代であるが故の日本語ローマ字表記論など)もあるものの、『京大式カード』として商品化された、インプットをカードにアウトプットするというプロセスおよび整理法は時代を超えて有用だし、むしろ技術の介けを得て利便性が増した。

その新たな形態が、ブログだと考える。

ブログを書く理由・動機は人により様々だ。日記、社会貢献(またはその逆)、転職または採用のツール、情報の整理、商用、等々。私は知的生産のツールとして利用している。換言すれば、ブログの記事一つ一つを梅棹先生の提案した「カード」として取り扱っている


物理的な「カード」より優れた点は、構造化のし易さと分類・検索容易性だ。

トラックバックや記事間のリンクによって、ある時考えたことが後にどう発展したか、異なる経験が結びついてどのような考えを醸成したか、といった知識と見識との間の構造化が簡単にできる。

タグやカテゴリによる分類は、雑多な考えの羅列から、一歩引いた見識を構成する際にとても役に立つ。ただし梅棹論にあるように、始めから整理した分類をするつもりはないので、タグやカテゴリ自体時折見直して括り直している。

また、後から経験や自分の考えを振り返りたいとき、検索をすればすぐにその時の記事が出てくる。

(ブログの記事は「カード」なので、公開したくない、あるいは公開が憚られるカードも多く存在する。そんなものは非公開設定にしている。実は自分の整理のための非公開記事は結構多い)


一方で、やはり紙にかなわないものも多い。読み安さ、簡便さといったものもあるが、何より紙上では二次元で考えの広がりを自由にできる。従って、全ての学びをデジタル化することはなく、紙で残す学びは多い。そんな時、このブログは「カード」として、その紙を参照する時のナビゲーター役をする。

私は絵や図で二次元(或いは三次元)に自由に考えを構造化しつつ書いていき、徐々に深めていくタイプだ。だから何か思いつきたいとき、或いは授業や学問の全体観を理解したいときは、まず紙に色々と書き散らしながら試行錯誤し整理していく。PCではそうはいかない。パワーポイントで似たようなことができるとはいえ、スピード、自由度と細やかさが全然異なる*1,*2

このあたりを、共同作業の効果と効率と絡めて、メディアラボを始めとして世界中の様々な研究者が取り組んでいるのだが、一般人レベルではやはり紙が一番安くて有効だ。


人の知的活動がリアルである以上、リアルとバーチャルの並存は止むを得ない。このブログを現時点で最大限利用しても、紙はいつまでも残る。後でそのまとめシートを参照するときのために、ブログの記事でポイントを書いて残している。


そういった限界を知りつつも、知的活動の手段としてブログは非常に有効で魅力的だ(まあ音楽記事などは殆ど日記に過ぎないが)。自分の学びを遺し深めるという利己的な目的意識が、忙しくもブログを書き続けている動機*3となっている。現在における「知的生産の技術」としてブログを利用することをお勧めする。

(なお、勝間さんの本は未読なのだが、同じような論点なのだろう)


*1 人類は手を使うことで脳を活性化・成長させるという説もあるので、手書きによって考えや理解が深まるのは強ち嘘ではないだろう
*2 ビジネスにおける知的生産活動の一翼たるコンサルティングの職場でも、手書きに拘る人は結構多い。結局その方が早くよいアイディアが生まれるということの一つの証左といえよう
*3 同時に、記事によって非公開にしたり、過去の記事を振り返り改変したりという偏狭な活動の理由でもある

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by flauto_sloan | 2008-07-12 03:15 | 学びの技術
MBA受験 (1/3) - GMAT、TOEFL
MBA受験の方法について、特にどこかで書いたことがなかったので、一つの例として簡単に書いてみます。この拙ブログをお読みの受験生の方のお役に立てれば光栄です。

時間の流れ順に、 GMAT、TOEFL、Essay、推薦状、Application、インタビューと、3回に分けて記していきます。

受験での時間軸としては、
5-6月: GMATのコース受講
6月: GMAT AWAのコース受講
6月-8月: TOEFL受験(3回)
7月: GMAT受験
8月-1月: 毎週1回(以上) エッセイカウンセラーとエッセイ推敲
1月-2月: インタビューセッションを5回受講
といったところです。
予備校はプリンストン・レビュー(現AGOS)に通いました。

GMAT
GMAT、TOEFLと共通ですが、これらのテストは多分に足切りの色合いが強いと信じていましたので、自分の中でバーを定め、そこをクリアした時点で終了して、本題であるエッセイに時間を振り向けることにしていました。結果的に、両テストとも一回目の点数を使うことになりました。

GMAT対策のポイントは、頻出問題に特化することと、手広く問題を解くよりも反復することだと思います。

GMATのように、歴史があり標準化されている試験では、知見ある人に頻出問題を聞いてしまうのが一番の近道です。その点、プリンストン・レビューの授業はお勧めで、過去問に精通した講師がポイントを絞って説明してくれます。授業の最後のころにもらえる虎の巻(頻出ポイントのまとめ)も重宝しました。

実践練習としては、実は過去問を一年分も解いていません。塾で与えられた練習問題と、問題集の練習問題を、コース受講1ヶ月目ころから繰り返し2-3度解き、受験前日に一度でも間違えた問題を全てと、未着手の練習問題を一セット解き、満点は取れなくても合格点は取れる状態で臨みました。結果は自分で課したバーのぎりぎりでしたが、良しとしました。

AWAは主に2パターンしかないので、それぞれをプリンストンの授業で練習し、自分なりのストーリー展開を編み出しておきました。

TOEFL
TOEFLの勉強としては、まず一度練習問題 (過去問または形式・時間共に本番同様のもの) を解いて、時間配分と自分の強み・弱みを確認しました。問題数が多いため、時間配分が極めて重要であり、自分の中で目安(各セクションへかける時間および一つの問題にかけていい時間)を定めました。思考よりも知識を問う問題が中心なので、30秒考えて分からない問題は5分かけても分かりません。

次にリスニングの精度とリーディングのスピードを上げるため、毎日英語を聞くようにしました。iPodでリスニング強化プログラムを繰り返し聞きました。リーディングは仕事で英文に目を通すことは多いので、特に意図はしませんでした。

前日に練習問題を2-3問解き、テストの感覚を掴んで臨みました。一回目でバーを越えたのですが、引き続き2回受けました。ですが点数が上がらないので見切りをつけ、エッセイに集中することに。

(つづく)
MBA受験 (2/3) - Essay
MBA受験 (3/3) - 推薦状、Application、インタビュー
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by flauto_sloan | 2007-10-23 16:58 | 学びの技術
MBA受験 (2/3) - Essay
エッセイ対策の要諦は、「いいエッセイ」のクオリティスタンダードをもつこと、自分に合ったカウンセラーを選ぶこと、そのカウンセラーと繰り返しブレインストーミングをすることと、そして少数でいいのでしっかりとエッセイを査読してくれる人を見つけることです。

「いいエッセイ」のクオリティスタンダード
あるべき姿たる「いいエッセイ」がどのようなものかを理解していないと、何をどう書いていいのかわかりません。あるべき姿なしに書き始めても、ピントがずれたり心に残らないものになってしまいます。
そこで、HBS合格者のエッセイ集を買い、一通り読むことで、どんな内容を、どういう構成で、どう表現するのが「いいエッセイ」なのか、自分なりに気づいた条件・基準を書き出し、折を見ては自分のエッセイがこれらの基準を満たしているかを確認しました。最後はみな「いいエッセイ」だったと思っています。

カウンセラー選び
カウンセラー選びはエッセイのクオリティと、長丁場のMBA受験のやる気に関わるので重要です。私はインターフェースとプリンストンレビューでカウンセラーを選び、自分の価値観との近さ、経験の豊富さ、性格、および費用でプリンストンのカウンセラーを選びました (残念ながらそのカウンセラーは退職して留学してしまったので紹介できません…)。

私は自分の根底の価値観は音楽家のそれだと思っているので、同じ芸術系で演劇のバックグラウンドを持つ方を選びました。価値観が共感できるがゆえに、鋭い指摘やあるいは賞賛があり、毎週土曜に通うのが楽しみでした。毎週土曜の13時の同じスロットを予約し続け、どんなに仕事が忙しくても必ず行くように自分を仕向けました。

ブレインストーミング
エッセイの内容は、仕事7割、課外活動2割、プライベート1割といったところです。基本的にプロジェクトの内容からとり、苦労や困難をどう乗り越えて成功に繋げたか、そこから何を学んだかを書いていきました。重要なのは題材探しとプロジェクトの意味合い出しで、カウンセラーの最大の価値はここにありました。

不思議なことに、本当に苦労したプロジェクトというものは記憶の奥底に沈めてしまっているらしく、エッセイのドラフト段階では題材にあがってきません。そこを、カウンセラーに繰り返し
「こういったリーダーシップをとったことはないの?」
「同じような話ばかりだけれども、本当は全然違う経験もしているんじゃないの?」
「自分にとっての成功プロジェクトを挙げているけれども、自分よりも会社への貢献が大きかったプロジェクトもあるんじゃない?」
等々聞かれ、一緒に過去を掘り出していくと、なかなか面白いものが出てくるものです。結果的に、あまりに辛くて、最初は思い出せなかった過酷なプロジェクトについて一番多くエッセイに書きました。実は一番インパクトの大きい題材だったのです。一人で書いていたらこうはならなかったでしょう。

また、このように途中でいい題材が見つかることも多いので、本命校を最初に持ってくるのは得策ではありません。

題材を見つけたら、なぜその題材をこのエッセイの答えとするのか、その経験を通じて何を考え、何を行い、何を得たのかについて、繰り返しカウンセラーと話し、原稿を練り上げていきました。当時は平日は九州のクライアント先にいて、帰京した金曜の夜に一気にエッセイを書き直していたため、事前に十分な推敲ができず、カウンセリングの時間とカウンセラーの頭を使って推敲する状態でした。そこでカウンセリング中はブレストに集中するため、ボイスレコーダーを持参して自分でメモは殆ど取らずに対話しました。

査読
カウンセラーにまずエッセイを査読してもらうのですが、他にも厳しい意見をつけてくれる人を、少数でいいので持つことが肝要かと思います。私の場合、父が米国の大学で教鞭を執っており、admission側だったことがあるので、最後は父に査読してもらいました。
カウンセラーはストーリーを重視し、父は論理構成を重視していたため、カウンセラーと完成させたはずの原稿ですら真っ赤になって帰ってきました。が、めげずに最後の練り上げを繰り返し、最終的には主旨と論理の明確な、それでいてストーリー性のあるエッセイになりました。
このように、見る視点の異なる査読者を複数持つことで、よりよいエッセイになっていきます。

その他
エッセイ課題は何度も読み直し、「問題の裏にある問い」を把握した上で、エッセイ全体として自分を立体的に見せることが重要です。強みも弱みも、仕事も遊びも、硬さも柔らかさも表現しました。

また、私は家族という、かなりプライベートな題材のエッセイも混ぜましたが、どうしても伝えたい熱意とメッセージがあれば構わないと思います。私は自己を表現する上で欠かすことができないことがあったので、敢えて書きました。結果的には、自己評価も周りの評価も一番高いエッセイとなりました。

MIT Sloanはカバーレターも求めてきますが、基本的に草稿から練り上げるプロセスはエッセイと同じです。ただ様式に関しては決まりがあるので、カウンセラーのいうことに素直に従いました。

(つづく)
MBA受験 (1/3) - GMAT、TOEFL
MBA受験 (3/3) - 推薦状、Application、インタビュー
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by flauto_sloan | 2007-10-23 16:02 | 学びの技術
MBA受験 (3/3) - 推薦状、Application、インタビュー
推薦状
巷間、MIT Sloanはコミュニティ意識が強く、Sloan乃至はMIT卒業生の推薦状が有利と云われています。私は懐疑的で、他校と同じ程度だと思っています。一度こういう噂が立つと、みなMIT卒業生の推薦状を取り付けてくるため、いきおい合格者の多くがそういう推薦状を持った人になったのでしょう。不合格者にもMIT卒業生で揃えた人は多いはずです。
…とは言うものの、私も大事をとってSloanにはMIT卒の推薦者で揃えました。

推薦状を書いてもらったのは、日本人上司、日本人元上司、アメリカ人上司、クライアントです。学校ごとに条件や質問内容が異なるので、それに応じながら私を多面的に表現できるように推薦者を選びました。
言うまでもありませんが、自分のことを仕事面でよくわかっていて、かつサポートしてくれる人を選びましょう。

Application
レジュメ、エッセイ、推薦状を踏まえたうえで、カバーできていない強みや経験を最大限盛り込みました。ちょっとしたリーダー経験も、カウンセラーと相談すればもっともらしいタイトルになります。私的勉強会の幹事も、ワークショップのオーガナイザーに早変わりです。
アメリカン人のアピール力は物凄いものがあります。恥ずかしがったり、謙虚になったりせずに、臆面もなく自己アピールです。嘘をつかない程度に。

インタビュー
各校のインタビューの質問内容はネットで公開されているので、それをもとに自分なりの答えを用意し、繰り返し話す練習をしました。すぐに英語が口をついてでるようにするのが最大のポイントだと思います。

エッセイやレジュメに書いたことは全て1-2分で語れるようにしました。MIT Sloanのインタビューは、エッセイ課題のどれかについて、エッセイに書かなかった事例で語ることが求められます。一通り別の題材を用意しておきました。
英語がすぐに口をついて出てくるよう、家では帰国子女の妻と英語のみで話しました。英語開始二日目に、「なんか英語をしゃべっていると(細かい表現や婉曲表現がなく、ストレートな物言いになるので)可愛くないよね」と、( )の中身を抜かして言ってしまい、妻にえらく怒られました… ともあれ、何らかの英語をしゃべる環境を作り出せると有利です。
さらに、ビデオテープで自画撮りをし、話すときの癖やアイコンタクトなどを確認し修正しました。

これらを行いながら、予備校で模擬インタビューを行い、当日は自信を持って臨みました。面接官と和気藹々に話すつもりでちょうどよかったです。


以上が私のやり方です。
私個人のスキルや経験で最適化した勉強方法なので、誰にでも通用するとは全く思っていませんが、なんらかのヒントになれば幸いです。


MBA受験 (1/3) - GMAT、TOEFL
MBA受験 (2/3) - Essay
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by flauto_sloan | 2007-10-23 15:06 | 学びの技術
英語を聴き話すための秘訣(サマースクールでの学び)
7月中はニューヨークに滞在し、コロンビア大学のサマースクール(American Language Program: English for Professional Purposes)に通っていました。
このサマースクールは、ビジネススクールに進学予定の人を対象に作られており、ビジネスで必要となる英語のスキル、特に「相手の言っていることを理解するスキル」と、「自分の考えを説明するスキル」を向上させることを主眼としていました。
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3週間のプログラムで、世界中から集まった30人弱のメンバー。MBA進学者は半分くらいで(ほとんどは当然ながらコロンビアのビジネススクール)、授業や課外活動、パーティーなどを通じてすっかり仲良くなりました。今でもNYに行くときにはコロンビアMBAの友人に会っています。

この3週間で学んだことは、何よりも「予期して英語を聴き、話す」ことの重要性でした。


予期して英語を聴き、話すこと
講師のJaneが繰り返し言っていたのは、「英語のリスニング力は、次に来る単語、文章、トピックを予期できるかどうかで大きく変わってくる」ということでした。同じダイアログも一度目よりも二度目のほうがよく聴け、未知の内容よりも土地勘のある内容の方がよく聴けます。これは二度目や土地勘のある内容だと、次に話される内容を先回りして予想することができ、その分聴いた内容の理解が早くなるためです。
授業では、スターバックス創業者のシュッツ氏のドキュメンタリーや、映画「エンロン」などを取り扱ったのですが、それらを流す前に必ず予備知識を与えられました。すると確かに聴き取りやすさ、理解のし易さが全く異なり、かなり驚きました。これまでに大学受験やTOEIC、TOEFLなどでは好成績を修めつつも、どうしても実践的な英語には苦労していた私には、なかなかに目から鱗でした。


3つの予備知識層
Janeから教わったことを自分なりに構造化すると、英語を予期するために必要な予備知識には3層あり、表層的なものから
言語層: 単語、表現、言い回し
内容層: 登場人物や取り扱われている出来事
常識層: 内容の理解や評価をする上で前提となっているアメリカ人の常識

があると考えます。

第一の言語層の理解は、大学受験や各種試験でのボキャブラリーが利いて、大きな問題はありませんでした。逆に言えば、テストであればこの層での勝負しかなかったのです。ここを強化するノウハウは自分なりに蓄積していますが、私には新たな学びではなかったので、開陳するのは別の機会にします。

第二の内容層の理解は、所謂「土地勘」の有無に大きく左右されてしまっています。ビジネスに関する内容でも、これまでコンサルティングの仕事で取り扱ったことのある、製造業や自動車業界の話であればかなり詳細に聞き取れますが、例えば経験の少ない金融の話は苦手でした。この層を強化するには、授業による勉強をしたり、ビジネス書を始めとした数多の書物を読んだり、映画を観たり、講演を聴いたりすることで、知識を豊かにしていく必要があります。私にとってMBAの二年間は、この層を豊かにすることが第一義的な目的となるのでしょう。

第三の常識層の理解は、実は極めて重要なのですが、なかなかに築きあげるのが難しいものです。誰しも、アメリカのコメディを見たり、アメリカの映画館で映画を観たりすると、「なぜここで笑いが起こるのか?」と思ったことがあるかと思います。これは笑うための常識や背景を理解していないために起こります。

例えば、授業で取り上げられた2002年ごろの風刺画に、”Accountant”と題したものがありました(スキャナーがないので載せられないのが残念ですが)。胸に”A”と書かれた服を着ている、中世の農婦が、周りの女性に白い目で見られているものです。これは二つの常識が結び付けられていました。

一つは2002年ごろのエンロン・スキャンダルで、アーサー・アンダーセンの会計士(accountant)が会計操作を行い、事実上破産していたエンロンを見かけ上超好業績企業に仕立て上げていたため、会計士に対する社会的評価が極めて悪化し、白い目で見られるようになったもの。もう一つは、中世では不義密通をした女性に対し、胸に”A”の文字を書いた服を着せることで、村八分状態の制裁を加えたという歴史的背景。この風刺画は、これら二つの常識・歴史を理解して初めて意味がわかるものでした。

別の身近な例では、スーパーのレジでデビットカードにより決済しようとしたとき、レジの人に”Cash back?”と聴かれたのですが、これが最初は全く聞き取れませんでした。面白いことに、帰国子女である妻も聞き取れませんでした(スペイン語の訛りがあったとはいえ)。”Cash back”とは、デビットカードで金額を多めに、例えば$15の買い物に対し$40で決済し、差額の$25をレジから現金で受け取るという仕組みのことでした。この仕組みを知らなければ、レジでキャッシュバックの有無を聞かれることを予期できなかったため、全く聞き取ることができませんでした。逆に、今となっては新しいスーパーに行っても、始めに聞かれるのは「スーパーのメンバーカードを持っているか」、または2品くらいなら「袋は要るか」、等々といったように、ある程度予期できるため、戸惑うことも少なくなりました。


このような常識・歴史を豊かにするには、Janeによれば、様々なジャンルの本・雑誌、スポーツ面まで含めた新聞、アメリカを舞台にした映画やドラマを読み、観ていくことが必要だとのことです。当たり前のように思えますが、改めてその重要さを知りました。長い道のりではありますが、私が留学先をアメリカの大学にしたのも「アメリカ人のものの考え方を知る」ためであり、まさにこの第三の常識層を理解するためでした。米国留学の本質的な目標はこの習得・理解にあります。


予期して話すこと
サマースクールと1ヶ月余りの米国生活で、「予期して聴くことでリスニング力が増す」のと同様のことが、話すことにも言えると感じました。初めて話す内容はたどたどしい英語しか出てきませんが、一度英語で表現をしたことがある内容はスムーズに話せます。あるいは、数回使ってみた表現は、スムーズに口をついて出てきます。

これは、英語で話すときの3つのステップ、即ち
i) 話すべき内容を想起する(無意識的にであれ日本語で)
ii) 内容を英語に変換する(ここまでを無意識的にできると「英語で考える」頭になります)
iii) 内容を英語のまま発展させて話す
の3つ目に大きく関わります。

つまり、頭を英語に切り替えて、議論をしたり、発言をしたりしていると、当初考えた内容以上のことを言わなければならなくなります。その時に、言いたいことをどう英語で表現するか、それが無意識レベルで処理されないと、つらつらと話し続けることができなくなり、詰まったり変な表現をしたり(無駄に長い後置修飾など)してしまいます。

このようなiiiステップ目での停滞を脱却して、たとえ流暢でなくとも、自分の意見を議論の中で展開できるようになるには、とにかく硬軟含めた様々な内容を、数多くの表現で話す必要があります。また、学んだ表現や友人が使った表現を自分も積極的に使い、身につける必要があります。

マレーシアに駐在して仕事をしていた時、英語、中国語、タイ語、日本語を完璧に話すアメリカ人上司が*1
「言語を習得するには、まずひたすら話すことだよ。間違いなんて気にしなくていいから、とにかく何でもいいから話し続けることで、どんどん言葉が上手くなる」
と彼なりの語学習得の秘訣を教えてくれました。とにかく話すことで、喋ることができる内容と表現がどんどん蓄積されていくのでしょう。
このマレーシアのプロジェクトでは、始めは英語で非常に苦労しましたが、この上司のアドバイスを受けてとにかくチームメンバーと話したことで、2ヵ月半でアメリカ人やインド人の同僚も感心するほどに英語が上達しました(英語で話す度胸がついたことも大きかったです)。


MBAへの意味合い
予期して聴き、話すように心がけることは、語学習得に限らず、学問の内容習得にも貢献すると思います。所謂「予習」をすることで、授業のリアルタイムでの理解のスピードと深さが増すのだと思います。

かつて高校や大学の頃は、あまり意義を考えることなく予習をしていました(しない課目も多かったですが)。今改めて英語のアナロジー(類推)から予習の意義を考えると、内容を予め学んでおくことで、授業中に教師が説明する内容を予期し、即時に深く理解し、頭に定着させる効率を上げることにあったのだと考えます。当時は「予習してしまったら授業で学ぶものがなくなる」と思うこともありましたが*2、予習をしていた効果は大きかったのだと改めて思います。

そこで、これから始まるMBAの授業では、予習をしていくことで授業中の理解力を増し、復習の効率を上げることで、次の予習や課外活動をするための時間を捻出する、という好循環を生み出していきたいと思います。


これらが、サマースクールから学んだ最も大きなことでした。


さいごに
コロンビアのサマースクールは、このような英語学習に加え、連邦準備銀行(米国の中央銀行)やNASDAQの見学、ヘッドハンティング会社の大御所のレクチャー、コロンビア大学ビジネススクール教授によるケーススタディがあり、NYに位置したコロンビアならではの多彩なカリキュラムで非常に充実し、かつ楽しいものでした。MITの友人が何人か受けていた、ハーバードのサマースクールの話を聞いていると、コロンビアの方が格段に充実しているように感じました(ライティングの比重が少ないという欠点はありますが)。留学前の肩慣らしには非常によいプログラムでした。


*1 日本でクライアントとのミーティングで「このプロジェクトにはお庭番の役割が必要だ」と発言し、日本人一同を驚かせました
*2 授業で学ぶためには学ぶ内容を予め知らなければならない、というパラドクスに陥りそうですが、予習の内容は授業によりますが、授業内容の概略、あるいは基本的な部分のみで十分効果があると考えます(ケースなどでは予習内容が当然異なります)

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by flauto_sloan | 2007-08-17 16:01 | 学びの技術