MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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カテゴリ:MITでの学び(MBA)( 80 )
'08春学期の学びを習う - 総論
もうすぐ夏休みも終わり、新しい学期が始まる。すっかり間が空いてしまったが、忘れる前に先学期の学びを確認しておく。

全般として、学びは多かったがいささか不完全燃焼でもあった。成績も新しいことなので力を入れて学んだものが却って振るわないなど、やや不本意でもあった。無論成績は学びの一指標でしかないし、成績優等でもdistinctionがつかない学校なので、あまり気にする必要はないのだろうが。

失敗: 学びの悪循環化
原因としては、効果的に学ぶための仕組みを作れず、悪循環に陥ったことにある。学びを最大化したいという目的意識の下で、自分の勉強スピード(特に英文を読むスピードと書くスピード)の過大評価、体力・精神力の容量見誤り(これをもう一度やってしまったのは大いに反省)という前提の過ちをしてしまった。

結果、学びが進まない悪循環と、それを加速する状況が起きてしまった。
(1) 授業内容不消化の悪循環: 授業を(聴講課目含め)前半に詰め込みすぎ、予習どころか最低限の資料(ケースなど)の読み込みと宿題だけで精一杯となり、授業の理解が完全でないまま先に進んでいき、更に予習や宿題に時間がかかる

(2) 体力・精神力回復による(1)の加速: 1日は24時間しかないので、(1)の結果睡眠が削られて集中力が低下して(1)を加速。またNYとの移動もあり体力も使い、睡眠不足による精神疲労を睡眠で補ったため、週末はほとんど機能できず、(1)の悪循環を断ち切る機会を失う

(3) 後半は時間的余裕ができたものの、前半とJapan Trekで憔悴した身体と精神はすぐには恢復せず、好循環に建て直しができなかった。また、前半に図書館へ行く習慣が薄れてしまったこと、前半疎かになった課外活動を優先的に立て直したことも影響している
学ぶには最適なペースがあるはずで、授業数でいえば米国の最適授業数は日本の大学よりもはるかに少ない。途中、疲れきった私を心配してくれたShintaroに言われて気付いたが、カリキュラムがきつくて有名なHBSよりも多くの授業を履修していた。また、ハーバードで教えていた父親にも、「それは授業を取りすぎだ」と言われた。それでも学びきれる超人的な人はいるのだろうが、私の個体能力はそこまでなかった。

この反省を活かし、来学期は学びのペースを意識して、無理があったら早めに授業を絞り、時間の使い方に優先順位をつけなければ。そうして予習にもっとしっかりと時間を使い、より問題意識を持って授業に臨まねば。米国での勉強には好循環で進むための仕組みを、自分で設計しなければならないのだ。

学びの内容
そのように反省は多いのだが、個別課目で最低限のものは学び取った。

特に経済学系を中心に、様々な考え方や枠組みと、それらが適用できる前提を多く学ぶことができた。また仕事で多くを経験していたオペレーションでは、改めて理論的にどういう意味があったのかを学べ、仕事で(個人的には)あまり関わってこなかったコーポレート・ファイナンスではなかなかに苦戦しながらも、素晴らしい教授の授業を楽しんだ。

以下に個別の課目について簡単に振り返る。
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by flauto_sloan | 2008-08-09 04:50 | MITでの学び(MBA)
オリンピックのメダル予想
いよいよ北京オリンピックが始まる。スローンの中国人の友人は、授業中に掲げるネームプレートにオリンピックのロゴを貼って盛り上げていた。ただMITの五輪ポスターの妨害事件など、アフリカ外交への非難や急成長への懼れもみられる。

議論と話題に尽きない北京オリンピックではあるが、中国の存在感をこの上なく高めているのは間違いない。残念ながら、アメリカにおける日本の存在感のなさとは大きな差がある。アメリカでは、米中でのメダル獲得数争いに注目が集まっている。

そんなメダル獲得数だが、Dartmouth大学Tuck Business SchoolのAndrew B. Bernerd教授メダル獲得数(総数および金メダル)を予測している。Bernerd教授はシドニー五輪や前回のアテネ五輪の時にも、UC Berkeley Haas School of BusinessのBusse教授と共にメダル数予想をしていて、96%の精度を誇っている(他にもPwCの予想などがある)。

そんなバーナード教授が予測に用いる因子は4つ。
  • 人口: 人口が多いほど天才的な運動能力を持つ選手が生まれ易い
  • 国民一人あたりGDP:豊かな国ほど、選手育成にお金をかけられる
  • 前回の夏季五輪でのメダル獲得数: 選手は耐久財のようなもので、継続的にメダルを獲得すると期待できる
  • 開催国効果:開催国はホームの利で、通常よりも多くのメダルを獲得できる
その結果、今回の期待メダル獲得総数トップ3は、米国105、ロシア92、中国81と予想され、金メダルに限ると中国37、米国36、ロシア25だそうだ。

さて日本はと言うと、アテネ直前の予想時には酷評されていた。フランスやイタリアに比べて人口も多くGDPも大きいにもかかわらず、2国に大きく水をあけられるなど、モデルによる期待値よりも全然メダルが取れていない、と。

だがアテネで日本は予想外(?)の大健闘をし、金メダルラッシュに沸いた。それが経済学的に適正なレベルに漸く辿り着いたのか、まぐれだったのかはわからない。ただモデルの3つ目の因子のために、北京での日本の金メダル予想数はなんと17個で、ロシアに次ぐ4位とされているのだ。

日本には頑張ってほしいのだが、17個も取れるかと言われると実感がない。JOCですら金5個と言っている。ここでもまた、日本は例外値として振舞い続けるのであろうか…


ここで適用されているような、計量経済学はMBA中に学びたいと思っている課目の一つだった。HBSのクレイトン・クリステンセン教授も「MBAで唯一役に立ったと後から思ったのは、計量経済学だった」と言っていた。だが残念ながら、来学期にりごぼんが教える予定だった計量経済学のクラスは閉講になってしまった。最終学期にも開講されなければ、自習しなければ……
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by flauto_sloan | 2008-08-08 22:28 | MITでの学び(MBA)
無用の用たるMBA
MIT Sloanの昨年の受験者数が、前年比28%も増加していたそうだ。他のビジネススクールも似たような状況で、HBSは16%の増加だ。景気と応募者には強い相関があるという。不況による雇用環境の悪化、2年間ビジネスから離れて不況をやり過ごそうという心理、不安定な時代での資格への期待、などが入り混じった結果だろう*1

こうした緊急避難的な役割は一時的なものだろうが、中期的には、MBAの役割が変わってきているのではないか、と思う。

MBAというと上級職業訓練学校的なイメージがある。企業幹部候補を養成すべく、戦略、ファイナンス、マーケティング等の知識と、意思決定を鍛錬するケーススタディ、将来の布石としてのネットワーキングを体得する。そうしてコンサルティングや投資銀行などの華々しい業界へ転職していく… 勿論今でもそういう役割は大きく、この2業界に進んでいく人はSloanで42%と多数派だ。

日本では、MBAが必ずしもプラスの評価を得るとは限らない。こと現場を大事にするだけに、ともすれば「役に立たない知識ばかり勉強する」と揶揄され、「ケーススタディで机上の空論を戦わせる」と冷やかされ、「結局ネットワーキングさえ得られれば、毎日ゴルフ三昧」と蔑まれることもある。

まあその見方が絶対間違っている、とは言わない。何をMBA留学の成果とするのかが、学校と個々人の目的意識に帰着するのは昔も今も変わらない。

その学生や学校の意識と動き方が、時代の流れに合わせて変わってきているように感じる。学生はより公共心を持ち、学校は不確実で変化の激しい未来に適応するための機関になっている。


戦後冷戦下での西側諸国の経済成長、冷戦崩壊後の熱狂とグローバル化・IT化による拡大・前進志向。この頃は、MBAを取ってCEOになるという期待があった。

だが9.11があり、グローバル化に反動が起こり、IT化の功罪が論じられ*2、更にエネルギー問題と気候変動が看過できなくなり、駄目押しのようにサブプライム問題から各国で不況が起き始めている。世界の平衡の揺り戻し期であろう。将来は不確実で不安なものとなり、目の前ですら明るい材料がない。

流石にそんな中で、MBAが薔薇色の将来への片道切符だと考えている人は少ない。この2年間で何が重要か、何が今後も残り、何が消えるのかを見定めている。

学校側も、複合的で変化に対応できる視点を養えるよう、プログラム変更や学部長の変更があちこちで見られるように映る。サステナビリティへの関心の高さ、人生における幸福についての議論など、従来のビジネスの価値観とは異なるテーマが、カリキュラム内外に増えている。

これまで以上に定説や答がなく、アイディアの賞味期限と適用範囲が短く狭い世界になるのだから、自ら解を作り出すための基本方針やスキルを学校は教えようとし、学生は新たな世界へ適応すべく、友人と議論し学問を学ぶ中で研鑽を積んでいる。


その一つの結果が、卒業後の進路で non-profit/government を選ぶ人数の増加にあると思う。MIT Sloanでは2006年卒業生では僅か0.4%しかいなかったが、それ以降1.7%へと増加している。HBSはさらに多く、2002年までは1-2%だったのが、2003年以降は3-4%で推移している*3

全体の人数としてはあくまで少数派だし、もともとnon-profitの人を入学させたのか、在学中に転身したのかはわからない。

だが一つ言えるのは、これら使命感・公共心に燃える人は、周りを熱くしていく。私のチームにも一人いるが、話すといつも刺激を受ける。資本主義のレールに乗るためだけではなく、Yunus氏が卒業式で語ったような、別の価値観で世界を変えるための準備期間としてMBAの2年間を過ごしている。基本ツールとしてのビジネスの考え方を学びつつ、周りの学生の価値観も高め、賛同者を増やしていっている。


Social Entrepreneur (社会起業家) のインキュベーターとしての役割、そして多様な価値観を持ったビジネスリーダーの養成所の役割を強化しようと、徐々にだがビジネススクールは変容しようとしていると感じる。いつか日本でも、MBAが無用の用として認められる日が来ると期待したいし、我々が世界をより良くすべく努力していかねばならない。

私はいずれ非営利へ進むのかどうかはまだわからないし、この夏予定していた途上国での活動も結局、諸事情により諦めてしまった。経験という点では充分に機会を活用していないかもしれないが、お陰で将来について思索する時間に恵まれた。これもまたMBAならではの楽しみであり、人生における無用の用だ。

*1 今年からMBA留学する友人や後輩も、受験にはなかなか苦労していたようだ。今年度は不況が本格化したため、受験倍率はさらに上がることもあろう。
*2 私はグローバル化もIT化も否定しない。ただ過剰適用と過剰反応を心配するのみ
*3 当然給与は月$3,000程度と低く、MBAの学費と2年間の機会損失を「投資」と捉える人には、極めて低いROIだ

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by flauto_sloan | 2008-08-07 23:21 | MITでの学び(MBA)
春学期終了
ファイナンス2の試験が終わり、今学期の授業も全て終了した。カリキュラムの半分がもう終わってしまったことになる。各科目の振り返りは後ほど行うとして、まずは安堵。

前半が非常に大変だったが、後半は打って変わって余裕ができ、課外活動に時間を割くことができた(それでもしばしば眠れない日々があったが)。労働量の平準化が重要なのだな、と改めて感じる一学期だった。

今学期は経済学に重点を置いたので、来学期は経済学に加えてリーダーシップを重点的に採ろうと思っている。残りは戦略的に取っていかねば。

ともあれ、夏休みが始まった。
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by flauto_sloan | 2008-05-20 06:42 | MITでの学び(MBA)
或るMBA生の夏 - Life
MBA生とインターンシップ
多くのMBA生にとって、夏はインターンシップの季節である。インターンは就職活動の一環であるし、これまでと違った業界を知る機会である。MBAで学んだファイナンス、戦略、組織論などを実践する場でもある。

Sloanの日本人学生諸兄も、半分以上はインターンを行う。行き先はPE、投資銀行、コンサルティング等々様々である。これらはMBA生の人気業界でもあり、その一角である弊社もインターンを受け入れている。有意義な夏となることだろう。

では私はこの夏をどうするのか、とよく聞かれる。

色々考えた結果、『アメリカ一周』をすることにした。


アメリカ一周という決断
ではなぜアメリカ一周なのだろうか。悩みに悩んだが、自分が今一番したいことであり、長い人生でも重要だと思えることなので、決断した。

「王道」を嫌う性格と、2年間知識のインプットに注力したい考えとから、そもそもインターンはしないつもりだった*1。華々しく精力的な、MBAらしいブログを期待していた読者には申し訳ないが。

一方でアメリカの学校を選んだ理由は、政治・経済・軍事で世界をリードする超大国アメリカを知りたいからであり、そのために一度この国土を回りたい、という思いがある。地政学的な初期条件が思想や行動に与える影響は大きいという考えを持っているので、ぐるりと回ってその国土の広大さ、農業の効率、人種構成の違い、風土や文化の違い、人々の性格の違いなどを感じ取り、少しでも理解したい。

さらには新婚の妻と3ヶ月水入らずで過ごせるというのは、この上なく貴重な時間だ。普段はボストンとNYと離れているし、これだけ長い期間一緒にいられるのは、今回を逃せばあとは定年までないだろう*2。財布に余裕があるわけではないので、節約倹約の貧乏旅行になるだろうが、楽しみである。

決断に付きまとう不安
ただ実際は、インターンをしないというのは勇気のいる決断だった。成長の機会損失という不安が、周囲のインターンへの期待感で増幅される*3

だが最終的に自分を後押ししたのは、次のメッセージだった。

コカ・コーラのCEOによるスピーチ "Life"
激務だった新入社員の頃に同期から回ってきた、コカコーラのCEO(当時)のスピーチだ。このメッセージを読み直して、自分の中での優先順位を再確認できた。非常に深い一篇であり、とても好きなスピーチだ。
Imagine life as a game in which you are juggling some five balls in the air.
You name them – work, family, health, friends, and sprits and you are keeping all of these in the air.

You will soon understand that work is a rubber ball. If you drop it, it will bounce back. But the other four balls – family, health, friends and sprits are made of glass. If you drop one of these, they will be irrevocably scuffed, marked, nicked, damaged or even shattered. They will never be the same.


You must understand that and strive for balance in your life.

How??

Don’t undermine your worth by comparing yourself with others. It is because we are different that each of us is special.

Don’t set your goals by what other people deem important. Only you know what is best for you.

Don’t take for granted the things that are closet to your heart. Cling to them as you would your life, for without them, life is meaningless.

Don’t let your life slip through your fingers by living in the past or for the future.

By living your life one day at a time, you live All the days of your life.

Don’t give up when you still have something to give. Nothing is really over until the moment you stop trying.

Don’t be afraid to admit that you are less than perfect. It is fragile thread that binds us each together.

Don’t be afraid to encounter risks, it is by taking chances that we learn how to be brave.

Don’t shut love out of your life by saying it’s impossible to find. The quickest way to receive love is to give; the fastest way to lose love is to hold it too tightly; and the best way to keep love is to give it wings.

Don’t run through life so fast that you forget not only where you’ve been but also where you are going.

Don’t forget that a person’s greatest emotional need is to feel appreciated.

Don’t be afraid to learn. Knowledge is weightless, a treasure you can always carry easily.

Don’t use words and time carelessly. Neither can be retrieved.
Life is not a race, but a journey to be savored each step of the way.


Yesterday is History.
Tomorrow is Mystery.
Today is a gift; that is why we call it The Present.


*1 するとしたらNYPなどオーケストラの運営組織かな、とも思ったが、魅力的なポジションがないので諦めた
*2 妻の両親が米国にいた頃に、やはり米国一周をして非常に楽しかった、と語る様子を見て、益々この旅への魅力を感じた
*3 最近習った行動経済学を自分に当てはめてみて、実際の機会損失は実は大きくないのだ、などと分析もしてみたが、あまり意味は無かった

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by flauto_sloan | 2008-04-10 20:55 | MITでの学び(MBA)
地球の将来とビジネス - Prof. Rebecca Henderson
MIT Sloanの看板教授の一人、レベッカ・ヘンダーソン教授が "Preparing your business for change" として、サステイナビリティについて、そして地球規模で需要と供給の変曲点を迎える中での企業の役割の変化について話した。一つ一つのファクトはどこかで見てきたものだが、ストーリーとして力強く語るヘンダーソン教授の熱いメッセージに感銘を受けた。

c0131701_2125753.jpg地球環境の維持可能性
人類はかつてない負荷を地球に与えている。全世界の人口は、有史以来指数関数的に増大し、一人当たり生産額も同じく増大している。この二つを同時に実現できたのは、安価な燃料(=化石燃料)が利用できたからである。結果として二酸化炭素が大量に排出され続け、地球環境に未曾有の負荷を与えてしまっている。

二酸化炭素(及び他の温暖化ガス)が地球温暖化に与える影響は議論が分かれるが、科学的正誤の論争と施策の是非を混同してはいけない。もし科学的な影響が証明されていないと、何もせず手を拱くことは、取り返しのつかない惨事というリスクを伴う危険な賭けをし続けるのと同じだ。賭けが外れてからでは遅い。

エネルギーの変曲点
人口増加が続くならば、エネルギーの需要と供給に大きな抑圧がかかる。戦争・疫病・人口抑制策が無ければ、2050年までに人類は30億人増えるとされるが、すると世界のエネルギー消費量は現在の年間135TWから30TW程度増えると予測される*。これは50%の確率で気温を3℃上昇させ、33%の確率でさらに2℃上昇させる。氷河期と今とが気温で7-8℃しか変わらなかったことと比べても、その影響の大きさが分かろう。需要削減への一層の取り組みが必要である。

また需要が変わらないとしても、この消費の増大を維持することは困難だ。30TWの需要増加を現在のテクノロジーで実現するには、全ての耕地をバイオマス育成に充て、とてつもない数の原子力発電所を建て、等々、非実現的な施策を打ち続けても足りない。技術的なブレークスルーは必要不可欠だが、まずは需要の抑制・削減から取り組まねばならない。


ビジネス機会
ではビジネスに携わる者はこれらの問題をどう捉えるべきか。外部要因でしかないのか、自分自身の課題なのか。自らの課題としない限り、長期的には市場から姿を消すことになる。

むしろ需要や供給の変化をビジネス機会と見て、どうそこから利益を生み出すのかを考えねばならない。最近は企業の中でも、サステイナビリティへの関心が高まり、環境負荷を減らすためのアイディアの提案が活発になされ、一部企業では自発的なタスクフォースが組まれて実行を始めている。

特に有望なのは、廃棄物削減と生産プロセスの改善である。PC一台を作るには、20倍の量の原材料が必要となる。つまり95%はムダになり、このムダの削減や再利用が与える影響は大きい。他にもサプライチェーンをサステイナビリティの観点で最適化することも有用だ。

これらの変革はこれまでの企業の成長とは非連続な取り組みであり、大きな発想の転換が必要である。サステイナビリティへの意識の高まりやモメンタムは企業や社会に生まれているので、目先の忙しさに捉われず、長期的で戦略的な変革を企図しなければならない。そして実行することはさらに困難だが、資金的余裕のある大企業から率先して取り組みを行っていかねばならない。


感想
地球環境問題を論ずるとき、ともすれば余りに明るくない未来に閉塞感を感じ、否定的で暗い考えをしてしまいがちなのだが、「機会」と捉えて積極的に変化を促すヘンダーソン教授の建設的な考え方に非常に感銘を受けた。

もっとも、個別企業が技術革新やエネルギー効率の向上を取り組むことは重要だが、優れた技術を活かし、伸ばすためのインフラが、果たして市場でよいのかがわからない。市場は自動調整機能を持つのだろうが、万能ではないし、発想やインセンティブがこれまでのビジネスとは異なる場合に作用するのだろうか。様々な技術を喰らいながら肥大したマイクロソフトのウィンドウズのように、技術の質と資本との非相関が、必ずしもベストではない技術を祭り上げることになってしまわないか。

するとカタストロフィは回避されない。

かといって国が旗を振って、政策的に環境技術に介入するのも違うだろう。私は今何も答えを持っていないのだが、何か今までと別次元の調整機能が必要な気がしている。局所解の積み上げでは到達し得ない需要、必ずしも金銭的インセンティブだけではもたらされない(効率化された)供給は、メルクリウス(商売の神)ではなくヘパイストス(火と鍛冶の神。鍛冶は即ち技術)の見えざる手が必要なのだろう。


* ヨーロッパ並みの消費量なら45TW、アメリカ並なら102TWも増大するという。暗にアメリカの大量消費社会を批判していた
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by flauto_sloan | 2008-04-08 23:28 | MITでの学び(MBA)
りごぼん語録
マクロ経済学の Roberto Rigobon 教授は、とてつもなく破天荒なベネズエラ人だ。私のクラスは朝8:30からなのだが、最初からハイパーテンション。隣の教室から苦情が出そうなくらいの大声で叫びながら授業をする。
話す内容は過激で、政治的に正しいかどうかなんて構いやしない。そのノリが苦手な人もいるのだろう。第1回目の授業では教室から溢れんばかりだった生徒も、第2回からはちょうど席数通りになった。
(参考: りごぼんが米国経済について語る講演の映像…一般向けなのでいつもより大人しい)

そんなリゴボン教授の、過激だが味のある発言集。実際はあまりに過激な発言のときは、「ジョークだよ」などのフォローが入る。さすがに。

(初回、教室に入る生徒を一人ひとり捕まえて)「君はどこから来た? 日本? よし、じゃあここに座れ。 君は? ブラジル? 素晴らしい! お、もう席がないようだな。そこの座ってる君、確かニューヨークだったよな。この子がそこに座るから、お前はそこの床に座れ!

「権力。権力が必要なんだよ。俺は家ではかみさんに支配され、ここ(スローン)ではディーン(学部長)に支配されちまってる。このままでは自分のバランスが取れないと思ったから、この授業では権力を振りかざす! 座席を俺が決めたのも、その権力を使ったんだ!」

「俺は君らの国について色々揶揄するが、悪く思うな。いいか、俺はベネズエラ人だ。俺がなんと言おうと、君らの国はベネズエラよりはましなんだからな!!

「俺は昔はいい男だった・・・ でも(彼が勤めていた)製薬会社の人体実験でこうなったんだよ。
製薬会社は治験する時に、動物で試して、ベネズエラ人で試して、それから人類で試すんだ!」(是非リンク先を見てみてください)

「この授業でのルールは二つ。
1. 欠席・遅刻・早退は認めない。いかなる理由があろうと、欠席は出席点にマイナスをつける。言い訳をする必要はないし、聴きたくもない。俺はこの授業を最大のプライオリティにしているし、君らにもそうして欲しい。君のプライオリティがことなるなら、それは仕方ないが、これは俺の授業だから、俺のプライオリティが優先される
2.ケースは必ず読み込んでこい。眼を通すだけじゃ駄目だ。何が起きたのか、深く理解して来い。もしケースを読んでいないのなら、授業に出るな。ケースを読んでいないとわかったら、出席点にマイナスをつける。
いいか、俺は嗅覚が鋭い。ケースを読んでいない奴の『恐怖』は確実に嗅ぎ取る。その時に俺が如何にそいつをおもちゃにするのかは、見ものだぞ。」

「ルールはこの二つだから、いわゆる『スローン・プロフェッショナル・スタンダード』は守らなくていい。授業中にPCを開けてメールをチェックしている奴がいたら、それは俺の責任だ。俺が君らを授業に集中させられなかったからだ。
それから、携帯電話に出ても構わない。ただ、君らが携帯に応える時は、俺が代わりに電話に出てやる。俺はクリエイティブな電話応対をするのには自信があるぜ。」

他の初回での発言は、友人の記事とほぼ同じなので、割愛。


1923年のドイツのハイパーインフレのケースにて、
「いいか、過去を分析する時に、『連中が馬鹿だったから、こんなことをしでかした』と言うことは簡単だ。歴史は馬鹿な行為の積み重ねだ。
だが当時は情報も知識も限られていたから、馬鹿なことをしでかしたんだ。大体、歴史の結末を馬鹿さ、無知のせいにしたところで、今後の世界への意味合いは出ない。今後の人類がどれくらい馬鹿なのかは不確定だからな!
逆に、本当に何があったのかを深く考えれば、未来に向けて使える考えが見えてくるんだ。だから、安易に馬鹿さ加減や無知の所為にするな

「1923年にドイツで起きた、政治の混乱、経済の破綻、ハイパーインフレ、軍事的緊張の高まり、これらと全く同じことは他の国でも起きている。
アルゼンチンは15年に1回デフォルト(債務不履行)している。次はもうすぐだ。ブラジルは… コロンビアは… ベネズエラでももうすぐ起きるはず。ケニアでもジンバブエでもハイパーインフレが起きている。
いいか、これらの国は人種も宗教も文化も違う。だが、全く同じ状況が生まれるんだよ。全く同じ。
だからドイツ人だから、ブラジル人だから、ベネズエラ人だから、と人種で馬鹿にしても意味はないんだ!! みんな馬鹿なんだよ!!

「ドイツがフランスにルール地方を侵略された。これは政治的にも経済的にも大きな影響があった。でもそれ以上に重要だったのは、(フランスと共同で侵略した)ベルギーに占領されたことだよ。
ベルギーだぜ!? あり得ないよなあ! あんな小国で、アコーディオン弾きばかりの連中に占領されたとあっちゃあ、ドイツ人のプライドはズタズタだよ!

「今まで聞いた中で一番衝撃的だった発言は、ビル・クリントンが大統領選挙の時に『減税をして、歳出を増やして、赤字を減らす』と言ったことだ。
どうしたらそんなことができるんだ!!と思ったよ。それができれば(モニカ・ルインスキー嬢と)セックスしようと構わない


大恐慌の回にて
「いいか、まだこの当時の中央銀行の役割については議論しない。まずはどんな背景があり、何が起きたのかを把握することが重要だ。だから授業の前半では、銀行なんて存在しないと考えろ。いいな。
おいビル、銀行とは何だ?」
何すか、それ
「素晴らしい!! それが答えだ!!」

「(各国の財政について次々と触れた中で)日本は本当に駄目な国だ。何せ奴らはダンスができないからな! 日本人はまずダンスをベネズエラ人に習え!!

「ブッシュの政策を、大統領就任当時からしっかりと確認すると、世界に民主主義を敷衍し、不況に取り組み、減税をすると言っている。9/11は大きな出来事だったし、戦費は莫大だったが、別に9/11がブッシュの政策を変えたわけではないんだよ

「(就職活動の面接のため、前回の授業で終了30分前に早退した生徒に) 就職活動は上手く行ったのか? 先週君が抜けてから、俺たちは本当に君の事を案じてたんだ。彼女はちゃんと上手くインタビューを乗り切れているだろうか、質問に的確に答えているだろうか、と。そして残り30分間、ずっと君の就職活動にどうフィードバックすればよいのかを議論し続けていたんだよ。

(生徒が手を挙げて) "Excuse me."
(りごぼん) "I'll excuse you!! - Next!!"

c0131701_12371332.jpg(金融政策説明のロールプレイにて)
「いいか、君はIRS(米国内国歳入庁)だ。棍棒をあげるから、あそこの国民から税金を取り立てて来い。迫力が足りない? この仮面(ダースベーダー)をあげよう!!
「君ら国民は、国からお金を受け取る。まてまて、ただではやらん。踊るんだ!! (そしてちゃんとクラスメートは踊った)」

ISLMについての講義にて
「遅刻した奴はコーヒーを買ってくるのがルールだ。だが数には制限を設けるぞ。以前教室に入ってきたら、41杯のコーヒーが教壇を埋め尽くしていたことがあった。しかもうち1杯は鶏がらの出汁だったんだよ!」

「某国で経済政策審議会に招待されたとき、2時間もその国の経済について講演することになった。でもその国の情報を全く仕入れてなかった。その国に関する最近の新聞記事やレポートも読んでおらず、何を話していいかも見当がつかなかった。
が、俺は開口一番言ってやったのさ。
『この国は腐ってる!! (This country sucks!!)』と。
当然みんな怒り出したよ。だから続けて
『じゃあ一体どうして腐ってると言えないんだ!?』と言ったら、参加者が次々と
『確かに財政は…であるが…』
『まあ貿易は…だけれども…』
『そりゃ国営のXX事業は…だが…』
と、まるまる2時間話せるだけの情報を向こうから教えてくれたよ
あ、真似しないようにな!」

人間は父親の経験からは学べない。人類は歴史の教訓を学べないから、悲劇は繰り返される。
たとえ歴史を知っていても、短期目標で行動し意思決定すると、陥穽に入る。
特に、人は権力を持つと、さらに求めて独裁者になりたいという誘惑に駆られる。独裁で成功した例も沢山あるが、一度誤りがあると悲惨だ。
如何に誘惑を退け、歴史から賢く学ぶかが、極めて難しいが重要なんだ」

2週間ぶりのりごぼん担当の授業にて
「また君らに教えなきゃならんが、本当は俺が教えるのが得意なのは、セックスと暴力についてだ。ただ上から暴力はいかんと言われているので、じゃあセックスについて教えようか

(経常収支の説明で)「いいか、例えばモナコ。あの小国は商品の生産は殆どないが、サービスは対外的に提供している。カジノサービス、観光サービス、それに王女のスキャンダルだ!!」

(GDPとGNPの違いについての質問で)「GDPはこの国の中での生産量だが、GNPは場所に拠らず国民が生産した量だ。だから海外で生産したのもの含む。
おいXX、君はテキサス出身だったな。いいか、テキサスはアメリカじゃないから、テキサンが生産した分は米国GNPには参入されないからな!」

(説明中に海外送金の質問をした生徒に)「俺の話の腰を折るな!! (黒板消しを投げつける) ・・・だがいい質問だ」

「うちには可愛らしい犬がいるんだ。俺は犬好きだから犬を飼いたかった。でもかみさんが許さないから、子供を篭絡して、子供から飼いたいと訴えさせたよ。これが政治というやつだ
で、ブリーダーのところへ行って犬を選んだ。メスが欲しいと思ったので、そんな話をした。そしたらブリーダーのおっさんに
『ビッチ(尻軽女)が好きか』と突然言われて、
『え!? いや… もう結婚しているし…』と答えたら、
『でも、ビッチ(雌犬)がいいんだろ?』と。
・・・初めて本来の用法を知ったよ

(通貨切り下げに伴う物価上昇に関する質問にて)「教授、何で輸入品の価格が上がると、自国で生産した商品にも便乗値上げが起きるんですか?」
「君はラテンアメリカに来たことがないのか??」

「エクアドルほど不幸な国はない。およそ思いつく災害が全て起きてるよ。
エル・ニーニョで農作物に多大な被害が出て、仕方なくエル・ニーニョでも育つような作物に変えたら、今度は逆のラ・ニャーニャが起きてまた作物が全滅しちまった。
そこで海老に注力して、世界有数の海老の産地になったと思ったら、プランクトンの大量発生で一晩にして海老が全滅。
そしたら石油が出て喜んだが、そんなのも束の間、一本しかないパイプラインが大地震で破壊されて石油もストップ。政治も不安定。
もし人類が住むべきでなかった土地を挙げるとすれば、エクアドルだ

(ベネズエラの準備金について)
俺は今45歳だ。まあ35歳のような服を着ていて、25歳のような言動をして、15歳の精神年齢を持っているがな!」

「そんな25歳のとき、ベネズエラの中央銀行に行って、準備金がいくらあるのかを確認する仕事があった。準備金といえばドルか金かSDRかだが、当時は金が中心のはずだった。大量の金塊を拝めるとあって、胸が躍ったよ。
中央銀行に行くと、2人の屈強なガードマンに囲まれながら倉庫に行った。そいつらのでかいことと言ったら、8立方メートルはあったね。2m×2m×2mだよ!! でかいったらありゃしない。

そして厳重で最新鋭のセキュリティをくぐって、倉庫の中に入った。意外とがらんどうとしている。金塊が眠るのはもっと奥なんだろうと思ってたら、係員がトランクを指差して、
これが準備金だ
と言ってきた。は? そんな馬鹿な、と思ってトランクを開けてみると、
指輪とか、時計とか、ボタンとか、金製品が何個か入っているだけなんだよ!!
ベネズエラ一国の準備金が、たったこれだけのガラクタかよ!?

普通の国では、中央銀行の回りは最も警備が行き届いていて治安がいいもんだが、当時のベネズエラで中央銀行近くをうろうろしていたら、捕まって金目のものを準備金にされかねなかったよ!!


比較優位性において、テイスト(嗜好)は一つの重要な要素だ。たとえば映画には「優れた映画」と「フランス映画」の二つがあるだろう? (以下フランス語訛りでしばらく講義)

自由貿易では、国や地域の間で比較優位なものが輸出されていく。Dr. Evil (オースティン・パワーズの悪役。禿げてるところがりごぼんそっくり)が世界をいじくって財を再配置するようなもんだ。(以下Dr. Evilのものまね)

(最終回: 日本について)
日本は俺を日銀総裁に迎えるべきだ。俺はベネズエラの中央銀行にいたので、80%のインフレをよく知っている。俺さえいれば、すぐにインフレを起こせるのさ!! 
ボストンを報道陣に囲まれて出発するだろ? 日付変更線を跨いだあたりから全て上手くいく!!


過激で面白いだけでなく、パッションに溢れる素晴らしい教授だった。


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by flauto_sloan | 2008-04-03 21:10 | MITでの学び(MBA)
ゲーム理論 - 策士策に溺れる
細々と続けているこのブログも、訪問者数(アクセス数ではなく)が1万人を突破した。有難いこと限りない。
しかも昨日は過去最高のアクセス数*。にもかかわらず内容が今ひとつだったので、特にマクロ経済に関して少々手を加えた。

さて、今日はゲーム理論の授業の前半が終わった。様々なゲームを実際に行う実践的な授業が面白い。

授業の参加者を見ていると、面白いことに気がつく。
乱暴な分け方をすると、アジア人(アジア系アメリカ人ではなく、国籍がアジア)は相手の裏をかき、策を練るのが好きな人が多い。
一方、アメリカ人は「騙す」ことに意識無意識に反発し、極力合理的に、協調的に行動しようとしているように見える。
ラテン系は少ないのだが、彼らは大胆な行動を取るので読めない。

そんな中でも、中国人のC君はかなりの策士だ。いつも視点が鋭く、ゲームの本質を見抜く力が強い。そして、相手の裏をかいて勝負に勝とうとしてくる。

そんな彼が、正に「策士策に溺れる」を体現したことがあった。「公共財ゲーム」というゲームのときだった。

このゲームは、クラスの全員が「協力する」「協力しない」のどちらかを選び、投票する。協力すると利益が得られるが、協力しない人が一人でもいると利益が減り、出し抜いた非協力者は大きな利益を山分けできる。
ただしその結果を見た上で、全員は自分の利益の一部をコストとして、誰かを名指しで罰することができる(対象者の利益を強制的に減らせる)。

クラスのどれくらいが協力的かを見定めた上で、自分の最適な行動を考えなければならない。このテストだけは最終的な利益を点数換算して、この授業の出席点にすると告知されていたため、皆真剣だった。

そして結果は… クラスでC君ただ一人が「協力しない」を選んだ。彼は大きな利益を得てクラスのトップになったが…
クラスの圧倒的多数にペナルティを課せられ、最終的には最下位になってしまっていた… 出席点の下限を教授が設けていなかったら、マイナスになるところだった。
まさに「策士策に溺れる」瞬間だった。一瞬見せたガッツポーズと、その後頭を抱えた彼の姿が印象的だった。

ちなみに、2クラスあるのだが、私のクラスは協力的で、もう一方はクラスの大半が協力しない(それゆえペナルティも分散)結果だったらしい。

社会がいかに高いレベルの信頼や公共心を維持しなければならないかを学んだと共に、策を弄するのも程ほどにせねば、と思う授業だった。

* 後に判明したのだが、この日の例外的なアクセス数の高さは、両親にこのブログが発見されてしまい、一通り読まれてしまったためだった…
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by flauto_sloan | 2008-03-13 22:40 | MITでの学び(MBA)
日本の日
いよいよ今週で春学期の前半が終わる。木曜は1コマ、金曜はテストと総括があるだけなので、今日でもう春休み気分。そんな前半の締めくくりは、奇しくも日本にスポットライトが当てられる日であった。

マクロ経済
りごぼん最後の授業は、日本についてのケース。バブル崩壊から続く不況が何故一向に回復しないのか、そして現在のアメリカとの類似性は何かを議論した。内容はShintaroのブログに詳しいので譲るが、複雑に消費行動、財政政策への制約、金融政策への制約が絡み合い、負の循環で硬直してしまっている。どれか一つのレバーを動かせば解決するというものではなく、System dynamics の John Sterman 教授と彼とで試作したモデルでは、各パラメータの感度がほとんどなかった程だそうだ。

そんな日本経済が取るべき方向として挙げられたもののうち、特に重要だとしていたものが、独立性を保った中央銀行によるインフレ誘導。消費者物価指数が上向いてきたときに日銀が金利を上げようとした(量的緩和の解除を発表した)ことは、彼にしてみれば失策以外の何物でもない。

それに加えて、財政政策・金融政策を実効的にするための消費者心理への刺激だ。日本が行ってきた減税などの施策が複雑で分かりにくかったため、消費者が意図したとおりの反応をせず、殆ど効果を挙げられずに収支の悪化ばかりを残してきた。もうその轍は踏めない。

丁度日本では日銀総裁人事が紛糾している。そんな折、りごぼんの下す日本への処方箋は

「日本は俺を日銀総裁に迎えるべきだ。俺はベネズエラの中央銀行にいたので、80%のインフレをよく知っている。俺さえいれば、すぐにインフレを起こせるのさ!!」

だそうだ。この教授が日銀総裁。色々な意味で面白いかもしれない。


オペレーション入門
続くオペレーション入門では、トヨタのケース。北米工場で起きたトラブルを題材にして、トヨタ生産方式とその根底にある思想について、北米トヨタからゲストスピーカーを招いて議論した。
内容は面白かったし、大野耐一の言葉として引用された
「トヨタ生産方式はゴルフと同じだ。やり方は5秒で理解できるが、熟練するには一生かかる」
は含蓄があってよい。
トヨタは日本だから成功した、文化的な背景が大きいのではないかと考えたがる生徒からの問いにも、
「文化によって習熟しやすさに違いはあるが、基本思想は普遍的である」
と、青い目をしたトヨタマンがばっさりと斬る。

ただ、どことなく違和感があるのは、自分の知る何人かのトヨタ社員に比べ、なんだか説明が明快すぎることか。暗黙知を形式知化する試みは長らく行われているのだろうし、研究者がこれまでもトヨタの秘訣を探ってきた。
それらをこの講師は説明していったのだが、普段トヨタの人から感じる「素朴なのに芯が異常に強い凄さ」が今ひとつ伝わらなかった。そこは日米の違いなのだろうか。

もうすぐ、Japan Trek にてトヨタを訪問する。そこで本家トヨタの凄さを見るのが楽しみだ。


グローバル・マーケット
最終回は、これまでのまとめと、"corruption"をテーマとした短編ケース集。汚職は古くて新しい問題であり、また最近特に脚光を浴びている問題である。

その中で、かのロッキード事件が取り上げられていた。特にこの事件に絞った議論にはならなかったが、今や世界有数のクリーンな国と評価される日本も、ついこの間までは、海外の企業(それも防衛分野)にとっては汚職無しに参入できない、途上国的側面のあった国だったのだ、少なくとも海外からはそう見られていたのだな、と理解。

汚職と一口に言っても、その国の状況によって善悪のグレー度合いは異なる。その相対化(クラスの中でも様々な立場に分かれた)が面白い。


Japan Trekミーティング
そして、いよいよ約1週間後に迫ったJapan Trekのオーガナイザー会議。いよいよである。
200人のスローン生は、日本を知り、感じてくれるだろうか。好きになってくれるだろうか。或いは、嫌いになるだろうか(それも好きの裏返しだろう)。
かなり不確定要素も大きいが、ここまでくれば腹を括り、あとは楽しもう。


こうして、日本を様々な角度から見た不思議な一日が終わった。
日本が発展途上国から先進国へ仲間入りし、その強さの源泉を振り返り、そして現状の不甲斐無さを見つめる。今必要なのは、メッセージが明確で正しい政府、独立した中央銀行の正しい舵取りと、消費者の自信である。

悲しいかな、今の日銀総裁人事に係る政争を外から見ていると、悪影響こそあれど何一つ理と利がない。こんな状況で消費者が自信など持てようはずもない。

いい意味で正しく民衆を欺瞞に導き、嘘を真にできるリーダーと政策が必要だ。それができれば、ベネズエラ人もありだろう…とすら思えてくる。
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by flauto_sloan | 2008-03-12 12:31 | MITでの学び(MBA)
ファイナンスII - 兵站を確保せよ
今学期のファイナンスIIは、かなり技術的だった先学期(それはそれで面白かったが)と打って変わり、実践的なコーポレートファイナンスを取り扱う。走りながら学ばねばならない仕事と違って、腰を落ち着けて学ぶと、徐々に全体像が見えてくるのはMBAならではの楽しみだ。

CFOとしての役割を意識し、「いかによい財務判断を行うか」「いかによい投資判断を行うか」「いかにキャッシュを尽きさせないか」について学ぶ。特に前半の講義では資本構成のあり方から、持続的な成長についてを重点的に取り扱う。

そのため今は、様々なケースを用いて、必要な資金をどう調達すべきかを学んでいる。負債に頼りすぎて破産したケース、余剰資金で自社株買いをして大成功したケース、等々。成長と資本構成の絶妙なバランスが面白い。

CFOは、兵站を担うのだな、と思う。キャッシュという企業にとって最大のリソースを、いかに最前線の事業に送り込むか。持続可能な成長を越えて独走してしまう事業(時にはCEO)を、どうコントロールするか、あるいは突き進むための資金を捻出するか。地味かもしれないが非常に重要だ。

クラウゼヴィッツ『戦争論』で、戦争の要素として戦略、戦術、兵站を挙げた。戦略を立案するのがCEO、戦術を実行するのがCOO、兵站を確保するのがCFOと、強引になぞらえると、なかなか意義深い。

戦術上の「攻撃の限界点」と戦略上の「勝利の限界点」はファイナンスの「持続可能な成長率」に対応している。それ以上攻めてしまうと、逆に不利になってしまうという均衡点をいかに見出し、そこを維持するか。そして維持するために資金をどう送り続けるか。

戦争において偉大な戦術家が臨界点と兵站能力を見誤り、敗走した例は、ハンニバルナポレオンを挙げるだけでも充分だろう。ファイナンスでは、デルですら急激な成長を追いすぎて、資金枯渇の瀬戸際にあったことがあるという。

方や漢王朝の創立を支えた兵站のスペシャリスト、蕭何は初代の相国(最高位の執務官)になったし、秀吉の天下取りで兵站を支えた長束正家は五奉行になった。古今でいかに兵站が重要と見られているかだ。尤も、地味なために軽視されることも多かったであろうが。

喩え話ばかりになってしまったが、企業の兵站を司るための理論と実践を学ぶことは、成長戦略ほど派手ではないものの、面白い。なかなか難しいが、面白さがわかってきたので楽しんでみよう。
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by flauto_sloan | 2008-03-10 21:45 | MITでの学び(MBA)