MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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100K Final – 熱情、拒絶、機会と忍耐
MIT恒例の100K Business Plan Competition の決勝戦が行われた。昨年から分野別になって参加チームが大幅に増え、今年も大盛況だったらしい。MIT生が参画していることがチームの参加条件だが、他校からも多く参加している。$100,000という賞金の魅力と伝統とで、ボストンの起業家の登竜門となっている。
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今年はキーノート・スピーカーにiRobotのCEOが招かれた。iRobotはMITのロボティック・エンジニアリングを下敷きに生まれたベンチャーで、日本でも販売が開始された自動走行の掃除機ロボット『ルンバ』で成長した企業だ。つい先日も会長がMITで講演しており、いまだに結びつきは強い。

ユーモアたっぷりの講演で、MITのオタクさと起業家の熱意が伝わってくる。彼が強調した4つの重要なことは、波乱万丈の人生経験に裏づけされて説得力があった。
  • Passion: 熱い情熱は前進する原動力だ
  • Rejection: 拒絶されることから学べるものはあり、また拒絶されても諦めてはいけない
  • Opportunity: 機会があったらそれを取りにいかない手はない。何としても取りにいけ
  • Persistence: 成果がすぐに現れなくても、辛抱強くいることは重要だ
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身近で偉大な起業家の言葉に刺激されて、決勝の6チームが3分間のピッチを行う。

優勝したのはTechnology Trackの、コンピューターセキュリティのソフトをリブートなしにアップデートする技術。ピッチは非常に面白かったが、どんな技術なのかが今ひとつ伝わらず、正直言って優勝するとは思わなかった。だが確かに市場性や技術は大きかったのだろう。リブートによるダウンタイムやそれに伴う機会損失は大きい。それがジャッジの評価につながったのだろう。


個人的に素晴らしいと思ったのは、緑内障予防薬を含んだ使い捨てコンタクトレンズだった。患者は現在の治療法だと、6つの点眼薬を一日に何度も注さなければならず、その面倒さから半数が半年で治療を断念してしまう。その結果、全米2番目の失明の原因になっている。MITで生まれたこの技術は、コンタクトレンズにその薬を含ませることで点眼を不要にし、治療の負担を大幅に軽減した。まさに治療プロセスにイノベーションをもたらす製品だ。

プレゼンターはクラスメートのクリスだった。クラスでは地味だった彼が、熱情を持ってプレゼンを行っていた。優勝できなかったのは残念だが、一番素晴らしい内容だったとクリスに伝えると、満足そうな笑みが返ってきた。この拒絶も糧にして、機会を追い続けてほしい。


若江君Lilacさんも書いているが、不況にあって起業熱はむしろ高まっている。仕事がないという学生の危機感、サステナビリティーやエネルギーへの社会的関心と、額はあるが投資先に困っているリスクマネーとが結びついている。友人にも在学中に起業したり、卒業後すぐに起業する人がいる。

私もクリスを始めとする彼らには随分と刺激された。会社を興すだけがアントレプレナーシップではないので、自分なりの起業家精神を育て、社会のニーズを見つめ、パッションとともに自分の原動力にしたい。勇気付けられる決勝戦だった。
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by flauto_Sloan | 2009-05-13 23:29 | MITでの学び(非MBA)
ダライ・ラマのMIT訪問
ダライ・ラマ14世がMITを訪問した。数年前にもMITはダライを招待し、今回が二回目となる。抽選に漏れてしまい、直接拝謁することは叶わなかったが、同時中継をする大教室で、このチベット仏教最高指導者の話を聞いた。中継会場であっても、入場時に全員起立し、最大の敬意を表す。残念なことに、中国系学生はあまり見られなかった。

禅僧のような厳しいお方かと思っていたが、ダライ・ラマはユーモアに溢れ豪放磊落であり、立場が異なる、あるいは敵対する人でさえも包み込むスケールの大きさを持っていた。英語は流暢な訳ではないが、短い一言一言は非常に考えさせられる深さを持つ。

チベット仏教の最高指導者であっても、「私は仏教を広めるつもりはなく、どんな宗教でも尊敬する」と仰ったのには、仏教徒としての共感と、その立場それ自体への尊敬を感じた。また、「チベットが独立して民主化を勝ち取っても、自分は宗教家であり政治化にはならない」とも仰り、人々への信頼と強い愛を感じる。

社会が抱える問題に対しては、「対案がなく改善のしようがなければ忘れてしまいなさい。さもなくば、ひとまず何かやってみなさい」と、前向きで勇気づけるメッセージをお送りになる。

翌日のジレット・スタジアムでの説教では、「私たちは皆同じ。違いなど取るに足らない」と始められたという。人種や派閥に区切られない、高次な世界がダライには見えている。

総じて、宗教指導者というよりも、民主主義と人々への信頼を訴える一人の人間、という姿が強く浮かび上がる。その背後の仏教的世界観や価値観が深いため、そのメッセージが一人の人間のものとしてでなく、より大きな意思として感じられた。

何より、このノーベル平和賞受賞者への非難や中傷を続ける中国共産党に対して、ダライ・ラマは恐れをまるで持たないばかりか、それを超えた敬意というか、共産党を赤子のように温かく見守り、その上で叱責する姿が印象的だった。個人攻撃を受け止めた上で気にせず、共産党の批判のようでいて、瞳の奥底に愛すら感じた。

対立や浅ましい憎しみ合いの彼岸にいるのは、このような方なのか、と感じ入った。

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by flauto_sloan | 2009-05-01 23:49 | MITでの学び(非MBA)
心理音響学 - 音楽の効果
お昼にMIT Brain and Cognitive Sciencesにて、そこの卒業生(現在はNYU所属)の研究者による、心理音響学の講演があった。音楽が人間にどのように作用するのか、科学からは何が言えるのかと思い、前から気になっていた46号館へ向かった。
なぜ人は音楽が好きなのか。この答えはまだ明確にわかっていないが、和音は聴いて心地よく、不協和音は不快だと言われる。この好みは、和音自体の性質によるものと、学習によって生まれてくると考えられる。

和音は不協和音に比べて、共鳴による振動が少なく*この振動が不快感を生み出していると考えられる。被験者に二つの音による和音を聞かせ、好き嫌いを答えさせると、和音ほど好まれ、不協和音ほど嫌がられる。音階は和音による心地よさを最大化し、優れた作曲家は和音の心地よさを最大化させていると考えられている。

細かい振動を嫌うのが本能だという論では、心臓の鼓動と関係があるとされる。また、不協和音を和音として両耳から聞かせると不快でも、一音ずつ左右の耳から聞かせると不快に思わないという結果もあり、振動が感覚に影響する。

だが響きへの感受性は個人差が大きく、この和音に対する好みは、どこまで人間の普遍の本能なのかはまだ研究中だ。異なる文化間での比較研究もなく、西欧音楽特有のものかもわからない。だが幼児でも和音を不況和音より好むという研究結果があり、本能的なものと考えられそうではある。

一方、学習によって好みが生まれたとする考え方もある。音楽経験がある被験者の方が和音に対してより強い好みを示した。おそらく経験によって和音の心地よさを学ぶのだろう。
総じて、「まだよくわからない」段階だと感じたが、どのような音楽が人を心地よくさせ、それがどこまで普遍的かというのは面白い問題だ。音楽療法などとも関わるが、音楽が心理に作用する力がどれくらい大きくなり得るのか(個人差が大きいにせよ)、あるいはただの暇つぶしなのかといった、音楽の本質的な価値がどれくらいなのかがわかると、音楽の使い方は広がっていく。

私個人は音楽の力を信じているのだが、一方で常に批判的でもある。
なにが音楽が持つ本能的な効果で、そのうちどれがクラシック音楽によってより強く得られるものなのか。
なぜ世の中の97%はクラシック音楽を聴かないのか? (この数字を見ると、特殊なのは私のほうだ)
文化や学習はどこまで音楽の嗜好に関わるのか?
音楽は本当に、人間に求められているのだろうか?

信じつつも、このあたりを冷静に考えていないと、ただの盲目的な音楽宣教師になってしまう。現在認知科学で何がどこまでわかっているのかを知るいい機会だった。

ちなみに、その後ちょっとこの建物を見学。なかなか脳を刺激される。
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* たとえばドとレの音を同時に鳴らすと、二つの音がぶつかりあって細かい振動が聞こえる。一方で純正律のピアノで和音を弾くと、このような振動はほとんど感じられない。この振動が不快感の元であるらしい
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by flauto_sloan | 2009-04-15 20:09 | MITでの学び(非MBA)
ボストン日本人研究者交流会での学び
c0131701_555032.jpg今回のボストン日本人研究者交流会は参加者が過去最高で、124人収容の教室が満席になる程だった。
そんな人気のテーマは、ハーバード・ケネディスクールの友人二人による開発支援の話と、ハーバード公衆衛生大学院卒業生と産科医の方による妊婦さんのケアの話だ。

途上国支援を志す熱い人から、お腹の大きな妊婦さんまで、いつも以上に幅広い参加者だった。内容も素晴らしく、開発援助を通じた日本のプレゼンスについて考えさせられる素晴らしい機会だった。

私個人としても非常に意義深い回であった。1年ちょっとこの交流会の幹事を務めてきたが、今回から次期幹事グループに業務のほとんどを引き継いだ。新幹事にとっては初めてのことなので、時折サポートはしたものの、結果的には記録的な大盛況であり、幸先のいいスタートだった。

幹事としての学び
引継ぎにあたって色々とデータを眺め、思うところをまとめたのだが、この非営利団体を1年間引っ張ってきて学んだことは実に多かった。

まず、この1年の最大の成果は、参加人数を昨年に比べて倍増させたことだ。昨年はだいたい60人参加登録して40人が当日参加していたが、今年は60-80人登録してそれ以上が集まった(口コミによる飛び入り参加がいる)。しかも3回は100人越えの大盛況だ。ボストンの日本人研究者が全部で何人なのかはわからないが、ペネトレーションはかなり高いといえよう。

次の成果は、発表したいという熱意を持った方がどんどん自薦してくれるようになったことだ。ボストンの日本人は優秀な方ばかりで、最先端の研究成果を、より多くの人に知ってもらいたいと願っている。これだけ多くの日本人が集まる場は、発表にうってつけの機会だ。発表者選びに苦労していた前年度が嘘のように、長い発表者候補リストから一部しか選べないという、申し訳ない悩みを抱えることになった。

最後は、発表会の後の懇親会(飲み会)への参加率が向上したことだ。全体の参加者が増えて、懇親会への参加率も増えたのだから、毎回飲み会は大賑わいだ。そこではまさに、異業種の交流が生まれていた。

なぜこの成果を達成したかの戦略・戦術は割愛するが、スローンで学んだことが直接的に役に立った。このコミュニティを私の実験の場とさせてもらったのだが、ハイフェッツ教授のリーダーシップ、スターマン教授のシステム・ダイナミクス、シュマランゼー前学部長のインダストリアル・エコノミクス、アンダーソン教授のテクノロジー・セールスでの学びを適用してこその成功だったといえる。

それら個別の学びは大きかったが、一歩下がって、メタレベルでの学びをまとめると、以下のようになる。
  • 事前計画は重要だが、状況の変化に応じて即興的に決断と計画を変えることはもっと重要
  • ステークホルダーとその性質、相互関係を、好奇心をもって理解することが第一歩だ
    • ステークホルダーの集団が受容できる変化のペースを見極めるには、まず何らかの行動をしてみる必要がある
    • 何事、誰に対しても好奇心を失わず、色々と訊ねてみよう
    • グループとしての学習がどれくらいの早さで行われ、どれくらい永続的かによって、介入の仕方は異なる
  • 派手で目立つものだけが改革ではない。地味な変化でも、それが組織のシステム全体を大きく前に動かせる変化であれば、大きな成果につながりうる
    • 派手な変化は、正しく見えてもステークホルダーが拒否する可能性が高く、結果的に意図せざる結果になるリスクを認識していなければならない
    • なにがレバレッジ・ポイントかは試行錯誤の中から見えてくる。そのためにシステム像をより深く精確に理解しようとする努力は惜しまない
    • ただし変化を起こしてから成果が現れるまでに時間のズレがあるため、辛抱強く待ち続けなければならない
  • 自分ひとりの成果はあり得ず、信頼できる仲間を持ち、感謝の気持ちを忘れてはならない
    • 信頼は組織の礎であり、損なわないように最も気をつけねばならない。特に、感謝の念は上辺だけでなく心から持っていなければならない
    • 誰からでも、どんなグループからでも学べるものはあるし、それは自分では気づかないものであることが多い。真摯に話を聞き、耳に痛い意見にこそ耳を傾ける
    • だがリーダーとして決断すべきときは肚を括る。以後は後悔ではなく、気づきと学習を心がける
  • 自分の感情(特に好悪)は、自分が何に囚われていて、何に気づいていない可能性があるのかのバラメーターである。感情を隠す隠さないよりも、自分の感情をどう捉えてどう対処するのかが重要だ

以上は、わかっていてもなかなかできない。だが今回、どうやったら自分の心を自由に遊ばせられるのかがわかった気がする。できない自分、わかっていない自分は受け入れるしかない。自分を問題化して解決しようとし過ぎてはいけない。問題の源泉は組織内外のシステムであることも多いからだ。

むしろ、感謝と好奇心と遊び(即興)という3つの基本的な指針だけは忘れないようにしたい。
そうすれば、知識・見識に加え胆識を養え、四焉における遊に辿り着けるような気がしている。

数多くの素晴らしい人々と出会え、自らの成長の機会を与えてくれた最高のコミュニティだった。残り2回はゆっくりと楽しむことにしよう。
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by flauto_sloan | 2009-04-04 21:03 | MITでの学び(非MBA)
オバマ政権の外交政策
MITの政治学部にて、オバマ政権の外交政策を議論する講演会があった。講師はケネディスクールのNicholas Burns教授で、数々の大使や外交代表を歴任し、ついこの間までブッシュ政権でNATOの大使をしていた教授だ。
今後の外交政策での要諦は、中東と南アジアだという。ちょうど前日にイランが米国と対話する用意があると声明を出したが、イラク情勢にどうけりをつけ、イランとどう接するのかは引き続き重要な課題となる。また、アフガニスタンとパキスタンという南アジアは、オバマ大統領がアフガニスタンでの戦争を継続すると表明しており、今後ますます重要となる地域だ。彼は、「アフガニスタンがオバマにとってのイラクとなりかねない」と警告していた。

また、立場もあるだろうが、「ブッシュ政権はもう少し評価されてもよい」と言っていた。特にアメリカとブラジル・中国との関係は、ブッシュの外交で大きく進展したという。今後このモメンタムを維持していくことが望まれる。

また、ブッシュ政権が金融危機対策でG7をG20にしたことを、新興国の責任感を醸成するとして高く評価していた。中国・インドはその経済規模・影響力に比べて国際的な責任感に欠けている。環境問題やダルフールでの中国の対応がいい例で、大国と途上国の顔を使い分けている。氏は、日本がG7に参加していくうちに先進国としての自覚を高め、国際的責任を果たすようになったことを学びとして、中印やその他の新興国もG20の参加で責任を持つことを期待していた。
もちろん、中国など60年間も安全保障理事会の常任理事国でありながら、国際的な責任を果たしていないのに、G20に巻き込むことが本当に責任を促すのかという疑問はある。4000年の歴史で最も政治に長けた国でもあり、米国の強い影響下にあった日本と同じようにいくのか疑問が残る。だが中国のG20への巻き込みや、WTOなど国際機関・協定への巻き込みは今後先進国全体の課題となるだろう。

それにしても、金融危機と政権交代のおかげで、大物の学者、政治家、官僚が次々と講演を行っているのが素晴らしい。見識高い人々の洞察を聞くまたとない機会に、ボストンにいるのはまさに運がいいと思う。
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by flauto_sloan | 2009-02-11 12:43 | MITでの学び(非MBA)
ジョージ・ソロス講演 - 神は死んだ?
c0131701_5394311.jpgクォンタム・ファンドを率い、「イングランド銀行を潰した男」と呼ばれる伝説的投資家、ジョージ・ソロスがMITにて講演を行った。

物凄い人気で、ハーバードから駆けつけたものの会場に入れず、外で中継を見ることになった。講演の骨子映像はMITのサイトで見られる。
今回の金融危機の原因は、市場への過信にある。自然現象とは異なる人間の活動を介在する以上、そもそも金融市場は予測不可能だ。さらに人々は、市場が間違いを自己修正すると信じきってしまっていた。そのため、成長している間は自己増幅を続けてどんどん成長したが、内在する問題は市場が自動的に解決しているはずだと考えてしまった。だが今回のように反転し始めると、解かれていなかった問題が顕在化し、一気に崩壊に向かって加速してしまう。

今回弾けてしまったスーパーバブルは、25年間かけて信用の自己増幅が行われてきた結果であり、不動産市場の崩壊は起爆剤として働いたに過ぎない。今後さらに悪循環が加速していくだろう。

この悪循環を食い止めるためには、規制が必要だ。規制は不完全だが、市場も不完全なのだから、信用についても資本についても一定の規制が必要だろう。特に資本注入による金融機関の安定化、国際的な協力体制、信用や不動産価格の下落への歯止めが必要となるだろう。
もとが哲学者だけあって、「自分は失敗から学んできた」「市場は常に間違っている」など、含蓄の深い、そしてこのヘッジファンドの巨人だから言える言葉が印象的だった。

私は映像を通じてしか見ていないが、実際に会場に入れた友人は、「さすがに存在感があり、深い洞察に感嘆した」という肯定的なコメントから、「話の内容に斬新な視点や、裏付けるロジックがあまり感じられず、伝説で語られるような凄さは感じなかった」という否定的なものまで幅広かった。だがクレスゲ・ホールを満員にするほどの影響力の大きさは、それ自体が彼の凄さと、人々が何らかの指針を求めたがる賢さがあるのだろう。

グリーンスパン元FRB総裁(ソロスはその低金利政策と信用増幅の放置をかなり批判していた)の神話が崩壊した今、金融界において人々が神託を求める「預言者」にはバフェット、ソロス、ロジャース、クラヴィスなどのヘッジファンドのトップたちが残っている。そんな一人であるソロスが、市場が「全能の神」であるという信仰を自ら打ち壊したのが面白い。いや、彼の言によれば彼は「神の見えざる手」をそもそも信じていなかったようだが。

神は死んだのか。
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by flauto_sloan | 2008-10-28 15:03 | MITでの学び(非MBA)
N.Negroponte "One Laptop Per Child"
もうすぐクリスマス。
夢見る子供たちのために、サンタになってみませんか?



特別授業(と春学期の授業の宣伝)であるSIP(sloan innovation period)の初日である今日は、あるイベントの後に、かねてから話を聞きたいと思っていた、ニコラス・ネグロポンテ教授の "One Laptop Per Child (OLPC)" についての講演に参加した。MITの "Poverty week" の開会基調講演だった。


ネグロポンテの夢
ネグロポンテ教授は、途方もなくスケールが大きい。MITメディア・ラボの共同創立者として、マン・マシン・インターフェースの一大拠点を築き上げる。「おもちゃ箱をひっくり返した」と形容されるメディアラボのコンセプトから設計までを手がけ、天才アーキテクチャーとしての才を遺憾なく発揮している。

今はMITを休職している彼の夢は、貧困をなくすことだ。そのためにン・プロフィット機関の "One Laptop Per Child" を立ち上げ、途上国の子供にラップトップPCを配り始めた。OLPCはあくまで貧困撲滅に向けた教育プロジェクトであり、決してPCありきのプロジェクトではない。PCを手段として途上国の子供たちがより勉強を楽しみ、プログラミングを覚えて貧困から抜け出せるのではないか、そんなアイディアから生まれたプロジェクトだ。

彼の貢献は着実なインパクトを生み出し、世界中の政治・経済のリーダーの尊敬を集めている。先日MITを訪れた、ルワンダ大統領も感謝の意を表していた。多くのビジネスリーダーも賛同し、惜しみない協力を寄せている。

そんな彼の講演は、情熱に溢れた、素晴らしいものだった。


OLPC
誰しも、初めてパソコンを買って、電源を入れたときのわくわくした気持ちを覚えていることだろう。インターネットで世界につながり、写真をすぐにみんなで見られて、音楽も聴ける。

貧しく、物もない村の学校に届けられた、緑色でちょっとおどけた格好のパソコンを手にした子供たちが、どれほど目を輝かせることか、想像してほしい。想像してみたら、この記事の子供たちの写真を見てほしい。


セネガル、パキスタン、コロンビアなど一部地域から始まったOLPCの活動は、今やその規模を世界中に広げている。電気も電話もない村々でも使えるよう、省電力だし電源は手巻きだ。子供が持ち帰ってきたパソコンを見た両親が驚くのが、LCDの明かりであることが多いという。電灯がないため、夜に家で一番明るいのがパソコンなのだ。カメラもWiFiも備え付けているため、家族の写真を撮って遠くの人に送ることもできる。

OLPCは5つの原則がある。子供が実際に自分のものとすること(貸与ではない)、低学年から配布すること(児童労働を避ける)、子供たち全員に行き渡らせること、ネットワークに繋がること、そしてフリー/オープンソースを利用することだ。

OLPCが直面している課題は、コストの増加と競合だという。銅など材料費の増大やドル安のため、$100を目標にしていたPCのコストは、まだ$187だという(ただしもし4年前と同じ原材料費と為替だったら、もう$100を達成していたらしい)。

また競合が登場したことで、原則のひとつである「全員に行き渡らせる」が達成しにくくなっているという(ただし、単なるコピー品の登場は歓迎している*)。非営利でない競合が途上国の高官を口説いて先に入った場合、利益が出る地域にしか廉価PCを売らないため、普及率が高まらないまま終わってしまう。

この金融危機も逆風だろう。そんなOLPCをよく知りつつ支援する方法がある。


11月17日から、Amazonで"Give one, Get one"キャンペーンが行われる。$199を払うと、一台があなたの手許に届き、もう一台が世界のどこかの子供たちの許に届けられる、という夢のあるキャンペーンだ。

技術が子供に与える夢がある。
あなたもサンタになってみませんか。

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* 面白かったのは、ネグロポンテにも大きな誤算があったという。コピーやアイディアの盗用が予想以上に早く表れたことだ。
「あんなに早くコピー製品が表れるとは、全く誤算でした。おかげで想定した以上にPCが普及してしまっています(笑) だからこれからは新機能など、計画の早いうちからどんどん発表して、いち早くコピー製品が現れるようにしようとおもいます。
また、コピー製品の開発を加速するために、パートナーとは『秘密開示契約』を結ぶことにしました(笑)」と、器量の大きいユーモアを語っていた

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by flauto_sloan | 2008-10-20 18:27 | MITでの学び(非MBA)
2008年度ノーベル賞
イグ・ノーベル賞で日本人が連続受賞したが、本家ノーベル賞では、日本人3人が物理学賞、1人が化学賞受賞という喜ばしい結果となった(国籍論議はおいておく)。

物理学賞の詳しい内容はLilacさんが触れている。化学賞は、個人的にナノチューブの飯島NEC主任研究員にとって欲しかったが、まずは日本人が取れたことが素晴らしい。

日本人の受賞者増大を、希望と見るか日本の下降局面と見るか、国内教育の成果と見るか海外で活躍する日本人の優秀さと見るか(ここは後者だろう)、議論が分かれるところだ。京大のiPS細胞など、日本にも素晴らしい研究と優秀な研究者は多い。

あとは優秀な研究に資金が回る仕組み(社会主義的に割り当てるのではなく、市場原理を用いたもの)が必要だろう。官主導、事前主義では革新的研究は生まれない。先日の柳澤教授の講演を思い起こす。


ふと経済学賞に目をやると、ポール・クルーグマン教授がついに受賞した。この人もずっと取るだろうといわれ続けていた。クルーグマンはずっとMITだったのだが、今はプリンストンにいる。MIT時代の1998年、日本を分析して「日本は流動性の罠に陥っている。インフレを引き起こす金融政策が必要だ」と提言した。今でもMITのサイトに"Saving Japan"と題してその論文が残っている(MITのAlumniの山形浩生氏が翻訳して下さっている)。りごぼんが日本についての講義で唱えたインフレターゲット論も、クルーグマンから続く流れなのだろう。

MITにいる日本人として、今回は目出度さ溢れるノーベル賞だった。
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by flauto_sloan | 2008-10-10 12:02 | MITでの学び(非MBA)
大虐殺を越えて - ルワンダ・カガメ大統領
c0131701_813981.jpg昨日(ボーゲル先生の講演C-functionの間)、ルワンダのカガメ大統領の講演会へ行ってきた。MITのCompton Lecture Seriesにて招聘されたもので、こちらでその様子を映像で見ることができる。

ルワンダ内戦にてツチ族とフツ族が争い、100万人のツチ族が虐殺されたと言われる。内戦平定後、ルワンダで初めて民主的に選ばれたのがこのカガメ大統領だ。

大統領は落ち着いた、語りかけるような口調で、アフリカの成長におけるテクノロジーの貢献と今後の課題を述べた。軍人であるにも関わらず、親しみや優しさを感じる人物だった。様々な評価はありながら95%の得票率で再選したのは、紛争に疲れた国民がこの人物に信頼を寄せているからかもしれない。
アフリカはもはや暴力と貧困だけの大陸ではなく、機会に満ちた大陸である。今や金融、エネルギー、テクノロジーなどの産業が、自国の企業を育てながら成長している。ルワンダは虐殺から14年を経て、ようやく平和を取り戻し、民主主義や前進を考えることができるようになった。今や中国、インド、中東湾岸諸国から直接投資が盛んに行われ、経済は年7%で成長している。

その成長においてテクノロジーが果たしている役割は大きい。MITのネグロポンテ教授が推進する"One Laptop Per Child"や、携帯電話の普及は教育の向上や地元経済を成長させる原動力となっている。特に携帯電話は普及率で固定電話を抜き、アフリカの携帯電話史上は世界一の成長性を持っている。国を跨いだ携帯電話会社が誕生しており、普及を促進させている。その結果、インターネットの普及は世界の3倍の速さで進んでおり、その利用によって産業の効率化と成長に大きく寄与している。多くのマイクロ・エンタープライズが携帯電話を活用して誕生している。

今後必要なのは科学技術の教育である。ルワンダ自らがイノベーションを起こし、資源を活用して富を築いていくためには、質の高い教育が必要である。アメリカの教育システムから学ぶものは多く、またアメリカの教育機関に期待するものも多い。

今後まだまだルワンダとアフリカが直面する課題は多い。それを乗り越え、その先の繁栄を実現するためにも、MITとの関係を今後も深めていきたい。

(中国などの進出をどう考えるか、という問に対して)
たしかに中国はアフリカの資源を狙って、アフリカでの支配力を強めようとしていると言われている。だが彼らはアフリカを初めて台頭に扱ってくれている国々であり、欧米の反発はアフリカの重要性が増したことを物語っている。だから中国が悪いとは思っていない。

中国の進出が問題になっているが、そもそもアフリカはこれまで様々な欧米の列強に支配されてきた。中国は国際的に人権問題などを批判されているため、アフリカ進出に対しても穿った見られ方をしているのだろう。アフリカにしてみれば、中国やインドは自分たちをパートナーとして対等に扱ってくれている。これは初めてのことで、哀れみの対象としか見ようとしなかった欧米からは受けなかった扱いだ。

また、アフリカをめぐって欧米と新興国が衝突していると言うのは、アフリカの重要度が以前にも増して認識されているということを意味している。単なる資源の産出地ではなく、投資や成長の機会の地として看做されていることを示しているのだ。

中国などがやってきて、こちらが何もしないで眠っていれば、身ぐるみ剥がされるだろう。だが起きて目を見開いていれば、そんなことは起きない。我々はただ、彼らを歓迎するだけだ。
この地で肌身に感じるものの一つに、アフリカへの注目と期待の高まりがある。以前マクロ経済の授業でも感じたが、アフリカ出身の人々は苦しい過去や直面している課題を理解した上で、自分の大陸に対する誇りと期待を強く持っている。

以前アフリカの夜という集まりでも、今後のアフリカの課題と機会について議論した。自分がどこまで関われるのか分からないが、大きな時代の潮流の一つであり、考えさせられるものが大きい。
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by flauto_sloan | 2008-09-18 22:49 | MITでの学び(非MBA)
100K Business Plan Contest
MIT全学を挙げての一大イベント、100K Business Plan Contest が行われた。起業家の使命に社会的責任が求められるようになっていると感じる結果だった。

MITでは、学内で生まれる様々な新技術を用いての起業が盛んである。音響機器メーカーのBOSEはボーズ教授が自分の音響理論を実践するスピーカーを作るために設立された。当然教授だけでなく学生にも自分の技術やアイディアで起業しようと言うエネルギーを持った人に溢れていて、そんな彼らが活躍するのが、この100K である。

このコンテストではその名の通り、学生チームが新たなビジネスプランを生み出し、その新規性や事業性を競い合い、優勝チームには$100,000が与えられる。数年前まで10Kだったのだが、最近賞金が10倍になった。また、今年からバイオ、モバイル、航空など部門別に選抜が行われるようになり、より専門的なエッジの効いたアイディアへと磨かれるようになった。

スローンのMBA生は、エンジニアリングPh.D生のアイディアを上手くビジネスプランに落とし込み、短時間で魅力的にプレゼンテーションすることで貢献することが多い。ファイナリストにはクラスメートで元同僚のIB君がいて、携帯を使った室内位置補足システムを熱く紹介していた。日本人ではShintaroが参加してセミファイナリストとなり、実際にVCや弁護士にビジネスプランを叩かれ磨かれ、多くを学んだらしい。

優勝したのは、発展途上国の貧困地域での公衆衛生向上に貢献する新商品だった。物資も施設もなく、健康状況がわからない多くの子供を簡便に診断するためのキットで、プレゼンテーションを見ていて非常に感銘を受けた。そしてやはり優勝していた。

ただこれが他のアイディアよりもビジネスとして大きな規模になるかというとそこは疑問である。企業の社会責任を考えることが昨今非常に重要になり、HBSポーター教授の一大テーマでもあるが、起業家にもいかに金儲けするかではなく、いかに社会的使命を果たすかが求められてきているのだろう。

実際、ファイナリストに残ったアイディアの大半は、単なる消費者の不便さを解消するだけではなく、なにか社会的な課題(戦時における負傷兵の帰還支援、代替エネルギーの効率化など)に寄与している。非常に見ごたえのあるプレゼンテーションだった。
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by flauto_sloan | 2008-05-14 23:13 | MITでの学び(非MBA)