MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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システム・ダイナミクス
今学期は履修している授業の数が少ないのだが、どれも「濃い」授業ばかりだ。その中でも、MIT Sloanの看板授業であるJ.Sterman教授の "System Dynamics"は非常に面白い。所謂「システム思考」を身につけることが目的で、前半にシステム思考の基本的な要素とモデルの組み方を学び、後半でそれを現実世界へ応用する。

システム・ダイナミクス
システム・ダイナミクスとは、世の中のある現象の背後にある構造や関係を類推する手法だ。構造化ができれば、将来予測や持続的な成長のための要件、さらには危機の回避へと導きうる。

考え方としては、まずフィードバックを見つける。ある現象が存在する系(システム)の領域を定め、その現象を説明しうる外的要因と内的要因(定量的なもの)とを区別しながら挙げていく。それらの要因の間に介在する因果関係を仮説として立て、因果関係の連鎖が閉じたところでそれを一つのフィードバック・ループとして着目する。

フィードバック・ループを一周すると因子がより増幅するもの(元本増→利息増→さらに元本増)を "reinforcing loop"、減殺されるものを "balancing loop" と名づける。前者は好循環または悪循環を生み、因子が級数的に変化していく。後者はブレーキの役割を果たす。

また、資本や顧客数などストックとして捉える量、因果関係に伴う遅れも重要な役割を果たす。こうした考え方を駆使して、ループでぐるぐるした構造をモデル化すると、ストック量の上京、各ループの強弱、遅れの間のバランスによって、結果が様々なパターンに分かれる。携帯電話市場のように急に立ち上がりやがて飽和するもの、今の市場のように級数的に拡大したものが逆転して、級数的に縮小するもの、半導体市場のように振動するもの… システム・ダイナミクスはそれらを上手く説明する。

システム・ダイナミクスの影響
MITのForrester教授が創始したシステム・ダイナミクスは、機械工学やソフトウェアなどの制御理論、アーギリスの "double-loop learning" といった分野に発展していく。ビジネスの世界では、ピーター・センゲ教授"The Fifth Discipline (邦題: 最強組織の法則)" にてシステム思考を紹介し、世界的ベストセラーとなった。

今ではSterman教授が第一人者として、システム思考およびそれを用いた定量モデルによって企業に対しコンサルティングをしている。


教科書 "Business Dynamics"
システム思考自体は、隣の学科が「化学システム工学科」だったこともあってもともとなじみが深く、すんなりと受け入れられた。教科書もすっと読み流せるだろう… と思ったらそうはいかない。難しいというのではなく、面白いのだ。

Sterman教授の豊富なコンサルティング経験に基づいて書かれているため、システム・ダイナミクスそのものを学ぶのよりも、コンサルティング虎の巻として読めてしまう。自分の経験から照らしても、「まさにその通り!!」と何度思ったことか。いくつか紹介する
「問題を解決しようとする人が、さらに事態を悪化させる」
「自分の信念に合致するデータばかりを探してしまうことで、本当は学びを得られるはずの例外(アノマリー)を生み出したり気がついたりできなくなってしまう」
「行動や決断を取り消せない現実世界では、業績を維持する必要性が、新しい戦略から学ぶ必要性を上回り、戦略を潰してしまう。たとえ将来の危機を防ぎ、素晴らしい洞察が得られようとも、目先の業績悪化を恐れてしまう」
「(クライアントの組織が)学ぶためには、(プロジェクトの)参加者はただのシミュレーションゲームのプレーヤーとしてではなく、モデラーとして実際にモデルを作らなければならない。特に、意志決定者がモデルの作成に積極的に関わったときに、学習の効果は最大化する」
このシステム思考が身に付いて来て、さらにHeifetz教授のリーダーシップの考え方が身に付いて来ると、人の考えや動き、さらには世の中の動きが深く理解できるようになってきていると感じる(これはkonpeさんに予言されていた)。その上で、人を技術的に説得するための交渉術を学んでいる。

不思議と、今学期の授業がどんどん結びついてきているのが面白い。
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by flauto_sloan | 2008-10-07 23:17 | MITでの学び(MBA)
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