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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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Power & Negotiation - 戦わずして勝つのが上策
今学期とっている授業に、"Power & Negotiation"というものがある。その名の通り交渉術の授業なのだが、単純な技巧を教えるのではなく、交渉の背後にある力学を教えるのが面白い。

教授はイタリア人で、ILOにて様々な労働争議に関わってきた交渉の達人。

交渉は当事者による共同の問題解決だと位置づける。論点を分解して、それぞれの論点ごとに、当事者間の利害が一致しているのか、反目しているのか、一方が勝つと一方が負けるのかを見定める。その上で、合意形成に向けた創造的な問題解決をしていく。

交渉の成否は、その交渉がおかれている構造によってほぼ定まっており、個々人の交渉能力の優劣は、その構造により与えられた合意可能範囲の中でしか発揮されない。これが前提である。

実際、利害・関心が上手く設計された交渉のロールプレイ・ケースを行うと、交渉結果は個人の能力に拠らず、一定の範囲に収まる。

だが実際の交渉においては、そもそも論点がどれだけあり、その論点について当事者(二人とは限らない)がどのような関心・利害を持っているのかを知るのは難しい。

そこでこの授業では、交渉がおかれた構造を見抜き、当事者間に構造的に与えられたパワーバランスを察知し、その上で自分にとって最適な落としどころにまで交渉で持っていくことを学ぶ。だからパワー&ネゴシエーションという名がついている。

もしも相手が論点や構造に気がついていなければ、自分に有利なようにフレーミングもできるだろう。構造での優劣は挽回しにくい。そこへ持っていければ、「戦わずして勝つ」のと同じだ。その上で、双方が交渉を通じて価値を創造し、関係を深められるようにための技術を発揮すればよい。


私は関東出身であり、値切りを含めてあまり交渉ごとの経験がない。だが例えばラテン系など、交渉できないものがないと思っている人もいる*。日本の文化・商慣習における交渉は、アメリカの交渉とは違う要素があるのはわかっている。

だが人間の行動は置かれている構造によって決定されると信じているので、どんな構造が理論的に存在するのかを知っておきたいし、そもそも交渉の技術自体を磨きたい。そんな思いから履修した。


この3連休は、4つの交渉を立て続けに行うのが課題だった。高級車を売ったり、借家をしたり、保険を買ったり、経営するホテルを合併させたり・・・
ある交渉は対面で、ある交渉はスカイプで。
 
色々なケースで、当事者になりきって、如何に有利な条件へ持っていくかの駆け引きが面白い。今回の課題は結果を数値化できるので、どれだけ交渉を上手く運べたのかを授業にて知るのが楽しみだ。


* 以前、最初の授業の課題として「今から1時間外に出てきて、何でもいいから値切ってくること」というのがあったらしい。「そんな難しいことを!」と躊躇する学生がいた一方、「それのどこが課題なんですか」といぶかしむ学生もいたという
by flauto_sloan | 2008-09-23 12:55 | MITでの学び(MBA)
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