MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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'08春学期の学びを習う - マクロ経済学
マクロ経済学(Applied Macro Economics)では、強烈な個性のりごぼん教授のおかげで、授業そのものを楽しみながら主要な考え方を学んだ。数式を殆ど使わず、概念や意味合いを考えるのが中心だったので、マクロ経済そのものというよりも、時勢を読むために不可欠な一般教養であった。

授業内容
応用マクロ経済学という授業名にあるとおり、マクロ経済の基本的な考え方の中から、ビジネス環境の理解をするのに有用な理論を取り上げ、その理論で説明できるケースを用いて学んでいった。
具体的には、インフレと不況のメカニズム、デフレ、ISLM、ソローの成長モデル、為替、国際金融、経済政策(輸入代替、自由貿易、ワシントン合意など)を一通り学んだ。日本は最終回にデフレスパイラルの例として取り上げられた。

MITにおけるマクロ経済学
MITのマクロ経済といえば、授業で取り上げられただけでも、成長モデルでノーベル賞を受賞したソロー、シンガポールの成長をただの資本蓄積だと喝破したクルーグマン(現在はプリンストン大)がいる。教科書に指定されたマンキューもMIT出身だし、何よりサミュエルソンがいた。世界有数の研究機関であるのは異論を持たない。

教授
教授は二人で、メインはベネズエラ出身のロベルト・リゴボン教授。『りごぼん語録』でそんなりごぼんのクレイジーっぷりを少し紹介したが、本当に破天荒な教授だった。だが破天荒なだけではなく、学術的な業績も高く、また子供の貧困撲滅に向けた取り組み、母国ベネズエラのチャベス政権への強い憤りなど、パッションに溢れた素晴らしい教授だ。
ちなみに、今年度の "The creepiest professor" に選ばれている。

もう一人はケニヤ出身のTavneet Suri教授。まだ教職経験は浅いが、出身地アフリカの貧困問題などを情熱を持って教える。りごぼんだけだと半期とはいえ疲れただろうから、彼女の落ち着きはちょうどバランスが取れてよい。

授業での学び
マクロ経済は全く初めて学ぶし、仕事でもミクロ経済的事象しか見ないので、この新しい学問は非常に面白く、刺激的だった。

特に経済政策を様々な国のケースと共に学ぶと、成長と衰退、好況と不況は微妙なバランスの差で生まれてくるのだと実感する。また、貿易のメカニズムもVogel塾や日本人研究者交流会の議論を理解するのに非常に役に立った。むしろ、世の中のこんなに重要なことを知っていなかったことに情けなさを感じてしまう。

マクロ経済の理論には強い前提があり(閉鎖系である、等)、原理原則としての妥当性、或いはある時点での説明能力はよく分かった。だが、グローバルに入り組んだ経済においてはどこまで適用できるのか、或いは最新の理論ではどのように説明しているのかまでは授業では取り上げ切れていない。私のような初学者もいるし、半期という時間的制約から無理はないが、非常に興味がある。

授業の感想
マクロ経済を学んでいて強く感じたのは、「これは化学だ」ということ。私は化学出身なのだが、化学では分子6x1023をひとまとまりとして、巨視的な物質の挙動を考える。

そこでの最も重要な概念は、閉鎖系における平衡状態と、開放系における定常状態だ。例えばISLMの考え方は閉鎖系なので、相図(温度を横軸、圧力を縦軸にして物質の状態を記す図法)を頭に描きながら、変数(生産量と金利)の変化で状態がどう推移するのかと理解すると、非常に分かり易かった。

するとミクロ経済は物理学なのだろうか。両者を繋ぐのは統計力学に相当するのだろうか、などと考えるとなかなか面白い。

物理化学で一番驚いた考え方は逆格子空間だった。結晶構造という"こちら"の世界を、フーリエ変換という操作によって"あちら"の世界から眺めると、複雑そうに見えるものが極めて単純な構造に見える。世界を裏側から覗いた気分だった。

材料工学出身のパートナーとのミーティング(向こうも私が材料工学出身と知っている)で、

「ビジネスの諸課題を、軸(新たな切り口)で構造化して、新たな見方や考え方を見出すというのは、フーリエ変換だ」

と言われたことがある。その言葉をふと思い出した。個別企業を対象とした経済学は、ナノ経済学とでも言えるもので、量子力学のアナロジーがあてはまるのかもしれない・・・・・・  まあ門外漢なので戯言はこのくらいにしておくが。
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by flauto_sloan | 2008-08-10 12:05 | MITでの学び(MBA)
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