MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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MIT卒業式 - Change the world
先日、MITの卒業式が行われ、私は寮でMIT Channelにてテレビで見ていた。卒業式でのスピーチは、ノーベル平和賞受賞者のMuhammad Yunus氏であり、非常に素晴らしい内容だった。

ユヌス氏については、多くを語るまでも無いだろう。バングラディッシュで貧民向けの銀行、グラミン銀行を設立し、マイクロクレディットの手法を作り上げ、多くの人々に自信と経済力を与え続けている偉大な社会起業家だ。

MITのサイトに音声付きでそのスピーチが収録されているので、是非聴いて(読んで)頂きたい。以下要旨
"従来のビジネスは資本主義経済の枠組みの中で動いており、そこでの目的は利益を最大化することにある。私は利益を最大化しようとしていないが、私のビジネスは私に幸せを与えてくれる。「ビジネス」は資本主義の枠組みという、余りに狭く一面的な意味に押し込められてしまっている。

人間は多面的な視点を持つはずだ。我々が世界で直面している問題は、利益最大化のレンズでは見えてこない。多面的な考えを持つ、本当の人間がビジネスから得られる幸せは、「利益の最大化」だけでなく、「広く認められた社会的意義の達成」にもある。だからビジネスにも、利益追求事業と社会事業とがあるべきだ。

あなた方の世代は世界を革新することができ、一人一人は世界を変える力がある。一生で何か一つは、あなたが最も心を痛める問題を解決するための、社会事業に関わることをして欲しい。もしあなたに(新しい社会的事業の)デザインと資金があれば、行動に移して欲しい。もしお金が無いだけなら、MITの学部長に話せばいい。

貧困は貧しいから在るのではなく、(資本主義社会の)仕組みにより人々に降りかかったのであり、貧しい人と恵まれた人との間に何の違いも無い。この仕組みを変えることは難しく、手を拱いていては手遅れになるが、3つの基本的な試みが大きな成果を出すだろう。

1) "social business"を市場原理に組み込んだビジネスを広めること、2) 全ての人に経済およびヘルスケアのサービスを行き届かせること、そして 3) 誰にでも利用可能なITをいきわたらせることである。

問題が非常に大きく見えても、簡単な小さな部分から解決していけば、面白いように大きな問題を解決していくことが出来る。正しいやり方でさえあれば、すぐに世界を動かせる。

あなたたちの前にある大きな二つの使命は、この世界から貧困を撲滅することと、人の無関心と利己心が傷つけた地球環境を修復するために、世界を正しい方向に向かわせることだ。

おめでとう、あなたたちは素晴らしい可能性に溢れる世代に生まれた。そして前もっておめでとうと言っておこう。あなたたちによって、この星のすべての人が人間らしく生きられる世界が創造されることに。"

社会主義を打ち倒し、この世の経済を独占している資本主義が、唯一のビジネスの評価軸だと捉えられるのは自然だ。ビジネスが資本主義の中で動いていると信じている限り、あらゆることをお金(利益)に落とし込み、NPVが正か負かで良し悪しを判断すればよい。

だが利益という単一軸に世の中の事象を捨象しようとすれば、多くのものは見えなくなる。ユヌス氏の言う「社会的意義の達成」、あるいは更に他の視点を持つことで、ようやく正しいバランスの取れた事象が見えてくるのだろう。


幸いにも私の卒業は来年なのだが、卒業後にどのような信条を持つべきか、改めて大きく考えさせられる。どうも資本主義をそこまで信奉できず、信じ込もうという割り切りも気持ちが悪い。文芸家や漫画家の一族に生まれ、音楽家や化学者を志したからだろうか。だが信じなければプロフェッショナルとしての強さは生まれない。

では資本主義を受け入れ、極め、その後にもう一軸を広げるか(ビル・ゲイツのように)、最初から2次元、3次元で複雑さの罠に陥るか、あるいはそれを克服してユヌス氏のようになる強さを自ら作り上げるか。

残り一年はそれを見つけるのに短いのだろうか。来年の今頃にこのブログに書く気持ちは、疑問が疑問のままに残る時間切れの感覚だろうか。

この一年で大分エネルギーが蓄えられたように思う。引き続き、ゆっくりと、だが精力的に経験し、考えていきたい。
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by flauto_sloan | 2008-06-22 15:48 | Guest Speakers
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