MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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地球の将来とビジネス - Prof. Rebecca Henderson
MIT Sloanの看板教授の一人、レベッカ・ヘンダーソン教授が "Preparing your business for change" として、サステイナビリティについて、そして地球規模で需要と供給の変曲点を迎える中での企業の役割の変化について話した。一つ一つのファクトはどこかで見てきたものだが、ストーリーとして力強く語るヘンダーソン教授の熱いメッセージに感銘を受けた。

c0131701_2125753.jpg地球環境の維持可能性
人類はかつてない負荷を地球に与えている。全世界の人口は、有史以来指数関数的に増大し、一人当たり生産額も同じく増大している。この二つを同時に実現できたのは、安価な燃料(=化石燃料)が利用できたからである。結果として二酸化炭素が大量に排出され続け、地球環境に未曾有の負荷を与えてしまっている。

二酸化炭素(及び他の温暖化ガス)が地球温暖化に与える影響は議論が分かれるが、科学的正誤の論争と施策の是非を混同してはいけない。もし科学的な影響が証明されていないと、何もせず手を拱くことは、取り返しのつかない惨事というリスクを伴う危険な賭けをし続けるのと同じだ。賭けが外れてからでは遅い。

エネルギーの変曲点
人口増加が続くならば、エネルギーの需要と供給に大きな抑圧がかかる。戦争・疫病・人口抑制策が無ければ、2050年までに人類は30億人増えるとされるが、すると世界のエネルギー消費量は現在の年間135TWから30TW程度増えると予測される*。これは50%の確率で気温を3℃上昇させ、33%の確率でさらに2℃上昇させる。氷河期と今とが気温で7-8℃しか変わらなかったことと比べても、その影響の大きさが分かろう。需要削減への一層の取り組みが必要である。

また需要が変わらないとしても、この消費の増大を維持することは困難だ。30TWの需要増加を現在のテクノロジーで実現するには、全ての耕地をバイオマス育成に充て、とてつもない数の原子力発電所を建て、等々、非実現的な施策を打ち続けても足りない。技術的なブレークスルーは必要不可欠だが、まずは需要の抑制・削減から取り組まねばならない。


ビジネス機会
ではビジネスに携わる者はこれらの問題をどう捉えるべきか。外部要因でしかないのか、自分自身の課題なのか。自らの課題としない限り、長期的には市場から姿を消すことになる。

むしろ需要や供給の変化をビジネス機会と見て、どうそこから利益を生み出すのかを考えねばならない。最近は企業の中でも、サステイナビリティへの関心が高まり、環境負荷を減らすためのアイディアの提案が活発になされ、一部企業では自発的なタスクフォースが組まれて実行を始めている。

特に有望なのは、廃棄物削減と生産プロセスの改善である。PC一台を作るには、20倍の量の原材料が必要となる。つまり95%はムダになり、このムダの削減や再利用が与える影響は大きい。他にもサプライチェーンをサステイナビリティの観点で最適化することも有用だ。

これらの変革はこれまでの企業の成長とは非連続な取り組みであり、大きな発想の転換が必要である。サステイナビリティへの意識の高まりやモメンタムは企業や社会に生まれているので、目先の忙しさに捉われず、長期的で戦略的な変革を企図しなければならない。そして実行することはさらに困難だが、資金的余裕のある大企業から率先して取り組みを行っていかねばならない。


感想
地球環境問題を論ずるとき、ともすれば余りに明るくない未来に閉塞感を感じ、否定的で暗い考えをしてしまいがちなのだが、「機会」と捉えて積極的に変化を促すヘンダーソン教授の建設的な考え方に非常に感銘を受けた。

もっとも、個別企業が技術革新やエネルギー効率の向上を取り組むことは重要だが、優れた技術を活かし、伸ばすためのインフラが、果たして市場でよいのかがわからない。市場は自動調整機能を持つのだろうが、万能ではないし、発想やインセンティブがこれまでのビジネスとは異なる場合に作用するのだろうか。様々な技術を喰らいながら肥大したマイクロソフトのウィンドウズのように、技術の質と資本との非相関が、必ずしもベストではない技術を祭り上げることになってしまわないか。

するとカタストロフィは回避されない。

かといって国が旗を振って、政策的に環境技術に介入するのも違うだろう。私は今何も答えを持っていないのだが、何か今までと別次元の調整機能が必要な気がしている。局所解の積み上げでは到達し得ない需要、必ずしも金銭的インセンティブだけではもたらされない(効率化された)供給は、メルクリウス(商売の神)ではなくヘパイストス(火と鍛冶の神。鍛冶は即ち技術)の見えざる手が必要なのだろう。


* ヨーロッパ並みの消費量なら45TW、アメリカ並なら102TWも増大するという。暗にアメリカの大量消費社会を批判していた
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by flauto_sloan | 2008-04-08 23:28 | MITでの学び(MBA)
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