MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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noblesse oblige - Pakistani Billionair
パキスタンは、昨年最も株式市場のパフォーマンスが高かった国であり、人口は世界第6位である。日本はODAなどで長く関わってきているのだが、残念ながらブット首相の暗殺など暗い話題でその名を聞くことばかりで、あまり知名度は高くない。

c0131701_1713760.jpgSloan Entrepreneural CenterのKen Morse教授が招聘したHussain Dawood氏は、そんなパキスタン有数の大富豪で、親子二代で財を成し、化学工業、薬品、金融など多岐に亘る産業で中心となる企業を抱える一大財閥のトップである。

ダウード氏とその一族の企業は波乱に満ちた物語を体現している。父親の代にインドで織物輸出業者をしていたが、パキスタンの独立をチャンスと見て移住し、企業を成長させ、多角化し、富を築いた。しかしやがて一族の所有する企業のうち半分が国有化され、成長が抑制されてしまう。常に国有化を狙う当局に目をつけられ、一族・企業の目的は成長ではなく生存となっていた。

成長を続けていたパキスタンはやがて失速し、不況に陥ってしまった。一方でダウード財閥はインドなど海外への展開や、パキスタン国内の企業の買収で成長を遂げる。

そんな彼らの強みは「家族経営であり、プロフェッショナルな経営である」こと。グループ企業を家族で所有することによる強い絆と迅速な意思決定、そして長期的な視点を持ちながら、氏自身が英国と米国で教育を受け、MBAを持っているなど高い教育水準を持つプロフェッショナル経営者としての資質を持つ。氏の家族も同様だ。

さらには、国有化や規制で苦しみながらも、志まで失わなかったこと。成長が抑制されても、魂まで抑制してはいけない、と語っていた。そしてパキスタンの成長のために何が必要かを考え続け、人的資本育成のために大学を設立した*。女性の教育にも力を入れ、さらに今度はビジネススクールを開くという。今回の渡米の目的は、ビジネススクールの視察と、人材勧誘だという。米国へ拠点を移し国有化を逃れることもできたろうが、それをしなかったのも、パキスタンでの産業を育成し、優秀な人材が国に残って働ける場を作るため。

日本で言えば明治時代の篤志家たる資本家のようであり、まさにnoblesse obligeを実践している。産業界への影響力からしても、今後のパキスタンの成長には欠かせない重要人物であり、重要企業である。

日本ではここまでの富の偏在はもう起きるべくもないが(一般には偏在の度合いは増えるだろうが)、財を成したらば社会のために何ができるかを考える、そんな志が企業人にあってほしい。醜悪な成金嗜好はもう見飽きた。日本は20年の停滞でいよいよ危機的状況であるし、世界経済は大波乱にある。志を高く持つ人物がもっと生まれてもよい土壌はあるはずなのだが、私に見えていないだけなのだろうか。

* 実際は氏の父親が大学を設立していたのだが、それも国有化されていた
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by flauto_sloan | 2008-04-08 15:57 | Guest Speakers
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