MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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日本の日
いよいよ今週で春学期の前半が終わる。木曜は1コマ、金曜はテストと総括があるだけなので、今日でもう春休み気分。そんな前半の締めくくりは、奇しくも日本にスポットライトが当てられる日であった。

マクロ経済
りごぼん最後の授業は、日本についてのケース。バブル崩壊から続く不況が何故一向に回復しないのか、そして現在のアメリカとの類似性は何かを議論した。内容はShintaroのブログに詳しいので譲るが、複雑に消費行動、財政政策への制約、金融政策への制約が絡み合い、負の循環で硬直してしまっている。どれか一つのレバーを動かせば解決するというものではなく、System dynamics の John Sterman 教授と彼とで試作したモデルでは、各パラメータの感度がほとんどなかった程だそうだ。

そんな日本経済が取るべき方向として挙げられたもののうち、特に重要だとしていたものが、独立性を保った中央銀行によるインフレ誘導。消費者物価指数が上向いてきたときに日銀が金利を上げようとした(量的緩和の解除を発表した)ことは、彼にしてみれば失策以外の何物でもない。

それに加えて、財政政策・金融政策を実効的にするための消費者心理への刺激だ。日本が行ってきた減税などの施策が複雑で分かりにくかったため、消費者が意図したとおりの反応をせず、殆ど効果を挙げられずに収支の悪化ばかりを残してきた。もうその轍は踏めない。

丁度日本では日銀総裁人事が紛糾している。そんな折、りごぼんの下す日本への処方箋は

「日本は俺を日銀総裁に迎えるべきだ。俺はベネズエラの中央銀行にいたので、80%のインフレをよく知っている。俺さえいれば、すぐにインフレを起こせるのさ!!」

だそうだ。この教授が日銀総裁。色々な意味で面白いかもしれない。


オペレーション入門
続くオペレーション入門では、トヨタのケース。北米工場で起きたトラブルを題材にして、トヨタ生産方式とその根底にある思想について、北米トヨタからゲストスピーカーを招いて議論した。
内容は面白かったし、大野耐一の言葉として引用された
「トヨタ生産方式はゴルフと同じだ。やり方は5秒で理解できるが、熟練するには一生かかる」
は含蓄があってよい。
トヨタは日本だから成功した、文化的な背景が大きいのではないかと考えたがる生徒からの問いにも、
「文化によって習熟しやすさに違いはあるが、基本思想は普遍的である」
と、青い目をしたトヨタマンがばっさりと斬る。

ただ、どことなく違和感があるのは、自分の知る何人かのトヨタ社員に比べ、なんだか説明が明快すぎることか。暗黙知を形式知化する試みは長らく行われているのだろうし、研究者がこれまでもトヨタの秘訣を探ってきた。
それらをこの講師は説明していったのだが、普段トヨタの人から感じる「素朴なのに芯が異常に強い凄さ」が今ひとつ伝わらなかった。そこは日米の違いなのだろうか。

もうすぐ、Japan Trek にてトヨタを訪問する。そこで本家トヨタの凄さを見るのが楽しみだ。


グローバル・マーケット
最終回は、これまでのまとめと、"corruption"をテーマとした短編ケース集。汚職は古くて新しい問題であり、また最近特に脚光を浴びている問題である。

その中で、かのロッキード事件が取り上げられていた。特にこの事件に絞った議論にはならなかったが、今や世界有数のクリーンな国と評価される日本も、ついこの間までは、海外の企業(それも防衛分野)にとっては汚職無しに参入できない、途上国的側面のあった国だったのだ、少なくとも海外からはそう見られていたのだな、と理解。

汚職と一口に言っても、その国の状況によって善悪のグレー度合いは異なる。その相対化(クラスの中でも様々な立場に分かれた)が面白い。


Japan Trekミーティング
そして、いよいよ約1週間後に迫ったJapan Trekのオーガナイザー会議。いよいよである。
200人のスローン生は、日本を知り、感じてくれるだろうか。好きになってくれるだろうか。或いは、嫌いになるだろうか(それも好きの裏返しだろう)。
かなり不確定要素も大きいが、ここまでくれば腹を括り、あとは楽しもう。


こうして、日本を様々な角度から見た不思議な一日が終わった。
日本が発展途上国から先進国へ仲間入りし、その強さの源泉を振り返り、そして現状の不甲斐無さを見つめる。今必要なのは、メッセージが明確で正しい政府、独立した中央銀行の正しい舵取りと、消費者の自信である。

悲しいかな、今の日銀総裁人事に係る政争を外から見ていると、悪影響こそあれど何一つ理と利がない。こんな状況で消費者が自信など持てようはずもない。

いい意味で正しく民衆を欺瞞に導き、嘘を真にできるリーダーと政策が必要だ。それができれば、ベネズエラ人もありだろう…とすら思えてくる。
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by flauto_sloan | 2008-03-12 12:31 | MITでの学び(MBA)
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