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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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IAP - 久しぶりの物理
IAPということで、いくつか面白そうなワークショップに参加している。4週間のうち、先週はNY滞在、来週は一時帰国と2週間もボストンを離れるため、参加できるものはある程度限られているが、それでも興味を引くものが多いので面白い。
本日参加したのは、"Feynman films"、"The magic of Carbon Nanotubes"、"Public Art in MIT" の3つ。

"Feynman films - The great conservation"
MIT卒の大物理学者、リチャード・ファインマン教授が、教鞭を執っていたコーネル大学で行った公開講義の映像。白黒で音声も劣化しているが、それでもファインマンの魅力が伝わる。

内容はタイトルの通り保存則についてで、電荷保存則から強い相互作用と弱い相互作用、さらにエネルギー保存則(質量保存則含む)と運動量保存則、角運動量保存則へと説明を進め、それらの間の共通性や関連性を紹介していた。

物理学の全体像を把握している上での、それらの間の構造的連関を次々と展開していき、彼独特のユーモアに溢れ分かりやすいながらも洞察に溢れた講義だった。
特に彼の語り口は本当に物理が好きで楽しんでいるのが伝わる。彼はチャレンジャー号の爆発の原因がOリングにあることを公開実験で明らかにしたように、どうすれば物理現象をわかりやくく伝えられるかを熟知している。そのため物理法則を説明するための比喩も面白く、会場は笑いに包まれながらも保存則について理解を深めていく。生前に一度授業を受けたかった。


"The magic of Carbon Nanotubes"
IAP - 久しぶりの物理_c0131701_1444838.jpgMaterials Science(材料工学)のポスドク研究員による発表。カーボンナノチューブ(CNT)が発見された歴史から、その物性、合成方法、応用が期待される分野、実用上の課題、発表者の現在の研究内容、と続いた。
CNTは1991年にNECの飯島澄男特別主席研究員(日本人のノーベル賞最有力候補の一人)によって実質的に発見され、高いアスペクト比(縦横の長さの比)、鋼鉄の数倍の強度と、高い熱伝導率、太さによる金属性の変化(バンドギャップが直径に依存するため、うまく合成すれば金属にも半導体にもできる)といった独特の性質のため、サムソンなどが進めるFETへの応用から、「スペース・エレベーター(宇宙までスムーズに昇降できる夢のエレベーター)」への応用まで、幅広く活用が期待される。
ただ効率的な合成方法や、実用上の問題(金属との接着方法など)があるため、世界中で盛んに研究がされている。
CNT研究の先駆者はNECだが、インテルやサムソンなど巨大資本を持つ半導体企業が、ムーアの法則の限界を突破するために注目している。今後彼ら自身が投資をしつつ、Nantero(MITアフィリエイトが興したスタートアップ)などのベンチャー企業を吸収して、新たな分野を切り開いていくのであろう。いわば半導体産業の次の戦場の有力候補であり、今後も注目していきたい。
ちなみに、MITからミシガン大学に移った John Hart教授の Nanobliss.com には、CNTを初めとした色々な写真があるので、興味のある方は是非(写真はそのサイトから)。


Public Art in MIT
IAP - 久しぶりの物理_c0131701_8553057.jpg実はMITの中にも様々なアートがあり、それを紹介する教養系のセッション。
Sloan plaza にある彫刻が(左写真)、実はピカソの手によるものだと判り、驚くと共に、もっと作品が浮き立つ置き方にすればいいのに、と思った。

C-functionを行った Walker Memorial に飾られる壁画の解説も面白かった。中央に座すのは聖母かと思っていたら、アルマ・マター(学校の象徴。コロンビア大学の彫刻が有名)であり、周りの聖人と思われる人たちは実は学問の象徴であった(だから後光に"PHYSICS"などと書かれている)。なんともMITらしい。

IAP - 久しぶりの物理_c0131701_856455.jpgMITでも有名な"The Big Sail" という Alexander Calderのオブジェ(右写真)には、非公式折り紙バージョンもあるという。
OrigaMITを有するMITらしい。

久々に物理に触れると、非常に新鮮な気持ちになる。明日も色々参加する予定。
by flauto_sloan | 2008-01-15 23:15 | MITでの学び(非MBA)
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