MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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コアタームの学びを習う - 統計(DMD)
DMD(Data, Models and Decisions)と呼ばれる統計は、統計の基礎を学び直すことで、普段数学的意味を忘れて使っていたツール(回帰分析や線形計画法など)を見直し、陥りやすい誤りを自覚することができた。

授業内容
ディシジョンツリー、確率の基礎、統計の基礎(二項分布、正規分布、t分布)、最適化(回帰分析、線形計画法)であり、10年以上前の記憶にまで遡れば、全て一度は学んだものであった。
また、Crystal ball といったソフトを使ったシミュレーションなど、個別のツール紹介とその実践も行った。

MITにおける統計
Sloanで教える統計の教授たちは、実際は Operation Reearch Centerに所属しており、統計学者ではない。Operation Research は、MIT Sloanが世界一の先進性と実績を持ち独壇場としている分野であり、私も是非学びたいと思っている分野である。その基礎あるいは必須ツールとして統計を押えているに過ぎない。

Andreas Schulz教授
最終授業のスピーチを紹介したShulz教授は、ドイツ人らしく真面目で、それでいてユーモアを欠かさない。ドイツ人のジョークは、顔色一つ変えずに突拍子もないことを言うので面食らうが、慣れるとなかなか面白い。
教え方は実直で分かりやすく、生徒の半分近くはエンジニア出身で統計の基礎など理解していることを是として、むしろ彼らから実務上でどう統計を利用したかを引き出していた。

授業での学び
内容自体はいつか来た道を振り返るものであった。ただ、仕事でも使っていたツールの使い方を正しく見直せた。
例えば、データから回帰直線を最小二乗法で引くと、R2という当て嵌まりの良さを示す指標を図り、それが大きいほどよい回帰直線だと見做す。ともすればこのR2の大小のみで回帰直線の評価をしがちだが、R2の導出方法まで遡ってその意味を見直すと、他の検証方法も行わないと、季節変動など隠されたデータの規則性を看過する誤りに陥ってしまうことを改めて学んだ。

授業の感想
まず持った感想は、中間試験の頃に書いたように、定量的な分析を多用するコンサルティングであっても、世の中に確率がわかっている(あるいはある程度精度よく見積もれる)事象は非常に少ないため、統計的な意思決定手法は協力であるが、そのまま使える機会は限られている、ということ。
また、組織論(OP)の初期の授業で取り扱ったように、意思決定は様々なバイアス、無意識による自己欺瞞に左右されるため、数量的な分析は厳しい前提のもとでの強力なスタート地点として位置づけないといけない、という、適用範囲の自覚が重要だ、という点である。


次に、回帰分析、線形計画法の意味を見つめ直すことで、「最適化とは何か」を考えさせられた。
単純にエクセルのモデルを回す最適化だけではなく、経営課題に対する解の出し方も含めてである。

最適解を求めるアルゴリズムの代表的なものに「山登り法」と「焼きなまし法」とがある*
Incremental(漸増的)な変化だけでは、山登りをしているだけで、最適な解、商品、業務に至るとは限らない。
本当に望ましい状態へ至るには「遷移」が必要であり、これがInnovationと呼ばれるものに他ならない。

ただそんなイノベーションの連鎖も、どこまで続けば本当の最適なのだろうか。いや果たして最適と呼ばれるものが存在するのだろうか。
鋸山の峠から頂上へ上り、丹沢の頂上へ遷移してさらに富士山の頂上を極めても、日本という局所解でしかなく、グローバルな最適解のためにはキリマンジャロ、マッターホルンと経てエベレストまで上り詰めなければならない。
ではビジネス上の課題にエベレストの解はあるのだろうか。これ以上は改善もできないし、これを上回るイノベーションもない、という状態は。

グローバル化が進む経済では、"Winner takes All" が新たな教条とされつつあるが、それはグローバルな最適解が一つであり、そのエベレストの頂を制した者が世界を眼下に納めることを意味している証左であろうか。
では上り詰めた先は、天に召されることを待つ閉塞しかないのだろうか。

恐らく、そんな不可知論的な議論に意味はないのだろう。富士山だろうとキリマンジャロだろうと、初登頂することが肝要なのだ。
そもそもこの問自体、人類の叡智を軽んじているのかもしれない。

* 簡単に言うと、山登り法とは山を登るが如く、現在値よりも少し適当な値、さらに少し適当な値へと、順次望ましい方向へ進む局所最適化の方法である。これだと求めた極値が大域的(グローバル)な最適解だとは限らない。山を上へ上へと上り詰めたら、そこは峠でしかなく頂上は別のところにある、といなりかねない
焼きなまし法は大域的な最適解を求めるために、固体物理学的な「遷移」の確率を盛り込んだアルゴリズムである。詳しくはwikipediaに譲るが、より最適な状態へ移動する可能性を持たせることで、大域的な頂上(最適解)を目指している
なお、上記の鋸山からエベレストへの比喩では、両者の概念を意図的に混ぜて使っている

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by flauto_sloan | 2008-01-14 12:22 | MITでの学び(MBA)
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