MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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コアタームの学びを習う - 会計
会計(Financial Accounting)では、米国基準の会計の基礎と共に、様々な会計基準の選択がビジネス上どのような意味合いを持つか、それではマネージャーとしてどれを選択すべきかを学びました。近年カリキュラムに梃入れが入ったため、思った以上に面白い授業でした。

授業内容
財務諸表の読み方から、売上や費用の計上方法、Cash flowの算出、減価償却、負債やリースの計上方法、税金の取り扱い(税務会計は別授業)を学びました。

ケーススタディでは、売上を計上するタイミングを誤ったことによる失敗例(Shrek 2)、ソフトウェア開発費の計上方法と売上計上タイミングの操作による利益調整の例(Microsoft)、利益計算のミスを反映させるタイミングに関する経営陣と監査法人との攻防(Molex)などを扱い、いずれも経営陣の意思が会計基準の選択にどう関わり、その結果市場にどのような影響を与えたか(そして経営陣にどのようなフィードバックがかけられたか)を議論しました。


MITにおける会計
MITは会計に関して特段評価が高いわけではありませんし、学校としても注力していません。むしろファイナンス理論の理解や市場を分析するための必要スキル、としての位置づけのようです。
授業もこれまで評判が悪く、何度もカリキュラム変更と教授の入れ替えを行ってきました(そのため古い過去問を解いてもあまり意味がない)。


Rodorigo Verdy教授
以前最終授業の項で紹介したように、Verdy教授は今年初めてMITでAccountingを教えました。会計士ではないですが、専門は財務諸表の内容や質が市場にどのように影響するかの研究だそうです。

ケーススタディの進め方がやや強引な時があるものの、教え方は分かりやすく、何度も復習を繰り返して基礎からきちんと積み上げていきました。
非常にオープンで、細かすぎる質問にはわからないと答え、クラスの中の専門家(トルコ人の会計士や証券アナリストなど)に意見を求めていきます。その姿勢も好感が持てました。

毎回授業が終わると拍手が起こり、最終授業ではスタンディング・オベーションに記念写真という人気振りでした。


授業での学び
会計方針の選択を主要テーマとして、
1. 市場からの評価、企業としての戦略、企業における自分の立場から、どの会計方針を選択すべきか
2. 上記のような企業の「意図」を、財務諸表からどう読み取るか

の二つの視点を学びました(後者は春学期の授業に引き継がれます)。

仕事ではよく、いくつかの企業の業績を比較するために、大量の財務諸表に眼を通し、様々な数値を算出して比べました。ただその際に考慮する会計方針の違いは、平仄を揃える(apple to apple にする) ために見ておくべきもの、という意味合いが強かったです。

今回の授業で、1の会計方針を選ぶ立場になって会計を捉えなおすと、なるほど経営者はこんなことを気にするのか、ここを操作するのか、というポイントがわかりました。
すると会計方針が平仄揃えのチェックポイントではなく、「敢えてこういう会計方針を選んだということは、なにか裏があるに違いない」と勘繰るためのきっかけと捉えられるようになったのです。

もともと、人を騙し欺く手法やメカニズムに興味があるので(自分が誰かを騙すためではなく、純粋な興味と防衛手段として)、会計という謎解きの面白さを知りました。
コンサルティングの仕事でも1, 2両面で役立ちそうです。

会計の授業はこの後、2の応用編のFSA(Financial Statement Analysis)、管理会計、税務会計と続きますが、他の分野に興味があるため次の学期はパスします。


授業の感想
授業で取り扱う会計知識自体は、日本で言えば日商簿記3級から2級レベルで、基礎に留まっています。それはMBAで会計を学ぶ目的が、財務諸表を深読み(裏読み)できるとともに、財務諸表を戦略と合一させ、市場へ効果的にコミュニケートするスキルの構築にあるためです。
そのため、MITのカリキュラムはテクニカルなものから応用的なものへ移り、効果を挙げています。
まだ財務諸表を一瞥して問題点を指摘する眼力がある訳ではありませんが、そのポイントや、興味をもつきっかけになりました。

コロンビアのサマースクールで、映画『エンロン』を観ました(現在の会計のカリキュラムでは、エンロンのケースは取り扱いません)。ワールドコムと共に、米国会計基準の信頼を "Creative Accounting" により失墜させ、アンダーセンの解散へと連なったこの一大会計スキャンダルは、皮肉にも、会計操作によっていかに効果的に市場へコミュニケーションをとれるかのベストプラクティスになりました(そしてその代償についても)。

市場が完全に効率的(全ての情報が共有され、それが株価に常に反映されている)ではないのは、エンロンのケースをみても、ヘッジファンドの存在を見ても明らかです*。市場という巨大な化物システムを、いかに騙し騙されるか、その攻防の面白さを一層深く楽しめそうです。

* 幸田真音『小説ヘッジファンド』はなかなか秀逸でした
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by flauto_sloan | 2008-01-08 14:09 | MITでの学び(MBA)
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