MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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コアタームの学びを習う - ファイナンスⅠ
ファイナンスはFinance I として1年にわたる基礎講座の前半という位置づけでした。これまで結果を使うことしかしていなかったファイナンス理論を基礎から学ぶことで、その背景や、なぜその結果が有用かがよくわかりました。ただし、授業に関してはいささか割り切りが必要でした。

授業内容
Fixed income (債権) に始まり、理論株価、資本の効率的配分手法といったリターンをどう管理するかの方法を前半に学び、後半はポートフォリオ理論、CAPMといったリスク管理の方法論を学びました。最後は先物やオプションといったデリバティブ(金融派生商品)で締めくくりました。

MITにおけるファイナンス
MITはファイナンス理論の歴史では、まさに中心的な役割を担ってきました。代表的なものは MIT教授のFischer Black とMIT講師のMyron Scholes の二人によるBlack-Scholes モデルです。これはオプションの価格を理論的に算出することを可能にした式で、オプション市場の発展に大きく貢献し、1997年には両名にノーベル賞が送られる理由となりました。
私のクラスを教えた Stewart Myers 教授は、リアルオプション理論で著名であり、また多くのビジネススクールで用いられているコーポレートファイナンスの教科書の著者の一人です。その世界ではかなりの big nameです。

Stewart Myers教授
そんな偉大なMyers教授ですが、残念ながら授業は今ひとつでした。お年のせいか、唇と手がよく震えます。言語もいささか不明瞭。でもアストン・マーチンを乗り回しているらしい。

実践的に教えようとするあまり、Wall Street Journal のファイナンス欄の見方をひたすら1回半に亘り説明してしまったり、シラバスから外れてちょっと前の宿題について話しこんだり、あるいは宿題に必要な内容をカバーしていなかったり…と、残念ながらことごとく生徒の関心を失う裏目に。
もう一つのファイナンスのクラスを教えている Wang教授の教え方が上手かったため、多くの生徒が公式非公式にWangクラスへ転向していきました。

とはいえ、途中、特にMIT伝統のデリバティブの授業になってからは、
「新しいものを授業で理解するのは諦めて、この御大が何を考えているのかを見てみよう」
という、興味主体で授業に臨んでいました。
期待に違わず、Black-Scholes モデルの説明では、MIT内でのビビッドなやり取りを回顧していました。

「Fischer(Black) がこのrisk-neutral な仮定でランダムウォークに基づく理論展開を始めたとき、Paul (Samuelson)は、『君たちはリスクを無視するのか!』と激怒していたよ。Paul は彼で独自にオプションの理論価格算出を研究していたが、どうしてもあと一歩完成せずにいたんだ。でも結果的には、Paul が認めたがらなかったこの risk-neutral という革新的な洞察(insight)によって、このBlack-Scholes の式は完成したんだ」

最終回では、シラバスを大きく超えて円キャリートレードの話にまで発散発展し、特段まとめはないまま授業が終わりました。それはそれで楽しかったです。

授業での学び
前述のような授業だったので、ファイナンス理論そのものは教科書やWang教授の講義ノートで自習していました。従って授業そのものからの学びは限定的ではありますが、今回学んだファイナンス理論からは、市場のエネルギーを学びました。

ファイナンス理論は、市場が効率的であり、もしアービトラージ(鞘抜き)の機会があっても目端の利く投資家(ヘッジファンドなど)が裁定取引を行い、理論上の平衡状態(価格)に落ち着く、という前提(と言うよりも歴史が証明している経験則)に基づいています。
例えば私の理解した限り、Put-call parity も別に理論から演繹された恒等式ではなく、parityという言葉が示唆するように、そこから仮にずれたら市場の見えざる手が調整する、という平衡状態を表しています。

かつてファイナンスの授業を持っていたLo教授が見つけた裁定取引のように、すぐに市場の非効率が解かれないものもありますが、基本はすぐに平衡になります。物理学で考えると、これはその平衡状態から変位するためには多大なエネルギーが必要になることを意味します(エネルギーポテンシャルの深い谷底に市場の平衡状態がある)。そこまで凄まじいエネルギーが市場にはあるのかと、物理学的なアナロジーを以って感心してしまいました。
実はあまり金融にこれまで興味を持ってこなかったのですが、これだけのエネルギーが渦巻いているシステムは、是非ともよく知っておかねば、と思う契機になりました。

授業の感想
HBSに行った会社の先輩と以前話したとき、HBSのファイナンスの授業では冗談で「Black-Scholes式は、計算式をエクセルで組んで、必要に応じて計算できるようにすればいい。もしそれ以上細かいことが必要なら、MITの人を雇いなさい」と教えたそうです。
Sloanはビジネススクールであり、どちらかというと計算できればよい、というHBS側なのですが、一方でせっかくこのMITにいるのだから、もう少し Black-Scholesの式について詳細に見てみたい、とも思います。
聞いたところ数学的にかなり高度らしいので、もはや微積分から離れて久しい私がどこまでなぞれるかわかりませんが、時間のあるうちに挑戦だけはしてみようかと思いました。

今後ファイナンスⅡへと進み、いよいよコーポレートファイナンスの領域に踏み込みます。コンサルティングの仕事では関わりのある領域だけに、腰を据えて理論を学ぶのが楽しみです。
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by flauto_sloan | 2007-12-28 10:15 | MITでの学び(MBA)
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