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MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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最終授業
明日の経済学の試験を皮切りに、いよいよ期末試験期間に突入します。
コア(必修)課目も次々と最後の授業を終えていきました。

印象的なのは、最後の授業はこの学期で学んだことを振り返るだけではなく、教授がメッセージを熱く真摯に語ることです。

教授がこの教科で何を伝えたかったのか、
学生が学んだことをどう活かして、どのような人物に育って欲しいのか、
残りの1年半をスローンでどのように過ごして欲しいのか

教授によってメッセージは様々ですが、みな最後に「これを学んでよかった」と思わせてくれるようなことを伝えて下さいました。


一番印象的だったのは、今年初めて会計の授業を受け持つ、ブラジル出身の会計のR. Verdi 教授
「授業の初めにも言ったが、私は会計士ではない。
当然、君たちに会計士になってもらいたいわけでもない。
ただ、私は君たちが将来マネージャーとなり、意思決定をするに当たって何を知っておかなければならないかを伝えたいと思って授業を行ってきた。

今まで見てきたように、会計上の方針ひとつをどう定めるかによって、企業の業績、社会的な位置づけ、そしてマネジャーの責任が大きく変わってくる。
では意思決定が必要な場面では何を考え、判断の対象としなければならないのか、それを理解してもらえたのなら非常に嬉しい。
君たちと一緒に授業ができてとても楽しかった。ありがとう」

Verdi 教授は非常に熱心でユーモアもあり、毎回授業が終わると拍手が起こっていました。
この最後の授業では、教授が話し終わるとスタンディングオベーションが。
噂には聞いていましたが、初めての経験です。
最後に教授を含めてクラスの写真撮影を行いました。
最終授業_c0131701_8525295.jpg

経済学の教授でベルギー人の E. van den Steen 教授(McKinseyなどで働いた後に学問の世界へ転身)は、非常にわかりやすい授業を行い、個人的には一番好きな教授です。
「今回教えた経済学は、学問的に網羅しているものではない。
君たちがリーダーとなり、マネジメントに関わっていくにあたり、何を知っておくと非常に役立つのか。
意思決定をするときの原則やフレームワークとなるものに絞って教えてきた。
学問的過ぎて役立たないと思っている人もいたかもしれないが、
私が実務を行ってきた経験から断言できる。必ず役に立つ。

そして、君たちをこのコアタームで教えられて、とても嬉しい。
最初は他人の集まりだったのに、今では一つのクラスとしてまとまっている。
皆の顔つきも変わってきた。是非この仲間、経験を大事にして欲しい。ありがとう」


そして今日はDMD(統計)のドイツ人、A. Schulz 教授
「この授業で学んだことは、すぐに忘れてしまうかもしれない。
それはそれでいい。
ただ、これから先様々な仕事で多くのデータを使って分析をしたり、
あるいは部下やコンサルタントを使って分析をさせたりすることは必ずある。
そこで、今まで教えてきたような手法やツールがあることを知っておくだけで、
どうデータや分析を見られるかが違ってくる。
そのために、(線形計画法などの)手法の使い方といった技術的なことよりも、
それらがどのような時に利用でき、どのような考え方で分析が為され、
結果からどう意味合いを出すのかを教えてきた。そこは忘れないで欲しい。

また、この先1年半のSloan生活は、おそらく学生としてキャンパスに立つ最後の機会だろう。
是非ここでは、学びのポートフォリオを多様化してほしい。
成績は大事だが、良い成績を取るために得意な授業をとっても仕方ない。
是非新しいことを学んで、豊かな人間になってほしい。どうもありがとう」

・・・

最初の学期が終わろうとし、期末試験に向けて振り返って思うのは、マネージャーやリーダーとして意思決定をするときに頼りになるものは、世の中の原理原則ではないのか、ということです。
経済や社会は確かに非常に複雑で、このMBAで学んだからすぐにそれが適用できる、というものではないでしょう。
学問は現象を一定の仮定をおいて単純化し、そこにおける法則性や因果関係を見出していきます。当然現実の世界でそんな都合よく同じ仮定が成立する条件なんて限られています。

かといって学んだことを使えない、と言ってしまうのは、思考の放棄でしょう。
複雑だからこそ、単純化したモデルの真実を基に、少しずつ適用範囲を広げて仮定を変えて対処していくことが必要であり、
その根本的な原理原則を学んだり、学び直したりしました。

実務の世界にいるとそこまで立ち戻ることはなかなかできません。
ものごとを考えるときの土台、足を着けるための地ができているのを感じ、非常に楽しいです。
こう感じさせてくれるSloanの教授陣とカリキュラム(なかなか工夫が凝らされていました)はなかなかだな、と思います。

・・・
授業の最後では、授業内容、教授、TAを評価するシートが配られます。
学生からアップワードフィードバックをする仕組は、日本ではあまり見られません。これによって、教授に教えることへの緊張感と創意工夫が生まれ、優れた授業が生まれます。
素直に思ったことを書いたのですが、改めて思いました。
今学期は多くの授業で、良い教授に恵まれ、楽しく学ぶことができました。

試験は辛いものですが、あと少し頑張りたいと思います。
by flauto_sloan | 2007-12-10 20:35 | MITでの学び(MBA)
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