MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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Energy Ventures - Vinod Khosla
今日の昼休みに、Sun Microsystems 共同創立者でベンチャーキャピタリストの Vinod Khosla 氏が講演会を行ったので、中間試験期間中ではあるものの参加してきました。 コースラ氏はサン設立後にベンチャーキャピタリストとしてシリコンバレーで活躍し、今は自身が創立した Khosla Venturesでエネルギー関連ベンチャーを中心に投資活動を行っています。

シリコンバレーにおけるベンチャーの興隆の一翼を担っていたコースラ氏のエネルギー業界観には、未来の地球環境への熱さと、ベンチャーキャピタリストとしての冷静さが合わさり、非常に洞察深いものでした。

エネルギーへの投資拡大
化石資源の枯渇が叫ばれ続けて数十年。代替エネルギー、新エネルギーが探索され続けながらも大きな成果が上がっていません。刻々と高まるエネルギー問題の解決策への必要性を受けて、米国でエネルギー関連のベンチャー(スタートアップ*1)の立ち上げが活発になっています。

エネルギー関連のベンチャーが勢いづいたのは、投資家がエネルギー産業に注目していることと、カリフォルニアにエネルギーのベンチャー企業コミュニティーが築き上げられたことが大きく影響しています。

ウォールストリートの投資家の嗅覚は、今後社会的要請が間違いなく大きくなるエネルギー産業を捉えています。コースラ氏曰く「投資家の動機には fear とgreed があり、今はgreedがエネルギーへの投資を突き動かしている」状況です。エネルギー関連の投資会社も立ち上がっており、googleで "new energy" と引くと様々な企業が検索されます(日本語で「新エネルギー」と検索すると、説明記事や公共団体がまずヒットします)。

エネルギー版シリコンバレー
エネルギー関係の人材(技術者、アントレプレナー、投資家)はカリフォルニアに集まり、そこでシリコンバレーさながらのコミュニティを構築し、情報および人材の交流が盛んになっています。Khosla氏によれば、氏の投資している企業は1社を除き全て米国籍企業で、その1社(オーストラリアの企業)も近々カリフォルニアに本拠を移すそうです。シリコンバレーやムンバイの例を挙げるまでもなく、このように出現したコミュニティはますます隆盛し、世界の知識と資金と人材がますます集積していくことでしょう。

これらの要件は、まさに90年代のインターネット興隆時のシリコンバレーと同じです。その立役者の一人であるコスラ氏は、
「今のエネルギーベンチャーは、あのころのベンチャーと同じだ。今は小さい市場に沢山のベンチャーが割拠しているが、どんどん投資が重なって技術革新が続いていくと、市場が急拡大すると共に、MicrosoftやAppleのような、数社の企業がシェアを殆ど占めるようになるだろう。結果的に投資家にとって投資対効果は大きいが、個別の企業で見ると成功する企業はほんの一握りだろう。そのような企業を見つけて育てていく」
と述べていました。

そのようなエネルギー産業をとりまく背景の中で、この流れの仕掛人そのものでもあるコースラ氏とそのファンドは、次の3つのクライテリアを満たす企業に対し投資をしているそうです。
1. 重大な課題に取り組んでいるベンチャー
2. スケールを大きくすることができる事業を行っているベンチャー
3. 助成金を受けていないベンチャー
まさに、エネルギー問題と謂う人類規模の課題への側面支援を意図して作ったVCだけあり、利益と社会的意義を止揚した理念を実践しています。

そしてSUNを立ち上げたヴィノッド・コースラ氏らしい、口頭で彼が述べた第4のクライテリアは次のようなものでした。
4. インクリメンタル(漸進的)な技術を持つベンチャーよりも、イノベーティブ(革新的)な技術を持つベンチャー
何十年も研究され続けても大きな成果を挙げていないエネルギー業界には、成功率が低くても革新的な技術・アイディアを導入しなければならない、という熱い信念がありました。

財を成し名を得た氏が、自身のアントレプレナーシップと信念と、そして投資の知見とを投入し、人類の未来に貢献しようとしている姿は非常に美しいものでした。Sloan以外の学生、教授も含めて溢れかえった教室は、この老紳士への拍手で満たされました。


エネルギー問題への解決策は、不可避的に早急に必要とされるものでありますが、まさに革新的、革命的な技術が完成しないとそれを見つけるのは困難な状況です*2。でもなんとかそれを現実化させようという気概と環境が西海岸に生まれています。公害の教訓から環境技術の先進国であったはずの日本がこの分野をリードできなかったのは非常に残念ですが、今後大いに注目していきたい分野です。

ちなみに、チームメンバーのAmyはもともとMITで環境関連の分野を学び、エネルギー関係のスタートアップを興そうとしています。彼女はこの講演会を企画したクラブのコアメンバーでもあり、今度ゆっくりと話を聞いていきたいです。


*1 こちらでは新興企業をスタートアップ、ベンチャーキャピタルをベンチャーと呼んでいます
*2 化学を専攻していた大学生のころ、あるエネルギー関係の授業で某教授が「代替エネルギーの発展が目標を大きく下回っている現状では、エネルギー問題が解決できる可能性は非常に低い。でもその事実はあまり知られていない。知られて大きな混乱が生じる前に、なんとか奇跡を起こしたい」と語るのを聞いて暗い気持ちになったのを思い出しました

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by flauto_sloan | 2007-10-16 23:38 | Guest Speakers
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