MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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Doing WHAT matters
昨日の昼休みに、ジレットの元CEO、James M. Kilts氏がSloanで講演を行いました。氏はゼネラル・フーズ、ナビスコ、ジレットなどを次々と再生させ、今は自ら興したPE(プライベート・エクイティ)ファームのCenter View Partnersを率いています。

消費財業界では立志伝中の人で、特にブランディングの天才です。
そんなKilts氏のビジネス観は、3つのビジネスの目的と4つの基本理念で成り立っています。

3つの目的は、Growth & Innovation、Cost reduction & productivity、そしてCreating a performance culture です。
言うは易く行うは難しの典型のようなこの3つの目的を、同時に達成していくのがKilts氏の手腕です。ジレットのケースでも、オーバーヘッドを削減しながら広告費を増やしていき、シェアを大きく伸ばす一方、キャッシュマネジメントも見事なまでに徹底しています。
ではどのように行ったか。そこに4つの基本理念である、Integrity, Enthusiasm, Action, Understanding が大きく寄与しています。

Integrity は "intellectual integrity" と定義され、主に同僚の間で、客観的に正当な評価をすることを意味しています。
ジレットのCEOに就任した時、あらかじめ市場データからジレットの経営課題を分析していた氏は、取締役会で
「公表データを分析すると、この会社はオーバーヘッド費用が高すぎるように見える。この中で、確かにオーバーヘッドが高いと思っているのは何人いるか」
と聞くと30人全員が挙手をしたそうです。そこで続けて
「では、この中で自分が統括している部門のオーバーヘッドが高いと思っているのは何人いるか」と聞くと、誰も挙手しなかったそうです。
そのような、「自分は問題ない。お前が問題なのだ!」と互いに言い合う環境ではなく、誠実に真摯に経営課題を捉え、議論できる環境が必要だという理念です。

Enthusiasm は「物事は変えられる」と強く自覚して行動するための原動力です。Kilts氏はZOG (Zero Overhead Growth) やNOG (Negative Overhead Growth) と題した、管理コストを削減しながらの成長を成し遂げたのですが、オーバーヘッドの削減は得てしてモラールの低下を引き起こします。
そこで、「ここで削減したお金は、成長のために使われるのだ」と宣言し、実際に削減による余剰資金の使途を社内に公表することで、不要な管理コストを削減しながら、社員のやる気、情熱を引き出したそうです。

Actionは、「責任を持った仕事を最後まで成し遂げ、結果を出す」行動を意味します。ジレットは氏のCEO就任時に商品数が24000もあり、管理が複雑化し効率が低下していました。そこで「この商品数は減らせないのか」と聞くと、「確かに商品は多いですが、この顧客セグメントにはこれが必要だ、未だにこの商品の愛好者が多い、云々」と理由が並んだそうです。また、これまで商品数を減らそうとしたときには、コンサルタントを雇っていたそうで、「商品を減らすなら、コンサルタントを雇いましょう」との答えが返ってきたそうです。そこで氏は、
「私の住んでいた所では、蛇を見かけたら、すぐに殺していた。ここでは蛇を見たら蛇対策委員会を設置し、蛇退治のコンサルタントを雇うのか!? 必要なのは蛇を殺す者だ」
と言い、snake killer を任命し、7000にまで商品数が減ったそうです。

最後のUnderstandingは "understanding of customer and market" であり、何がそのブランドの市場における強みであり、顧客は何を望んでいるのかを知ることが重要だというものです。氏はCEOでありながら、消費財で最も重要であるマーケティングに直接関わっていき、CMの設計まで関与していたそうです。実際にいくつかの成功したCMを見ました。非常に面白い一方で、消費者の行動を巧みに捉えたものでした。

これらの基本原理に則って、やるべき目標をきちんとやりきることが成功の秘訣であり、最も難しいことなのだ、と力説していました。

そしてMBA生へのメッセージとして、「自分が心からやりたいことを見つけ、そしてそれにお金を出してくれる人を見つけなさい」と語りかけていました。


氏は流石に存在感が大きく、語り口にみなが引き込まれるカリスマを持っていました。コンサルタントという仕事柄(Kilts氏には嫌われている仕事ですが)、多くの経営者や経営層に会ってきましたが、Kilts氏ほどカリスマを感じさせる人はそうはいません。アメリカの懐の深さ、リーダーの力強さを感じた講演でした。

また、3つの目的と4つの理念もあまりに素直なものなので、ただ聞いただけでは当たり前に思えてしまいそうですが、それを実行することの難しさを日ごろ実感しているだけに、当たり前のことをやりきる手腕に感銘を受けました。

昔の上司で、産業再生機構にて多くの案件を成功に導いた方も、
「コンサルタントをしているときは、非常に難しい経営課題に、いかに優れた解を出すのかに苦心していたが、経営をする際にはそんな難しい問題などほとんどない。むしろ誰でも気がつくような、当たり前のことを実行し、結果を出すところまでやりきる。これを繰り返して本当に当たり前のことが実現している会社にすることが重要であり、かつ最も難しい」
と語っていました。

その「ほとんどない」高度に難しい経営課題ばかりに取り組むのがコンサルタントである訳で、だからこそ知的に難しく面白い仕事であります。
一方で真のリーダーに求められる資質、特に3つ目の理念の "Action" をいかにより深く身につけていくのか、それが留学前からの課題意識であっただけに、Kilts氏の講演で改めてその目的意識を思い起こしました。
まさに "Mens et Manus" です。

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講演後にKilts氏の本を$25で販売していました。一部買ってサインをしてもらったのですが、残念ながら名前を書き間違えられてしまいました……(涙)
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by flauto_sloan | 2007-10-02 22:56 | Guest Speakers
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