MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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MITでのメンタルヘルス
MIT Sloan生活(特に初期)における精神的ストレス
多くの日本人留学生にとって、言葉も文化も違うアメリカで、英語で授業を受け、チームと議論をすることはかなりのストレスです。さらには就職活動や家庭や個人の事情も加わると、自覚している以上にプレッシャーがかかり、精神的に追い込まれることもあります。

日本語であれば議論や発言に自信があるのに、英語であるためになかなか議論に参加できない、あるいはなにか発言しても意図が伝わらず、ありきたりのことに聞こえてしまう… 友達を作りに来たのに、パーティーなどでうまく立ち回れない…

これはSloanに来るほどのキャリアを積んできた人には、かなりのショックだと思います。
MIT Sloan生活の柱である授業とネットワーキングが、皮肉にもストレスの源泉となってしまっているのです。

私もこれまで何度と英語で仕事をしてきたのですが、話し方のプロトコル(決まりごと) があり、話す内容も共有できていた職場と異なり、授業ではなかなかいいタイミングでいい発言ができずに苦労しています。教材を読む時間もレポートを書く時間もネイティブの人の3倍くらいかかるため、予習復習に追われ(今後ますます追われることになると思われる)、余裕を持って思考することがなかなかできません。

一方でネットワーキングのためのパーティーや集まりも多く、そこでは米国世渡り二大要素の、コネ作りと自己アピールが求められます。英語で友人やコネを作ることも、なかなかにストレスです。あまり自分をアピールできず、存在感が示せなかった暁には、勉強の時間を割いてまで何やっていたのだろう、という暗い気持ちになります。

ある友人は英国留学したとき、授業が全然分からず、毎日寝ずに泣きながら必死に勉強した、と言っていました。私もかつて初めて海外プロジェクトに参加したとき、英語での仕事のコミュニケーションのプロトコル習得と、自分の価値のアピールができるまでの2-3週間は、自分がチームの中でのお荷物のような存在な気がして、苦悶し、挫けそうになったことがありました。そこでの免疫があるので、今の状況もある程度予測できていて、まあなんとかなっているのですが、なかなか精神的にきつい時期です。

このような辛さは同期や先輩の話を聞いている限り、殆どの日本人Sloan生が多かれ少なかれ感じており(あるいはかつて感じていた)、勉強会などの活動をして、みんなで乗り切ろうという動きもでています。とはいえ、精神の健康は自覚しにくい深刻な問題です。万が一のときのために、MITはメンタルヘルスに関する様々な対策を講じています

MITにおけるメンタルヘルス対策 (Newsweek 8/27号)
MITは1990年から2001年の11年間で11人の学生が自殺しており、残念ながら他の学校に比べ高い割合です。2000年に女学生が寮の自室で焼身自殺を図ったことで、MITはもっと手立てを講じるべきだったと訴訟を受け、MITは学内外の専門家を集め、改革に乗り出しました。

2002年にAlan Siegel氏がMIT mental-health chiefに着任すると、学内のカウンセラーが2/3の時間を教職員およびその家族へのセラピーに費やしたものを、2/3を学生のために費やすように直ちに変えるべく、スタッフを大幅増員し、より多くの学生に対応できるようにしました。相談に来ない学生の精神的な健康状態もできるだけ把握できるよう、新入生にはメンタルヘルスに関する9つの質問に答えてもらい、結果に応じては定期的にカウンセリングへの案内が送られるような仕組みを作りました。また精神的に追い込まれた学生は、身近な人に最初に相談することが多いため、教職員や寮職員が学生の自殺の危険度を把握し、正しい対処ができるよう、QPR(question, persuade, refer)というトレーニングを実施しています。
これらの施策の効果は着実に現れているとのことです。

MITから学生への呼びかけ (How to Get Around MITより)
新入生向けのMIT案内本 ”How to Get Around MIT” でも、一番最初の章が緊急連絡先と”Help”と題された緊急時の対処法です。そこには学生がバーンアウト(燃え尽き)しないよう、様々なアドバイスと相談先が書かれています。

“I’m thinking about double-majoring”と言う新入生が多く、熱意は素晴らしいのですが実際は授業とプレッシャーで回らなくなり、気がつけば燃え尽きてやる気をなくし、むしろ学業が嫌いになってしまう、さらには深刻な事態になってしまうことがあります。MIT(の学部)は、6年から8年分のカリキュラムを4年間に詰め込んでいるので、それをこなすだけでも大変だからです。学業を最大の目的と考えているMIT生は、その学業をやりきれないことで、得てして自分を無能で価値が無い人間だと思い込んでしまいがちです。そこに家族や人間関係といったプライベートな問題が重なると、一気に抑鬱状態になり、危険です。そこで以下の4つに注意するようにと書かれています

1. 授業を取るときには、できるだけ多くの先輩やクラスメートから情報収集をし、教授の質やワークロードを把握すること
2. もしも授業や、自分の専門分野が嫌いになった場合は、それにこだわる必要はなく、専攻の変更や、場合によっては転校も考えてよい
3. もし勉強内容が多すぎて回りきらないときには、授業を減らすことも考えること。特に心身に危険があるときには、必要最低限の単位に留めたり、留年してでもワークロードを減らしたりするように考えること
4. 他のMIT生も実際は同じように辛いと感じているので、助けを求めることは何も間違ったことではない。辛いときにはStudent Support Service に連絡すること。彼らはあなたを助けるためにいるのです

c0131701_11535750.jpgまた、MITには、Nightlineという学生による緊急電話があります。夜7時から朝7時までの間、つらいときに電話をかけることができ、するとカウンセリングのトレーニングを受けたMITの学生が相談に乗ってくれ、必要に応じて専門家の紹介をしてくれます。

その他
MITのカウンセラーのほかにも、ボストンには日本人の精神科医もいるため、つらいと感じた時には日本語で相談をすることができます。

せっかくのMBA生活、自ら無駄なプレッシャーを自分に与えて、楽しさを辛さが上回ってしまわないよう、時には上記のようなアドバイスやMIT内の仕組みを活用しながら、精神的にも肉体的にも健全でいたいものです。
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by flauto_sloan | 2007-09-09 14:30 | MIT文化
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