MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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心理音響学 - 音楽の効果
お昼にMIT Brain and Cognitive Sciencesにて、そこの卒業生(現在はNYU所属)の研究者による、心理音響学の講演があった。音楽が人間にどのように作用するのか、科学からは何が言えるのかと思い、前から気になっていた46号館へ向かった。
なぜ人は音楽が好きなのか。この答えはまだ明確にわかっていないが、和音は聴いて心地よく、不協和音は不快だと言われる。この好みは、和音自体の性質によるものと、学習によって生まれてくると考えられる。

和音は不協和音に比べて、共鳴による振動が少なく*この振動が不快感を生み出していると考えられる。被験者に二つの音による和音を聞かせ、好き嫌いを答えさせると、和音ほど好まれ、不協和音ほど嫌がられる。音階は和音による心地よさを最大化し、優れた作曲家は和音の心地よさを最大化させていると考えられている。

細かい振動を嫌うのが本能だという論では、心臓の鼓動と関係があるとされる。また、不協和音を和音として両耳から聞かせると不快でも、一音ずつ左右の耳から聞かせると不快に思わないという結果もあり、振動が感覚に影響する。

だが響きへの感受性は個人差が大きく、この和音に対する好みは、どこまで人間の普遍の本能なのかはまだ研究中だ。異なる文化間での比較研究もなく、西欧音楽特有のものかもわからない。だが幼児でも和音を不況和音より好むという研究結果があり、本能的なものと考えられそうではある。

一方、学習によって好みが生まれたとする考え方もある。音楽経験がある被験者の方が和音に対してより強い好みを示した。おそらく経験によって和音の心地よさを学ぶのだろう。
総じて、「まだよくわからない」段階だと感じたが、どのような音楽が人を心地よくさせ、それがどこまで普遍的かというのは面白い問題だ。音楽療法などとも関わるが、音楽が心理に作用する力がどれくらい大きくなり得るのか(個人差が大きいにせよ)、あるいはただの暇つぶしなのかといった、音楽の本質的な価値がどれくらいなのかがわかると、音楽の使い方は広がっていく。

私個人は音楽の力を信じているのだが、一方で常に批判的でもある。
なにが音楽が持つ本能的な効果で、そのうちどれがクラシック音楽によってより強く得られるものなのか。
なぜ世の中の97%はクラシック音楽を聴かないのか? (この数字を見ると、特殊なのは私のほうだ)
文化や学習はどこまで音楽の嗜好に関わるのか?
音楽は本当に、人間に求められているのだろうか?

信じつつも、このあたりを冷静に考えていないと、ただの盲目的な音楽宣教師になってしまう。現在認知科学で何がどこまでわかっているのかを知るいい機会だった。

ちなみに、その後ちょっとこの建物を見学。なかなか脳を刺激される。
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* たとえばドとレの音を同時に鳴らすと、二つの音がぶつかりあって細かい振動が聞こえる。一方で純正律のピアノで和音を弾くと、このような振動はほとんど感じられない。この振動が不快感の元であるらしい
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by flauto_sloan | 2009-04-15 20:09 | MITでの学び(非MBA)
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