MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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PEはハゲタカか救世主か
バレンタインデーの今日、スローンの親しい友人であり剃刀のように切れる頭脳の持ち主、Shintaroがボストン日本人研究者交流会にて発表してくれた。テーマはPE (Private Equity) ファンドについてであり、彼のコンサルティング、インターンでの経験から、日本におけるPEの現状と将来とを鋭く分析、紹介していた。PEは日本経済を躍進させるドライバーとなり得るのだが、今回の金融危機という擾乱をどう乗り越えるかによって、悪貨が良貨を駆逐する可能性もあると思った。

発表の詳細は割愛するが、以下の点が特に印象的だった。
  • PEファンドはそのノウハウや実行力によって、日本企業の競争力を高める可能性を持つ。企業価値向上のノウハウや人材を持っている、バイアウト・ファンド、事業再生ファンド、不良債権投資ファンドといった各種ファンドがそれぞれの強みを活かす分野で活躍していけば、日本企業の競争力は強化される
  • 日本でハゲタカと揶揄された短期に企業を解体するファンドや、少数株主として物申すアクティビスト・ファンド*1と異なり、PEは10年単位での企業の成長性を考える。投資後5年で投資先の価値向上をして、他のファンドや企業に売却するためには、買う側もその5年後にさらに価値が上がると思わないといけないからだ
  • ノウハウやグローバルなネットワークを持つ海外PEファンドも日本に参入しているが、厳しい時期にある。日本では案件の大半が、国内銀行系ファンドによる独自案件*2であり、案件生成が困難だ。加えて、円高、信用縮小による自己資金投資の増大と、利回り目標達成の困難化といった悪条件のため、海外ファンドは日本で活動しにくくなっている
  • これから最初の投資案件がexitする時期であり、この案件をPEが買う二次市場が発生すれば、PEファンド業界がさらに興隆する可能性がある。だが三洋を買ったのがパナソニックだったのは、この二次市場立ち上がりに冷や水を浴びせた。今後のPE業界の展望はまさに岐路にある
PEについて色々な場で知っていくうち、日本にはPEファンドが必要だと強く思うようになった。良くも悪くも日本企業は本質的な変化(構造改革というか体質改善)を起こしにくい。だが米国企業に比べて日本企業が圧倒的にROEが低く、(最近は調整局面だが)企業価値も低い。変わらないでいることは競合優位性をじりじりと失い、不作為のリスクを生み出す。

ならば圧倒的な実行力を発揮し、ごく当たり前のことをやりきることが必要なのだが、それを自分でできれば苦労しない。だから外部の力が必要で、コンサルティング・ファームに変革を旗振ってもらうが、それでも変われなければPEという外圧が必要だ。

だがそんな「変革の実行者」としてのPEの役割はまだ十分認識されていない。初期のファンドが張られた「ハゲタカ」「物言う株主」といったレッテルは、活動内容の違いを覆い隠して、一人歩きしている。ファンドの良い面は認識されにくく、産業再生機構の成功も「あれはガイジンじゃなくてお上がやったことだから」と価値の源泉を取り違えられかねない。そんな危うい業界で危惧されるならば、「悪貨が良貨を駆逐する」事態だ。

もし海外ファンドが(一時にしろ恒久にしろ)撤退し、国内金融機関系のファンドが中心となると、目標ROIが引き下がり、ノウハウも十分に蓄積されない可能性がある。諸々の理由で持ち込まれる案件の中には、本来価値向上の見込みが薄いものも、これまでの経緯などで投資してしまうものもあるかもしれない。そうすると、本来なら3割の案件が成功しなければ採算がとれないところを1割2割でも仕方がない、企業価値が1割しか改善しなくても仕方がない、と投資の質が下がってしまう可能性がある。

するとPEファンドの本来の名と実とが離れてしまい、ファンドで企業体質は変わらない、という誤った認識ができてしまうだろう。そうすると、なかなか本来の目的が達せられにくくなってしまうだろう。それはなんとも避けてほしい。


PEはコンサルティング時代から、同僚が転職していったり関連プロジェクトがあったりと、自然と興味を持つ分野だった。私自身は何故だか、自分が行きたいとはなかなか思わないのだが、その価値は認めている。今後PEの二時市場が立ち上がり、だが金融危機前の教訓を活かした慎重さで、「影の銀行」として活躍してほしいものだ。


*1 村上ファンドやスティール・パートナーズなどが有名
*2 他のファンドを招いて入札するのではなく、相対で売買する案件

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by flauto_sloan | 2009-02-15 21:18 | 交友
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