MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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身の丈と生態系 - Novell CEO
c0131701_216384.jpgランチタイムセッションで、ミドルウェア大手のNovellのCEOのRon Hovsepian氏が講演を行った。彼はIBMでソフトウェア、ソリューションについて理解した後、VCに渡ってキャッシュ・マネジメントを体得し、NovellのCEOとして迎えられ、現在同社の再建途上にある。彼が強調していたのは身の程を正しく知ることと、生態系の重要性だった。

彼が来た時、Novellは売上高10億ドルの「ビリオン・カンパニー」であり、これまでの成功体験から危機感に欠けていた。だが彼の認識は「1兆ドル産業の中での10億ドル企業に過ぎない」であり、寧ろ従来の戦略が規模に比べて発散しすぎているという危惧があった。

そこでまずは「この業界の中でのこの会社の役割は何だろうか」というシンプルな問から戦略を絞り込み、再定義したコア戦略に沿わない部門は売却。コアのビジネスはインフラ周りのソフトウェアであり、ミックスド・ソース(ウィンドウズとリナックスの双方に対応)の強みを活かすと定めた。

そしてパートナーシップの拡充によるビジネス生態系*の再構築を行った。ミックスド・ソース戦略をとる以上、生態系の重要性は非常に大きく、Novellを直接・間接に必要とするパートナーをいかに作り出すかがビジネスの成長に重要なのだが、それまで生態系と呼べるものを持ってはいなかった。そこで自ら生態系を作っていくのか、他社の生態系に組み込まれていくのかを慎重に検討しながら、Novellを核とする生態系の構築を行った。

質疑応答で面白いコメントがあった。顧客のニーズをどう探るかという問に対し、「顧客の言うことをよく聞くことだ。ただし顧客は往々にして間違っていたり自分のことを判っていなかったりする。だからよく聞いた上で、顧客のニーズを可能な限り最も筋のよい推測をすることが重要だ」と答えていた。顧客の声を聞く、という字面に誤解され易い標語の本質はまさにここにある。

また、新CEOとして最も心を砕いたのが、役員や従業員との信頼構築だったという。驕ったところがない、気さくだが思慮深い立ち居振る舞いは、カリスマ的ではないものの、彼がNovellに受けいられ、信頼を基にする生態系の構築に大きく寄与していたことだろう。

物凄く目新しいことを聞いたわけではないのだが、危機感のない企業で単身奮戦している苦労と洞察が垣間見える、なかなか面白い講演だった。


* パートナーシップなどを通じた、関連企業(時には競合を含む)との補完的な相互依存関係のネットワーク。各社が自己の利益の最大化を追い求めながら、結果的には全体の安定した成長を行えることから生物学の生態系のアナロジーを用いたもの。厳密には誤用であり、このCEOは「この中に生物学者がいるかもしれないので、比喩だということを断っておきます」と前置きしていた
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by flauto_sloan | 2008-11-18 22:06 | Guest Speakers
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