MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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ローマクラブ首魁 - 人類の未来と自然の知恵
c0131701_2045740.jpgソローとマンキューの巨魁会談に続いて、ローマクラブ総裁のAshok Khosla氏による講演に参加した。

ローマクラブの代表としてよりも、貧困撲滅に向けた彼の私企業の取り組み紹介が主であったのだが、経済学者と社会活動家のスタンスの違いが興味深い。

ローマ・クラブは科学者や研究者の集まり(秘密結社?)で、1970年に『成長の限界』(出版は1972年)を唱え、世界中で大きな論議を巻き起こしたことで名高い。そしてその『成長の限界』にはJay Forrester率いるMITのシステム・ダイナミックス・グループが参画していた。40年以上たった後も『成長の限界』は増版と改訂を重ね、未だに色あせていない。

希望は母なる自然に?
彼の取り組みの狙いは、貧しい人々に資源を十分に配分することで、気候変動を改善しようというものだ。世界の85%の富を持つ20%の豊かな人々は再生不可能なエネルギーを消費し、殆ど富を持たない50%の貧しい人々は、生存のために再生可能な資源を破壊している。その結果は資源が質・量共に悪化することであり、気候変動や様々な問題を引き起こす。もはや人類を維持するためには地球一つでは足りない*1

一つの地球で人類を持続させるための唯一解はなく、国際組織、企業や人々がそれぞれにできることをしなければならない。例えばある製品が製造されるまでに消費される資源量(リュックサックと呼ぶ)を認識して資源の効率化を図る、などだ。20gの金の指輪は20tの資源が消費されて作られている。

資源を効率的に利用するための一つのヒントは、自然界のテクノロジーにある。例えば蟻塚は砂漠の土を使いながら中は非常に涼しい。この蟻塚の構造を利用したエアコンなしの建物がジンバブエに建てられて成功している。Khosla氏の私企業も、こうした自然の知恵の応用を行っているという。

経済学者と活動家
途中で経済学部と思しき学生が「先ほどノーベル賞経済学者たちが、『世界の貧富の差は縮まっている』と言っていた。本当に貧富の差は広がっていると言えるのか」と聞いたのに対し、氏は

「経済学者は確かにそういうのだが、国という単位や、比率やパーセントで貧困問題を捉えては多くを見過ごすことになる。問題は貧困にあえぐ人が何人いるかであり、彼らにとって国や比率は何の助けにもならない

と答えていた。これは政策判断を諮る経済学者と活動家の違いであるが、両方を意識してバランスを取りながら考え・活動することが重要だと感じさせられた。

1798年のマルサス『人口論』や1970年の『成長の限界』などによって警鐘を鳴らされてきた人類は、遂に自らから学べずに衰退局面を迎えるのだろうか。人類の認知能力はそれほど低いのか。

陰鬱な未来を打破できる希望が、人類の内にではなく自然にあるかもしれない、という見方は技術的な適用性以上に希望を持たせてくれる。勿論、それだけで状況が劇的に改善するような特効薬にはならないだろうし、思わぬ副作用があるかもしれない。だが人間が持てる限り、自然が持てる限りの叡智を結集しても、地球一つに人間活動を収められるかはわからない。

技術でできることも限られている。あとは破綻しつつある市場経済を再構築した先に同じ過ちを犯さずにいられるかどうかにかかっているのだろう。

*1 2030年まで人類が今のペースで成長し活動する場合、地球が3つない限り維持できない
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by flauto_sloan | 2008-11-13 20:35 | Guest Speakers
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