MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
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ソローとマンキュー - 二大経済学者の対談
c0131701_20331011.jpgMITの経済学をサミュエルソンらと共に牽引し、「ソローの成長モデル」でノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソローが数年ぶりにMITを訪れた。

しかも世界中で使われている経済学の教科書を著し、ブッシュの大統領経済諮問委員会委員長も務めたグレゴリー・マンキュー(MIT卒)と二人でのパネルディスカッションだ。

オバマ次期大統領の経済政策が主題であり、それ自体も興味を引くのだが、何といってもソロー見たさに会場は満員だった*1

Institute Professor + Noble laureate
ソローはMITにおける最高権威である "Institute Professor" であり、1987年のノーベル賞受賞者である。この二つの名誉を持つのは、MIT広しといえど、Paul Samuelson, Franco Modigliani, Robert Solow, Philip Sharp, Jerome Friedman しかいない(故人含む)。 MITで最も畏敬される教授の一人だ。

次期大統領の経済政策
ソローはケネディ政権の、マンキューは父ブッシュ政権の経済アドバイザーであり、民主党と共和党と協力した政権が異なる。だが現在への危機意識と必要だと考える政策に関しては基本的に一致していたのが面白い。

議論は超早口で油の乗ったマンキューが主要政策をカバーし、長老のソローがじっくり噛締めるようにいくつかの論点についての見解を示していた。

マンキューの懸念
マンキューは概ねオバマの経済政策には同意していたが、自由貿易協定の再交渉と保護貿易政策には明確に懸念を示していた(ソローも同様)。だが同時に「オバマはこれが誤りだと知っている。少なくとも経済ブレインはわかっている」と希望を持っている。

また、米国経済が海外に与える影響は認めるものの、先進国と途上国の経済格差は中印の成長により縮まっている、と論じていたのが印象的であった。

ソローの訴え
全体を通じてソローは、次のような意義深い主張をしていた。
  • 今回の現象を金融危機として特別扱いするのは正しくなく、不況と捉えるべきだ。ただし通常よりも根が深く複雑で、回復まで長くかかるであろうから、様々な施策を講じてやりすぎるということはない。特に重要なのは、実体経済への影響を最小限に留めることだ。工場にキャパシティがあり、生産し続けられるうちは経済回復の余地はある。
  • 財政政策が何よりも重要だ。連邦準備銀行は金融政策でやれるだけのことをよくやった。各州への支援や失業保険の拡大といった財政支出プログラムで景気を刺激せねばならない。特に既に取り組み始めている公共事業は完遂すべき
  • オバマ政権は慢性的な貿易赤字を改善するのだというシグナルを発する必要がある
  • 人材の再配置が必要だ。この10年間、金融機関は優秀な人材を必要とする以上に吸い上げ続けてしまった。彼らを金融から引き剥がし、(実体経済の)もっと必要とする産業に再配置すべきだ
  • 医療費は効果を評価した上で削減すべきだ。例えば末期30日の延命に費やされる医療費は多額だが、その効果は苦痛でしかない。
ノーベル賞受賞者だけある力強いステートメントは、マンキューと対照的で面白い。両者とも多少の違いはあれど根幹では主張が一致しており、またトップ経済学者の新政権への期待を覗わせた。

国民、経済界、アカデミアそれぞれから大きな期待を寄せられるオバマ政権。誰を起用し、この難局をどう乗り切るのかで、世界経済は次の均衡点をどこに定めるのかが決まるだろう。願わくばそれが持続可能でできるだけ豊かであればいい。

* スローン生の間に回った案内文では、ソローのことを”Professor Solow is THE Solow (言うまでもなくあのソロー教授だよ)” という簡潔な一文で紹介していた
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by flauto_sloan | 2008-11-13 20:13 | Guest Speakers
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