MIT Sloanにて、2007年から2009年までMBA遊学していた、ふらうとです。ボストンとNYでの暮らしや音楽、そして学びを書きつらねています。外資系コンサルティング会社に在籍(社費留学)。趣味はフルート演奏
by flauto_Sloan
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
Harvard GSD訪問
ボーゲル塾の同門で、ハーバード・デザインスクールに通う友人に案内されて、デザインスクールの中を探検してきた。MITのStata CenterMedia Labもそうだが、クリエイティビティを刺激する空間の面白さを肌で感じて来た。

開放系の実験空間
ビルに入ると、イタリアの遺跡のデッサンや、学生がデザインした建築の模型が並ぶ。さっそくクリエイティビティが空気に満ちている感覚を受ける。
c0131701_2591941.jpg
エレベーターに乗ろうとすると、エレベーターに向けて赤いテープが貼ってあり、遠近法を実感できるようになっている。

エレベーターのドアが開くと、中にも同様のテープが貼ってあり、奥行き感の違いまで実感できるようになっている。

c0131701_3484.jpg
学生のデスクは、階段状の巨大な空間に置かれている。

一人当たりのデスクはかなり広く、高いついたてで隔てられているのだが、階段状になっているので上から覗くことができる。


c0131701_35489.jpg各学生は研究内容やデザインや模型を所狭しとデスクに置いてあるので、誰が何をどこまでやっているのかをお互いに知ることができ、互いに批評しあって想像力を刺激できる。

プライベートとパブリックがほどよく混ざり、他社との交流が促進される開放系の実験空間だった。休日にもかかわらず電気は煌々とこのスペースを照らしている。ここの学生は家にも帰らずひたすら研究・製作に没頭するというのも肯ける。

製作現場
c0131701_39256.jpg地下には工作室があり、旋盤のようなものから、巨大な工作用ロボットまで様々な機械が置かれている。

個人的に興味を引いたのが、釘を使わず嵌め込みで木材を接ぐデザイン。日本の宮大工の技術が下敷きになっているのだろうが、宮大工は木材の微妙な反りや変化を経験と勘で織り込んで設計する。だがこれをもっとシンプルに標準化できれば、途上国の開発で家を建てなければならないときに、Ikeaのキットのように一式を送り、釘や工具なしに家を建てることができる。実はずっと昔にそんな話は聞いたことがあった気がしたのだが、それを研究している場に居合わせると、非常に刺激を受ける。

また、もと理系で仕事でも様々な製造業の工場を訪れているせいか、工作機械を見るとわくわくしてしまう。機械には "ebony" といった愛称を付けて大事に扱っているらしい(大事にしないと、プレゼン直前に故障してモデルが完成しない、という悲劇が訪れるらしい)。

デザインスクールの学生
デザインスクールの学生は、今脚光を浴びている。従来の建築会社やIDEOといったデザインによる問題解決を図る企業だけでなく、コンサルティング・ファームなどでもデザインスクールの学生は求められているという。ダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト』(大前研一訳、三笠書房)では次のように書いている。
デザインは、古典的な全体思考能力だ。ヘスケットの言葉を借りれば、「実用性」と「有意性」の組み合わせである。

・・・ 「実用性」のほうは「左脳主導思考」に近く、「有意性」は「右脳主導思考」に近い。そして、左脳主導・右脳主導の二つの思考スタイルと同じように、今日、「実用性」の価値は広く認められ、安価に、比較的容易に実現できるようになった。そのおかげで、「有意性」の価値も高まってきたのである。

・・・今日の供給過剰気味の市場の中で、他社製品やサービスとの差別化を図るには、見た目に美しく、消費者の心に訴えかけるようなものを提供するしかないということを、企業は認識しはじめている。だからこそ、「ハイ・コンセプト」な能力をそなえた芸術家のほうが、簡単にすげ替えられる「左脳型技術」を持った新卒MBA*1よりも貴重である場合が多いのだ。
友人は「デザインスクールの学生が求められているなんて、実感がない」と言っている。確かに即戦力としては、ある企業や事業のNPVをすぐに計算できる人材が有利だろう。だがそれは比較的簡単に身につけられるスキルだ。

デザインや芸術で求められる、全体を統合する能力、創造力は、たとえばコンサルティング・ファームでも非常に重要な能力だ。問題解決とデザインとは非常に似通ったプロセスだ、と話をしていてつくづく感じた。データを分析して、問題の原因を突き止めることは、左脳的アプローチで、訓練を積めばそう難しいことではない。

だがその問題の原因から、どういう打ち手を考えるか、このプロセスは右脳的で、定型化できるものではない*2。プレッシャーの中で、手の届く限りのリソースを使って、チームで議論して、ある時ぽっと浮かぶものだ。2週間かかることもあれば、15分しかかからないこともある。デザインの学生は、この過程を嫌と言うほど経験しているので、問題解決のプロフェッショナルとしても有望なのだろう。そんな友人の就職活動が上手くいくことを願うばかり。


クリエイティブであるには、どんな仕掛けが必要なのかを、GSDで見られた。非常に面白く、そのうち私の机もちょっと様子を変えてみたい、と思わされた。

*1 ちなみにここで言う「新卒MBA」は、職務経験のないきわめて優秀なアメリカ人のMBA生のことで、通常5年程度の職務経験を持つ日本人MBAとは事情が異なる(自己弁護)
*2 無論、分析にもクリエイティビティは重要だし、定型的に打ち手が出るものもある。だが総じて、分析は左脳、打ち手は右脳依存だと考える

[PR]
by flauto_sloan | 2008-11-11 22:43 | Harvardでの学び
<< 好奇心の塊 感情 >>